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先輩研究者のご紹介 ZHANG Xuanさん [2024年04月15日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2021年度「微環境汚染の測定により中国典型的な都市における住民の大気汚染曝露レベル推測モデルの構築」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、金沢大学大学院医薬保健総合研究科所属の、ZHANG Xuanさんからのお話をお届けします。

<ZHANGさんより>
 大気汚染物質はヒトの呼吸器や循環器に悪影響を与えることが知られています。私の所属研究室(金沢大学 薬学系環日連携研究G)では,発がん性物質である多環芳香族炭化水素類化合物(PAHs)を中心に,アジア地域におけるそれらの大気内挙動(発生源,濃度,組成,大気反応)とヒトへの健康影響を研究しています。PAHsは石油や石炭などの不完全燃焼によって生じ,都市地域では主に工場や自動車から排出されています。
 本研究では,大気汚染が深刻化している中国の北京と保定において,事務職員を対象に個人ばく露PAHsによるヒト肺機能への影響を評価し,さらに最寄り大気環境測定局の公表データを参考に,室内外の大気中PAHs実測値と建物特徴を用いて個人ばく露PAHsの濃度と組成を推測するモデルの構築を目的としました。個人ばく露PAHsの調査では,強い発がん性を持つベンゾ[a]ピレンのばく露濃度は中国の大気環境基準値(1 ng/m3)を超えており,長期ばく露による健康リスクが高いことを判明しました。さらに、4環構造をもつベンズ[a]アントラセンとクリセンの短期ばく露により,事務職員の肺機能の低下を引き起す恐れがあることも初めて分かりました(Zhang et al., 2023a, 2023b)。
 個人ばく露調査はより正確なデータが得られますが,調査対象に大気試料を捕集するサンプラーを携帯させるため,サンプラーの重さや空気吸引ポンプの騒音などで日常生活への負担が大きく,大規模の実施が難しいです。そこで,ヒトの滞在場所と時間,滞在場所の建物の特徴を精査し,各々の滞在場所最寄りの大気測定局の公表データとの関連をモデル化にすれば,大気測定局のデータを利用するだけでも,個人ばく露調査と同等な結果が得られると仮設して研究を進めようとしました。しかし,2020年2月に始まったコロナ禍の影響で,北京と保定での調査は断念しました。その後,日本科学協会側と協議し,計画を変更して本学所在地の金沢で実施することができました。その結果,自動車排ガス中PAHs濃度、室内換気状態などの要素は,個人ばく露PAHsを影響する主因子として洗い出し,これらに基づいて個人室内ばく露PAHs濃度の推測モデルを提案しました(図2)(Zhang et al., 投稿準備中)。しかも,本研究で確立した調査方法は,異なる環境における個人ばく露PAHs濃度の推測モデルの構築にも役に立てると期待できます。

図1.jpg
図1 北京市と保定市で実施された個人曝露調査(左図:大気捕集、右図:肺機能測定)

図2.jpg
図2 住宅室内PAHs濃度の推測モデル


 環境科学分野においてのフィールドワークは,実験室だけで行える研究との違いは,天候や調査対象の都合など多くの不確定要素に影響されがちです。本研究も,実施途中に非意図的な原因で研究計画を変更せざるを得ませんでした。しかしながら,日本科学協会側の迅速かつ柔軟なご対応により,調査研究が順調に進められ,多大な成果が挙げられました。末筆ながら,短い一年間でもありましたが,ご支援をいただいた日本科学協会に心より感謝申し上げます。

参考論文:
1. Zhang X, Zhang H, Wang Y, et al. Personal PM2.5-bound PAH exposure and lung function in healthy office workers: A pilot study in Beijing and Baoding, China[J]. Journal of Environmental Sciences, 2023a, 133: 48-59.
2. Zhang X, Zhang H, Wang Y, et al. Characteristics and determinants of personal exposure to typical air pollutants: A pilot study in Beijing and Baoding, China[J]. Environmental Research, 2023b, 218: 114976.
3. Zhang X, Wang Y, Bai P.C., et al. Characteristics and prediction models for the concentrations of PM2.5-bound polycyclic aromatic hydrocarbons in residential environments in Kanazawa, Japan(投稿準備中).

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆さんより、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 14:36 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介 大月 興春さん [2024年04月15日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2021年度「抗HIV薬の創製を目指す新規大環状ダフナン型ジテルペノイドの探索研究」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、東邦大学薬学部助教の大月 興春さんからのお話をお届けします。

<大月さんより>
 ジンチョウゲはジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の常緑低木で、春先にとても香りのよいピンク色の花を咲かせるのが特徴です。学名はDaphne odoraといい、属名のDaphneはギリシャ神話のダフネに由来し、odoraは「芳香がある」という意味があるそうです。また、和名「沈丁花」には香木である沈香と丁子の名前がそれぞれ含まれており、漢名の「瑞香」にも香りという字が含まれています。ジンチョウゲは名前の随所に香りを彷彿とさせる語が散りばめられていることからも、いかに香りがよい花を咲かせるということが想像できるのではないでしょうか。ジンチョウゲはとてもよい香りであることと花がとても可愛らしいことから日本のみなからず、欧米でも庭木として人気のある植物です。みなさんも春先に見かけたらぜひ香りとその可愛らしい花を楽しんでみてください。

写真ジンチョウゲ.JPG


 さて、ここまでジンチョウゲが観賞用の植物としてとても魅力的であることを伝えてきましたが、実はジンチョウゲは有毒植物としても知られています。毒と薬は紙一重とよく言いますが、ジンチョウゲは中国伝統医学において根や葉、花など様々な部位が薬用され、痛みや皮膚病の治療に用いられてきました。私はこのジンチョウゲに含まれるダフナン型ジテルペノイドという成分に関する研究を行っています。ダフナン型ジテルペノイドはジンチョウゲ科やトウダイグサ科植物に含まれる成分で、これまでに多くの化合物が単離されています。中には強い毒性を示す化合物もあれば、抗がんや抗HIV、鎮痛作用を示す化合物も発見されています。私はこの中でもダフナン型ジテルペノイドのもつ抗HIV作用に着目して、未だ根治できないHIV感染症の根治薬の創製を目指して研究を進めています。

 私はもともと創薬研究に興味があったのですが、大学3年生で卒業研究の配属研究室を選ぶ際に、植物から未だ治療薬のない病気を治す薬を見出すという研究に夢を感じて、現在所属する研究室に入ることを決意しました。卒業研究でジンチョウゲに関する研究に携わり、そのまま研究の楽しさにのめり込み大学院に進学しました。大学院在学中に笹川研究助成を受けることができ、研究を大きく推進することができました。現在は同研究室で助教として勤めており、これからは単離した化合物について化学変換反応により、より安全かつ作用が強く、薬に適した形にする研究も予定しています。また、ジンチョウゲ科植物の他にも様々な植物の研究にも携わっています。自分が植物から単離した化合物が実際に人々の病気を治す薬になるまでにはまだまだ長い道のりがありますが、夢の実現を目指してこれからも研究に没頭していきたいです。

 若手研究者、特に大学院生が単独で申請できる研究助成はとても限られていると思いますが、笹川研究助成はそんな大学院生にも大いにチャンスのある研究助成です。申請書や報告書の作成、予算の管理など助成を受けていた当時の経験は今の研究生活にもしっかりと活かされています。また、採択されたことで自分にとっては大きな自信にも繋がりました。早い段階から自分が代表者となって研究費を申請できるまたとない機会ですので、申請を迷われている大学院生の皆様は是非チャレンジしてみてください。最後になりますが、笹川科学研究助成を通じてご支援くださいました日本科学協会に深く感謝申し上げます。

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:41 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)