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先輩研究者のご紹介 大村 文乃さん [2024年02月19日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2021年度「イカ類の捕食戦略を掌部形態から探る〜なぜイカ類の掌部は強力かつ瞬時に餌を捕らえることができるのか?〜」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、三重大学所属の大村 文乃さんからのお話をお届けします。

<大村さんより>
 私はイカ類の形の研究をしております。本研究ではイカの掌部の形に注目しました。
イカ類は2本の長い触腕と8本の腕を持ちます。彼らは触腕を餌に伸ばし、触腕の先端にある掌部に餌が触れた瞬間に触腕を口方向に引き、餌を腕で抱え込んで餌を捕らえます。この捕食には餌生物に瞬時に吸着し、暴れる獲物を引くための触腕掌部の構造が必要です。しかしイカ類の捕食の研究は行動学的研究や胃内容物調査が多く、形態学的な研究はあまり行われていませんでした。特に掌部構造は分類学的な上面からの吸盤数の記載のみであり、実際に餌を捕らえる掌部がどのような構造を持ち、なぜ瞬時かつ強力な捕食を可能にしているかは未解明の点が多いままでした。そこで本研究では、イカ類の触腕掌部が強力かつ瞬時に餌を捕らえることができる理由を形態学的に明らかにすることを目的としました。イカ類の触腕掌部の形態を定性的、定量的に調べるうえで、本申請期間ではまずコウイカ科の大型種であるコブシメ を用いました。

 本研究により、コブシメ の掌部は吸盤が埋まる構造になることで大きさが異なる吸盤を効率よく収納していることがわかりました(図1)。また、この構造により、獲物を強く引くことと、暴れる獲物から剥がれないことを両立させる構造をし、多様な餌生物を捉えていると考えられました(図2)。コブシメ の掌部の中央付近には大きな吸盤が、縁部には小さな吸盤が並んでいます。吸着力や剥がれやすさを調べると、この吸盤が大きいほど強く引くことができますが、吸盤上面に対して捻れがかかると剥がれやすい特徴を持っています。また解剖を行うと、大きな吸盤は硬い起止を持つことがわかりました。これにより、中央付近の大・中吸盤が強い力で獲物を強く口に引き、縁部の小吸盤が暴れる獲物を剥がれないよう吸着すると考えられました。以上のように触腕掌部内の位置により吸着力および剥がれにくさが異なる吸盤を持つことで、暴れる多様な獲物を強く引くことができると推察されました。

図1.jpg
図1 Omura and Ikeda(2022)を一部改変.

図2.jpg
図2 Omura and Ikeda(2022)を一部改変.

 申請時に気を付けたことは、自分が何をしたいのか、1年間でどこまで行うのか、などをきちんと整理することです。触腕掌部は種により多様性があり、大小の吸盤の混合、小吸盤のみ、微小な吸盤のみ、といった違いがあります。そこでイカ類全体の掌部形態を機能的に比較して捕食戦略を明らかにすることを大目的とした上で、申請年度は大小吸盤混合型(コウイカ科コブシメ等)の触腕掌部に注目して調べ、小吸盤のみや微小吸盤のみの触腕掌部の機能解析や種間比較は次年度に行う計画を立てました。申請となる助成期間が1年間のため、現実的な計画を立てることが大事だと思います。
 笹川科学研究助成のとても良い点は、普段なかなか助成が受けにくい基礎的な地道なテーマにも助成をしてくれることです。助成金申請時は大きなことを語らなくてはならない風潮がある中、笹川科学研究助成は若手研究者が自力できちんと行うことや1年間に誠実に確実に行うことを重視し、地道な研究にも光を当ててくれます。まだ調べるべきことは沢山ありますが、笹川科学研究助成を受けて明らかにしたことを基に、次の研究に繋げることができました。どうしてもてもこれをやってみたい!というテーマがありましたら、笹川科学研究助成に応募してみることを強くお勧めいたします。

引用:Omura A.and Ikeda Y.(2022) Morphology of the suckers for hunting behavior in broadclub cuttlefish (Sepia latimanus). Ecol.Res.37(1)156-162.

<以上>

 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 13:15 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
先輩研究者のご紹介 真野 叶子さん [2024年02月19日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2021年度「神経細胞内タンパク質恒常性を担う構成的オートファジーとミトコンドリア局在の関係の研究」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、東京都立大学理学研究科の真野 叶子さんからのお話をお届けします。

<真野さんより>
 授業でミトコンドリアを習ったとき、高校生だった私は今では不思議なくらい感動し研究者を目指し始めました。そこから12年経った今、大学院でミトコンドリアと病気の関係を研究しています。
 脳を構成する神経細胞は死んでしまうと補われない細胞で、神経細胞死によって発症する病気にアルツハイマー病(AD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などがあります。2023年にはAD治療薬の承認が大きなニュースになりましたが、神経細胞死が起こるメカニズムにはまだまだ多くの謎があります。
 ミトコンドリアは細胞の中にあり、エネルギー生産など生存に必須な機能を担っています。神経細胞は特徴的な形で、核のある細胞体から長く伸びた軸索と長さをもつ細胞です。通常、ミトコンドリアは細胞内の必要なところに必要なだけあります。しかし加齢や疾患では軸索でのミトコンドリア減少が報告されており、近年軸索での減少が神経細胞死を引き起こすことがわかってきました。しかしどのように起こすかは不明で、私はこのメカニズムを研究してきました。
 神経細胞死の原因としてもうひとつ、異常なタンパク質の蓄積が報告されています。そこで、タンパク質の蓄積に注目したところ、軸索でのミトコンドリア減少はタンパク質分解系を低下させ、異常なタンパク質の蓄積させることで神経細胞死を引き起こすことを明らかにしました(Shinno et. al., 2024)。

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(写真1:研究の概要)

 2021年度に笹川科学研究助成に採択していただきました。その時、研究は壁に直面しており「私は研究に向いているのか?」と私自身も混沌としていました。しかし、研究費のおかげで自分のやりたい実験をすることができ、壁の突破口を見つけられました。研究に対しても少し自信がつき、来年度からは博士研究員としてミトコンドリアの研究を続けることにしました。またその後海外発表促進助成にも採択していただき、アメリカのワシントンD.C.で開催されたNeuroscience 2023に参加しました。参加人数も多くお祭りムードの中で海外の研究者と議論し、多種多様な研究を聞くことができ、とても刺激的な時間を過ごすことができました。笹川科学研究助成のおかげでできた経験が多く、その経験は今後の糧になると思います。高校生の時の私が、今の私を見たらきっと喜ぶだろうなと思う研究生活を送ることができ、とても嬉しいです。

写真2.jpg
(写真2:ワシントンモニュメントと夕焼けがとてもきれいで思い出に残っています)

<以上>

 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 12:44 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)