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先輩研究者のご紹介 井上 侑哉さん [2024年04月08日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2021年度「ゲノムワイドなDNA情報にもとづく野生フキの多様性と栽培フキの起源解明」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、国立科学博物館の井上 侑哉さんからのお話をお届けします。

<井上さんより>
 2021年度笹川科学研究助成学術研究部門にて助成いただきました、国立科学博物館の井上侑哉です。私は現在、コケ植物の系統・分類学を専⾨にしていますが、前職の広島⼤学ではコケ植物に限らず維管束植物の多様性についても研究を進めていました。

 フキPetasites japonicus (Siebold & Zucc.) Maxim.は中国・韓国・日本に分布するキク科フキ属の多年生草本植物です。大きな腎円形の根出葉が長い葉柄の先に生じ、頭花は筒状の小花によって構成されます。数少ない日本特産野菜として奈良時代から利用されている日本人に馴染みの深い栽培植物でもあります(図1)。


図1.jpg
図1. フキ. A: 根出葉. B: 頭花.

 フキの野生集団には多様な形態変異が見られ、東北地方以南の本州・四国・九州に分布する集団では葉柄の長さが60 cm程度のものが一般的ですが、北海道から東北地方北部にかけて分布する集団では葉柄の長さが1–2 mに達する場合もあり、亜種アキタブキ [subsp. giganteus (F.Schmidt ex Maxim.) Kitam.] として区別されています。とくに北海道足寄町の螺湾川に沿って自生する集団は大きく、葉柄の直径が10 cm、高さ2–3 mに達し、「ラワンブキ」と呼ばれ北海道遺産にも指定されています。しかし、フキとアキタブキについて、遺伝的分化の程度については不明です。フキの栽培品種としては水ブキや愛知早生ブキ、秋田オオブキ、秋田青ブキ、八つ頭などが知られており、食用として流通していますがこれら栽培品種の起源についてもよく分かっていません。

 そこでまずは野生フキの遺伝的多様性を把握するために、国内各地から収集した野生集団を対象に、RAD-seq法により取得したゲノムワイドなSNP情報にもとづいて遺伝的多様性を調べました。その結果、日本産野生フキ集団は東北地方を境に、東北地方以南の本州・四国・九州の集団(本州型)と東北地方の一部と北海道の集団(北海道型)からなる2つの遺伝的グループに大きく分かれることが示されました(図2)。本研究によってフキ野生集団の遺伝的多様性が初めて明らかになり、栽培品種の遺伝的由来についてもDNA情報をもとに推定可能な基盤を整えることができました。今後は栽培品種についても網羅的な収集を進め、さらに史料とも照らし合わせながら検討することで、野生フキから栽培化に至る過程の詳細を明らかにしていきたいと考えています。

図2_.jpg
図2. RAD-seq法によるゲノムワイドなSNPにもとづくネットワーク図.
(A) 本州型, (B)北海道型.


 日本科学協会の支援を受けることにより研究の進展が可能になっただけでなく、研究者としての道を歩むためのキャリア形成にも大きくプラスになりました。この場を借りて深く感謝申し上げます。

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


※テキスト、画像等の無断転載・無断使用、複製、改変等は禁止いたします。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 14:18 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介 佐々木 啓さん [2024年04月08日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2021年度「観光拠点施設を用いた来訪者への災害情報発信の方法論の構築」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、和歌山大学観光学部助教佐々木 啓さんからのお話をお届けします。

<佐々木さんより>
 和歌山大学観光学部にて助教をしております,佐々木啓と申します。
 助成をいただいた2021年度は東京大学大学院農学生命科学研究科の博士2年生でした。コロナ禍(緊急事態宣言等)でラボに行けない,フィールドに出れないという非常に強い逆風が吹き荒れるドクター生活ではありましたが,所属ラボの先生方,先輩方の支えもあり,なんとか標準修業年限の3年間で博士(農学)を取得することができました。弱冠27歳(当時)ではありましたが,とても幸運なことに学位取得直後の2023年4月よりパーマネントの助教として現職に採用いただき,業績至上主義に縛られない,真に自由な発想の元でPIとして研究活動を進めることができています。経験のない授業や校務に食らいつきながら,新たな環境で新たな研究テーマを掲げ,日々奮闘しているところです。

佐々木啓研究室入口.JPG

(写真:佐々木啓研究室入口)


 今回は,上記の研究課題の完了報告書が高い評価を受けたとのことでブログの執筆依頼をいただきました。記憶をたどると,助成当時の選考総評(人文・社会系)で私の研究課題が取り上げられており,大いに喜んだことを覚えています。それもあり,かなり力を入れて助成対象者だけが選考対象となる笹川科学研究奨励賞に向けて取り組んだのですが,上述したようなコロナ禍の壁に阻まれ,また私の力不足ゆえに受賞は叶いませんでした。もうリベンジに臨むこともできないというのが,正直,心残りではありますが,今回このような機会をいただき,大変光栄に感じております。

阿蘇山上ビジターセンターが立地する阿蘇火山博物館と草千里.jpg
(写真:阿蘇山上ビジターセンターが立地する阿蘇火山博物館と草千里)


 さて,同研究課題の柱となっていたのは,「災害の多い観光地にも整備される情報発信施設(ビジターセンター)を通じて災害について観光客に情報発信をすることで,防災に関心の薄い層にも防災教育を行うことができ,有効な防災教育・サイエンスコミュニケーションの方法論となりうるのでは?」というアイデアでした。
 私は岩手県出身なのですが,東日本大震災の発災当時(当時中3)を今でも鮮明に覚えています。しかし,時間の流れは残酷で,風化は避けることができません。また,次の世代を担う子どもたちにも当時の記憶・教訓を継承する必要があります。「いったい岩手県人として何ができるのだろうか…」との思いで構想したのが同研究課題です。研究成果のうち,阿蘇をフィールドとしたものについては2024年6月にはJ-STAGEで論文として読めるようになりますので,ぜひお読みいただければと思います(※1)。

 次に,本助成へ応募してとくに良かったことについてふれたいと思います。1つ目は自信がついたことです。それまで,論文が続けてリジェクトされ,学振DC等のグラントにも落ち続け,研究者として生きていく自信を失いかけていました。しかし,本助成に採択いただき,総評にも取り上げていただいたことで自信を持って研究に取り組めるようになりました。自信が活力を生み,精力的に研究に励めたことが現職への採用や博士課程でのJASSO奨学金全額返還免除等につながったと確信しています。
 2つ目は機会を得られたことです。本研究課題による研究を実施することができたのは非常に大きいことでした。博士課程ではWINGSという東大独自の制度のもと生活費については学振DCに準じた額をいただいていましたが,研究費の支給がない制度であり,多額の資金を必要とするフィールド調査を行える状況にはありませんでした。本助成をいただけて,感謝の念に耐えません。
 そして,実は本研究課題のもう1つのフィールドではコロナ禍の影響で計画通りにサンプルを得ることができず,研究成果を論文化することができませんでした。しかし,怪我の功名か,後者の調査をきっかけに応募時の計画になかった研究成果に基づく査読付き研究報告(※2)を世に出すことができました。「どのようにして,災害に関する展示の多いビジターセンターは整備されたのか?」という事例・歴史研究になります。これも,本助成に採択されていなければ機会を得られませんでした。

 最後に,本助成に申請を考えている方へ。応募するかを迷っているなら,ぜひ「応募する」と心に決めて申請書を作成してください。前衛的・野心的なアイデアであっても評価していただける点が,学振や科研費にはない本助成の大きな魅力であると私は思います。

※1 佐々木啓(2024):阿蘇山上ビジターセンターにおける来館者の展示の観覧と意識変化:ランドスケープ研究87(5),印刷中,日本造園学会(査読付き)
※2 佐々木啓(2023):唐桑半島ビジターセンターの設立の経緯と設立時の収支計画について:環境教育32(1),43-49,日本環境教育学会(査読付き)

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:48 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)