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先輩研究者のご紹介 高橋 唯さん [2024年09月02日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2022年度「都心部の学校でボーリングコアを採取し、学校の地下の地層を観察する授業実践」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、慶應義塾幼稚舎サイエンスミュージアムの高橋 唯さんからのお話をお届けします。

<高橋さんより>
 こんにちは、慶應義塾幼稚舎の高橋唯です。私は都市部で地層学習をする際に教材をどうすればよいのか、に悩んでいました。なぜなら、街中ではそもそも地層が見えず、移動教室で初めて訪れた場所の地層を学習しても子供たちは全く身近に感じることができないからです。そこで私は、助成を頂いて思い切って学校でボーリングコアの掘削を行ってみました。それによって得られたオールコア試料(学校の地層)を教材にしたのです。 (写真1)


写真1.JPG
【写真1】


 ここで私の調べたいことは二つありました。一つはオールコア試料を用いた学習の流れを考えて授業を行い、その効果を可視化することです。そしてもう一つは、部分ペネ試料と比べてみることです。急に出てきましたが、部分ペネ試料とは地層が砕かれて小さなビンに詰められたものです。校舎建設時の地盤調査で得られたものが基本的にはどの学校にもあるため、地層学習時は部分ペネ資料を見せるという先生方もいらっしゃいます。しかし、砕かれたものがどの程度地層として認識されうるのか、という点は私にとって疑問でした。
 詳しい方法や結果については拙著の方をご覧いただきたいと思います。重要な成果としては子供たちから「勉強している日本の歴史は、僕たちが立っている地面の下の地層ともつながることなので、地層すごいじゃないと少し尊敬した」という言葉を引き出せ、多くの感想から地層を通して昔の環境を知ることへの感動が述べられていたことです。地層から子供たちの生活圏がどのように形作られたかを学習したことが、教材をただの地層から自らに関わる歴史に変えたと感じました 。(写真2) そしてオールコア試料では容易に地層と認識できる部分が、部分ペネ試料では地層なのか地層中の堆積粒子なのかを区別することが難しいと示されました。そのため、部分ペネ試料だけでは地層の代わりにはなりえないと分かったのです。

写真2.png
【写真2】


高橋 唯, 植木 岳雪(2023)ボーリングコア試料を用いた地層の学習―コア試料か部分ペネ試料か,それが問題だ―. 理科教育学研究, 64, 265-274.

 学校教員にとって、もっと良い教材はないのだろうか、もっと良い授業はできないのだろうか、というのは永遠のテーマだと思います。本研究助成の実践研究部門では学校における学習指導方法の研究も対象となるため、学校教員でも応募しやすいところが魅力です。
 ちょっと試してみたい教材や授業法などがある先生方がおられたら、申請されてみてはいかがでしょうか。

<以上>



 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:48 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)