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先輩研究者のご紹介(片岡 万柚子さん) [2021年02月15日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2019年度に「捕食者(イボトビムシ科)に対する変形菌の行動の反応」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、横浜国立大学大学院環境情報研究院土壌生態学研究室所属(助成時)の、片岡 万柚子さんから助成時の研究について、コメントを頂きました。

<片岡さんより>
 土壌生物の種間相互作用を明らかにすることは、土壌生態系が維持される仕組みを理解するために重要です。その中で、バクテリアや菌類などの分解者を餌としているアメーバ状の変形菌変形体と、その数少ない捕食者として確認されているイボトビムシ類の関係を明らかにすることは、土壌の有機物分解や物質循環を解き明かすことにつながります。そこで、私は変形体とイボトビムシの捕食被食関係について、いくつか実験をおこないました。

図1.変形体.jpg
図1.変形体

図2.イボトビムシ.jpg
図2.イボトビムシ

 そのうち、捕食者イボトビムシの存在によって変形体の行動が異なるのか明らかにする実験において、実験で用いた2種の変形体でそれぞれ違いがみられました。シロジクキモジホコリ変形体は、捕食者がその場に存在することより、体が傷つく刺激を受けることで行動が変化しました。さらに、移動する体の後方に刺激を受けたときに、体を分離させる様子が見られました。トカゲの尻尾切りのように、自分の体の一部を切り離して逃避する可能性が考えられます。またもう一方の種、ホネホコリ属の一種の変形体では、体を傷つけられることに関係なく、体の一部を分離させることが分かりました。ホネホコリ属の一種の変形体は、常に体を分離させることにより、個体が全滅するリスクを分散させている可能性が考えられます。これらより、変形体の種によって生き残り戦略が異なる可能性を示唆することができました。

図3.変形体を摂食するイボトビムシ.jpg
図3.変形体を摂食するイボトビムシ

 笹川科学研究助成を受けたことで、私はいくつもの実験に挑戦することができました。生き物を観察する中でうまれた様々な疑問を解決する機会をいただけたことが、なにより嬉しかったです。また、特に基礎研究は人間社会との直接的なつながりが見えにくく、不安に思うことも多かったのですが、本助成に選ばれたことで自信をもって研究に励むことができました。

 改めまして、研究の機会をくださいました日本科学協会の皆さま、ならびに横浜国立大学土壌生物学研究室の皆さまに深く感謝申し上げます。
<以上>

 危険を感じると体の一部を分離する生物がいることは知っていましたが、生き残るための戦略が様々あり、分離するタイミングが異なるということは初めて知りました。
 研究は成果が世の中の役に立つかどうかということに着目されがちですが、意外なところから人間社会と繋がることもあります。基礎研究も着目されるよう、応援させていただきたいと思います。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 14:32 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
書籍『科学と倫理』刊行のお知らせ [2021年02月02日(Tue)]
 科学隣接領域研究会事務局からお知らせです。
 2月9日(火)に書籍科学と倫理 AI時代に問われる探求と責任が発売されます。

tirasigazou.jpg
詳細はこちら→https://www.jss.or.jp/ikusei/rinsetsu/ethics/book.html
 
 本書は日本科学協会 科学隣接領域研究会での議論を取りまとめた、「今考えてほしい科学を支える倫理」について、13名の執筆者によって書かれた論考集です。喫緊の課題である感染症、ますます活用されていくAIとの付き合い方、ゲノム解析などの生命倫理、宇宙開発の倫理的課題など、先の見えない問題を考える13の視座が詰まっています。

 コロナ禍では、専門家と社会との連携、ワクチン開発をめぐっては日本の科学技術力などの問題も浮き彫りとなりました。多くの研究者に助成してきた日本科学協会(※)だからこそ、昨今の研究成果や効率性ばかり偏重される風潮に危機感を感じています。研究者が将来科学を通して様々な課題を解決し、より良い社会を築くことに貢献することを目指して、本書が多くの方に読んでいただけるようご案内申し上げます。一般の方々も専門家任せにせず、社会の問題を解決するために一緒に考えていただく契機となる書籍です。
 
 書店やWebにて販売いたします。緊急事態宣言が延長になりましたので、外出自粛中にじっくり読みんでみませんか。

※日本科学協会は30年間以上にわたりのべ9,000人以上の大学院生を中心とする若手研究者が行う基礎研究に助成する活動(笹川科学研究助成)を続けている団体です。

Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 14:23 | 科学隣接領域研究会 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介(藤田 健太郎さん) [2021年02月01日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2019年度に「汚染物質輸送因子に着目したウリ科作物における作物汚染の農薬を用いた低減化」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、神戸大学大学院農学研究科所属の、藤田 健太郎さんから助成時の研究について、コメントを頂きました。

<藤田さんより>
 過去に殺虫剤として使用されたディルドリンやヘプタクロルは、ダイオキシンと同様に、残留性有機汚染物質 (POPs) に指定されています。POPsは高い毒性や生物濃縮性を持つことから、多くの国々で、使用や排出が規制されています。しかし、POPsは環境中で分解されにくく、農環境においては、圃場の土壌中に多量に残留しており、作物への蓄積が懸念されます。

 特に、ウリ科作物は、POPsを果実に高濃度で蓄積するため、POPsによる作物汚染が懸念されます。これには、Major latex-like protein (MLP) というウリ科作物が持つタンパク質が関与しています。MLPは、土壌から根に浸透してきたPOPsと結合します。そして、導管を介して、MLPはPOPsを果実へと輸送します。現在でもなお、POPsが残留している圃場は多いことから、POPsで汚染された土壌で栽培しても、汚染されないウリ科作物栽培法の確立が急務になっています。

図1.jpg

 本研究では、農薬を散布することでMLP遺伝子の発現を抑制し、MLP量を減少させました。これにより、MLPを介したウリ科作物のPOPs蓄積を抑制しました。まず、ウリ科作物に使用可能な農薬5種から、MLP遺伝子の発現を抑制する農薬の選抜を行いました。次に、POPsで汚染された土壌で栽培しているズッキーニに、選抜した農薬を散布したところ、根と導管液で、MLP量の減少が確認されました。また、導管液中のPOPs濃度は50%にまで低下しました。本研究は、POPsで汚染された土壌において、安全な作物の生産を可能にしました。また、殺虫や殺菌といった農薬の従来の機能だけではない新たな利用法を見出しました。農薬の散布は、簡便かつ低コストな方法です。今後は、農薬を利用した作物汚染の低減化法の普及が大いに見込まれます。

図2.jpg

 本助成期間で得られた成果は、私が筆頭著者の論文として出版されています (https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2020.140439)。プレスリリースも行っていますので、是非ご覧ください((https://research-er.jp/articles/view/90726)。

 一つ、私から採択のためのアドバイスをさせて頂きますと、1年という短い期間で到達可能な目標を設定することです。そのためには、予備実験のデータを示すことで、50%以上の結果は既に出ていることをアピールすることが重要です。これによって、私は、申請時は修士課程1年で原著論文はありませんでしたが、採択されました。原著論文が無いからと諦めずに、到達可能性を審査員にアピールしてください。

 最後になりましたが、申請書を採択してくださった日本科学協会の関係者の皆様に、改めてお礼申し上げます。笹川科学研究助成により、研究を一層推進することができました。
<以上>

 食べ物の安全性を求める声は大きく、農薬の研究は非常に重要なことだと思います。より安全で、おいしい作物が安価でたくさん作れるようなると、良いなと思いました。
 笹川科学研究助成では、若手研究者の第一歩を応援したいと考えております。学会発表や論文投稿などの経験がなくとも、研究への熱意を申請書に込めて審査員にアピールしていただければ、良い結果となるのではないかと思います。皆様のご申請をお待ちしております。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 15:39 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0)