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先輩研究者のご紹介(香川 理さん) [2020年11月24日(Tue)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2019年度に「巻貝と付着藻類の共種分化に関する研究」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、東北大学大学院生命科学研究科所属の香川 理さんから、ご専門にされている研究について、コメントを頂きました。

<香川さんより>
 互いに異なる生物種が出会い、手を取り合って生きる「共生」。そのような関係は、今この時まで如何にして生み出され、保たれてきたのでしょうか?私の研究は、日本の海の浅瀬にいる巻貝、スガイと、その貝殻にしか付着しない藻類のカイゴロモに焦点を当てています(図1、図2)。このような特定の巻貝の貝殻上でのみ生育するという藻類は稀です。近年の研究では、このカイゴロモの保水性が、干潮時にかかるスガイの熱ストレスを軽減させることを明らかにしました(Kagawa & Chiba 2019)。一方で、TwitterなどのSNSを通して収集されたデータを解析した結果、カイゴロモの付着量は発見地域の暑さには関係しておらず、涼しい地域でもカイゴロモは付着していました(Kagawa et al. 2020)。暑い地域では、カイゴロモが耐熱服の役割をしている一方、涼しい場所では何も機能していないのでしょうか?スガイが受ける耐熱服の利益と、一方で何も機能をしないということが両者の関係性を維持してく秘訣なのでしょうか?謎は深まるばかりです。

図1.jpg
図1 カイゴロモ付着スガイ(上)と付着していていないスガイ(下)
スケールバーは1cm。

図2.jpg
図2 野外で観察される緑藻カイゴロモに覆われたスガイ。

 このような研究には、どのような意義があるのでしょうか。助成金の申請書においても、多くはこの研究意義を問います。これに私はいつも悩まされます。もちろん学問的な意義があり、それを原動力に研究を行なっているのは確かです。海洋生物の共生系の相互作用はほとんど分かっておらず、生物間相互作用の進化的役割の解明は、重要な生物学のトピックといえます。ただ、スガイとカイゴロモの関係が解き明かされたとしても、すぐさま人間の役に立つとは到底思えません。
 そんな時、先行の論文Kagawa & Chiba 2019が出版され、数日後に海外の工学系の研究者からあるメールが届きました。それは、カイゴロモのような耐熱服を、実際に人間のために作ることはできないかという趣旨でした。その発想は私には全くありませんでした。笹川研究助成で採択されたテーマをみますと、直接的に社会に還元される研究が多いわけではないように見えます(そのような研究もありますが)。私は本研究を通して、そのような研究もいずれは何かの役に立つかもしれないと思わされました。と同時に、今は役に立たなくてもよいのでないかとも。この考えは、スガイとカイゴロモを研究していく上で強いモチベーションとなっています。

Kagawa O & Chiba S (2019). Snails wearing green heatproof suits: the benefits of algae growing on the shells of an intertidal gastropod. Journal of Zoology, 307(4), 256-263.
https://doi.org/10.1111/jzo.12641

Kagawa O, Uchida S, Yamazaki D, Osawa Y, Ito S, Chiba S & The green-costumed snail’s citizen researchers (2020). Citizen science via social media revealed conditions of symbiosis between a marine gastropod and an epibiotic alga. Scientific Reports, 10(19647), 1-10.
https://www.nature.com/articles/s41598-020-74946-5

スガイ&カイゴロモ全国調査
https://sites.google.com/view/sugai/
<以上>

 笹川科学研究助成では成果のみを重視するのではなく、着目されることの少ない日の当たらない研究であっても、独創性や意外性があり、やる気にあふれた若手研究者の研究を応援させていただきたいと考えております。現時点では、どのように社会に還元されるかわからない研究であるかもしれませんが、将来的には大きな影響を与える可能性もありますので、諦めず挑戦していただきたいと思います。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 13:29 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介(永島 佑貴さん) [2020年11月09日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2019年度に「光を活用したマルチホウ素化法の開発 –高度にホウ素化された有機化合物の合成と新機能創出–」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、東京大学大学院薬学系研究科所属の、永島 佑貴さんから助成時の研究について、コメントを頂きました。

<永島 佑貴さんより>
 ホウ素という元素をご存知でしょうか。原子番号5番、周期表では炭素の左の元素です。一つ左というだけですが、炭素とは全く異なる性質を示すことが知られており、ホウ素を含む有機物は、電子材料や医薬品など、身近なところでも利用されています。「もしホウ素元素を有機物にたくさん導入したらどのような性質になるのか?」今回採択いただいた私の研究は、そんな素朴な疑問からスタートしました。
 今まで報告された研究では、有機物に一度に導入できるホウ素の数は、3つが限界でした。そこで私は、従来とは異なる化学反応を引き起こすエネルギー源として「光」に着目しました。その結果、4つのホウ素を一挙に導入できる新反応を開発し、これまでになかった新しい有機ホウ素化合物を合成できました。

画像1.jpg

 助成いただいた期間での結果はここまでで、ホウ素が多数集積したこの新しい分子構造がどのような新機能を発揮するのか、さらに調べている最中です。今回の研究で、新しい反応や分子が報告できただけでなく、光エネルギーの新しい利用法を示すことができました。このように、一つの研究の中には色々な側面から新しい発見があるはずで、その発見の連続が私たちの豊かな生活へとつながっていくのだと信じて、今後も研究に取り組んでいきたいと思っています。

 笹川科学研究助成は、通常の研究費とは異なり、色々な人が応募することができます。変わった立場・変わった研究であっても、その魅力を伝えることができれば、きっと受け入れてもらえると思いますので、申請を考えられている方は是非積極的に挑戦してみてください。
 最後になりますが、このような貴重な研究の機会を与えて下さいました日本科学協会の関係者の皆様、ならびに東大・内山研究室の皆様に、改めて感謝申し上げます。
<以上>

 一つの研究課題を助成させていただきましたが、色々な側面から研究することで、様々な発見へと繋げることができたそうです。本助成制度は1年間という短い期間となりますが、豊かな生活へとつながる研究の第一歩として、若手研究者の皆様を応援させていただきたいと思います。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 12:34 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)