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先輩研究者のご紹介(大崎 晴菜さん) [2020年12月21日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2019年度に「植物間相互作用が促進する植食性昆虫の餌場選択」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、弘前大学大学院農学生命科学研究科農学生命科学専攻所属(助成時)の、大崎 晴菜さんから助成時の研究について、コメントを頂きました。

<大崎さんより>
 私の専門分野は生態学で、身近な植物と植物を利用する動物たちを対象に研究を行っています。2019年度に笹川科学研究助成をいただき、1年間、研究を行いました。
 植物は、同じ植物種同士で密集して生育することもあれば、ポツンと単独で生育することもあり、その生育密度は場所によって不均一になっています。このような植物の不均一な分布は、植物を餌にする昆虫の分布にも影響を与えます。例えば、カメムシの一種であるHarmostes reflexulusは、餌のキク科草本Senecio smalliiが密集して生えている場所に集中的に分布します。多くの昆虫種で同様の現象が報告されている一方、敢えて植物の生育密度が低いところに分布する昆虫も多く報告されています。なぜ昆虫種によって、植物の生育密度に対する応答が異なるのかは、未だ完全には理解されていません。

 本研究では、「@植物の生育密度の違いが、周囲の植物との競争環境の違いをもたらし、競争環境の違いが葉の化学成分の違いを生む。A葉の成分の違いにしたがって、昆虫は好きな味のする植物に集中的に分布する。」という仮説を立て、検証しました(図1)。野外調査と栽培実験を組み合わせたアプローチにより、エゾノギシギシ(タデ科)の生育密度が高い環境では、本種同士が種内競争に強く曝されることで、葉の化学成分が変化ししていました。さらに、同種との競争によって生じた葉の化学成分の変化は、エゾノギシギシを餌とするの昆虫により好まれ、集中的な分布を示すことを明らかにしました。

図1.jpg
図1 研究のアイデア

 植物の競争に応じた葉の化学成分、すなわち質の変化は、他の植物種でも一般的に報告されていることから、植物の質の効果を考慮することが、植物の分布と昆虫の分布の関係性を統一的に明らかにする重要な手がかりになると期待できます。

 この度、日本科学協会に充実したご支援をいただき、期待していた以上の成果を上げることができました。予算の使用に関する相談や、研究の進捗状況に合わせた途中変更にも親身になって柔軟に対応していただきました。また、本予算は学会参加にも使用できるという点は、地方大に所属する身として、大変ありがたかったです。おかげさまで遠方の学会にも参加が叶い、たくさんの研究者の方との貴重な議論の機会を得ることができました(図2)。

図2.jpg
図2 宮崎県にて行われた第51回種生物学シンポジウムでのポスター発表の様子。

 この一年間で得られた成果をもとに、今後もさらに精進して研究を進めて参りたいと思います。研究の機会を与えて下さいました日本科学協会の皆さまに重ねて御礼申し上げます。
<以上>

 笹川科学研究助成は1年間という短い期間の助成ではありましたが、実験を行い学会にて成果を発表するといった、研究の一連の流れを経験していただくことができたようで、嬉しく思います。本助成を研究者としての第一歩として、これからも頑張っていただきたいと思います。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:48 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0)
先輩研究者のご紹介(柳 のど香さん) [2020年12月14日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2019年度に「心筋肉柱発生過程における核内レセプター受容体結合タンパク質Arip4の機能解析」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、東京大学大学院理学系研究科生物科学先行所属の、柳のど香さんから最近の研究、研究室の様子について、コメントを頂きました。

<柳さんより>
 脊椎動物の中でも、我々哺乳類の器官再生能は限定的であるのに対して、魚類や両生類は非常に高い再生能を持つことが知られています。無尾両生類であるカエルの幼生(オタマジャクシ)も例にもれず、尾を切断しても1週間程度で脊髄、脊索、筋肉などの組織を備えた完全な尾を再生することができます。現在私は、アフリカツメガエル(図1)との幼生をモデルとして、器官再生を可能にする分子メカニズムを明らかにすることを目的として研究を進めています。

図1.jpeg
図1 アフリカツメガエル

 当研究室ではこれまでに、機能阻害(ノックダウン)をすると幼生の尾が再生できなくなる遺伝子を発見しており、これが再生に固有な分子シグナルによって尾再生に必要な未分化細胞を誘導し活性化させることが示されています。しかし、この未分化細胞の誘導や活性化がどのようにひきおこされるのかが未解明であるため、わたしはこの下流で再生にはたらく因子をつきとめることで、器官再生のしくみにせまることにしました。現在おこなっている実験は、再生に必要な遺伝子のノックダウンによって発現が大きく変動する遺伝子を網羅的に探索し下流因子の候補を絞り込み、候補となる遺伝子を、女性のノーベル賞受賞でも話題になったCRISPR/Cas9法を用いてノックダウンし、幼生尾の再生能への影響をみるという手法です。目的遺伝子の配列の一部を標的とするようなguide RNAを作製しCas9 mRNAとともに人工授精させた受精卵(図2)に打ち込むと、標的配列でゲノム編集がおこりその遺伝子の機能を破壊することができます。このとき、インジェクターという機器を使って、一つの受精卵につき約18nlという微量の液を打ち込むことができます(図3)。こうして得られたノックダウン幼生の尾を切断し、再生の程度を観察することで、候補の遺伝子が再生に必要なはたらきを持っているかどうかを見極めます。本研究は始めたばかりで課題の多いテーマですが、再生現象固有に必要な分子シグナルがわかれば、我々哺乳類への器官再生能賦与という再生医療への応用も期待できる研究であると期待しています。

図2.jpeg
図2 アフリカツメガエルの受精卵

図3.jpg
図3 インジェクションの様子(2は視野の拡大図)

 私は、助成当時は心臓の心室構造がどのような分子メカニズムで形づくられるのかをマウス胎仔を用いて研究していましたが、発生学で学んだ知見を取り入れつつ、他研究室で再生の研究を進めています。分野が変わると新たに学ぶことが増えるのはもちろんですが共通の実験手法や知識も多くあり、博士課程では、今後どの分野に関わることになっても通用する基本的な技術や知識を身につけることができると実感しております。

 笹川科学研究助成は学生でも応募させていただけるので、研究計画の作成や研究費の管理を若いうちから自身で経験できたことは貴重な経験だったと感じており、たいへん感謝しております。ありがとうございました。
<以上>

 ノーベル賞受賞によって話題となったCRISPR/Cas9等の研究手法を用いた、一分野の最先端の研究を行うことも重要ですが、基本的な技術や知識を身に着け、分野を跨いだ研究を行えるようになることも、研究者として歩んでいくためには重要かと思います。笹川科学研究助成では皆様の研究者としての第一歩をサポートできるよう、これからも陰ながら応援させていただきたいと思います。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 10:13 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0)
先輩研究者のご紹介(押尾 高志さん) [2020年12月07日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2019年度に「近世西地中海地域における改宗の諸相:モリスコ由来のアラビア語写本とアルハミーア写本の分析」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、日本学術振興会特別研究員(PD )(助成時:千葉大学大学院人文社会科学研究科)所属の、押尾 高志さんから助成時の研究について、コメントを頂きました。

<押尾さんより>
 みなさん、こんにちは。
 今日は、私が笹川科学研究助成を受けて行なったスペインでの文献調査についてお話をしたいと思います。
 私の大きな研究テーマは、16−17世紀のスペイン・モロッコの歴史で、具体的にはモリスコと呼ばれるキリスト教への改宗したムスリム(イスラーム教徒)についての研究をしています。
 このモリスコと呼ばれる人たちが残した興味深い史料として、アルハミーア文献と呼ばれる写本史料があります(写真1)。これは、アラビア文字を用いて当時のスペイン語を書いた文字史料なので、読み解くためにはスペイン語とアラビア語の両言語の知識が必要です。わかりやすく言えば、文章がアルファベットではなくカタカナで書かれた英語の写本、のような感じでしょうか。このアルハミーア文献は、イスラーム信仰に関係する宗教的なものから、呪術的内容を取り扱ったものまで、様々な内容の写本が残されていて、モリスコがどのように知識を伝達、発展させていったのか、どんな世界観を持っていたのかを知るための貴重な史料となっています。

写真1.jpg
写真1 アルハミーア写本の例
ウプサラ大学所蔵(スウェーデン)
複製転載不許可

 このアルハミーア文献の研究拠点があるスペインのオビエド大学へ、私は2019年8月に調査へ行きました(写真2と3)。渡航前に、同大学附属図書館館長へメールで資料閲覧の許可をもらっていたので、特に閲覧カードなども作る必要もなく、図書館での調査はスムーズに始まりました。
 そして、2日目も同じ図書館で調査をしていると、一人のスペイン人が私に声をかけてきました。大学付属図書館の、モリスコ関連の書籍のある非常にマイナーなコーナーに、アジア人がいるのが珍しかったのでしょう。
 しかし、この出会いがこの調査の一番の収穫だったのです。実は、彼は前述のアルハミーア文献の研究拠点に所属する研究者の一人で、私を大学図書館の外にある研究室に案内してくれました。そこで、アルハミーア文献を扱った未刊行博士論文や、世界各国の図書館・文書館所蔵のアルハミーア文献の写本の電子データなどを閲覧することができたのは、今後の研究の発展にとって大変有意義でした。
 彼とは現在も連絡を取り合っていますが、こういう偶然の出会いも現地調査の大きな醍醐味の一つでしょう。

写真3.jpg
写真2 大学正面のファサード 

写真2.jpg
写真3 大学図書館の中庭

 さて、筆を置く前にこれから笹川科学研究助成に挑戦しようとしている人たちに、僭越ながら2つほどアドバイスをしたいと思います。
まず、この助成を過去に受けていた人の申請書をなんとか手に入れましょう(申請書類をゼロから書くのは本当に大変なので)。
 次に、研究仲間(友人でも先輩でも良いです)に申請書を読んでもらいましょう。申請書は他分野の研究者が読んで理解できるように書くのが望ましいと私は思います。
 私も同じ年度に笹川科学研究助成に応募した友人の研究者(専門は社会言語学)と、お互いの申請書をチェックしあいました。結果として、私もその友人も一緒に助成を受けることが出来たので、とても嬉しかったです。

 最後になりましたが、推薦書を書いてくださった指導教員の先生、および日本科学協会の関係者の皆様に、改めてお礼申し上げます。どうもありがとうございました。
<以上>

 現地調査は、言葉の壁など大変なことも多いかと思いますが、その場に行かなければ分からないことも多くあると思います。今回、当初の目的を達成するだけではなく、現地の研究者と出会うことで、その後も研究にも大きな影響があったとのこと、うれしく思います。
 また、笹川科学研究助成に申請される方の中には、初めて助成金の申請書を書く方も、多くいらっしゃるかと思います。当会の選考委員会が作成した、総評が下記URLにアップロードしておりますので、ご参考にしていただければと思います。
https://www.jss.or.jp/ikusei/sasakawa/senkou/

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 12:17 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0)