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先輩研究者のご紹介(SHEN YIGANGさん) [2021年05月24日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2019年度に「マイクロ流体デバイスを用いた潤滑オイルの金属粒子のリアルタイム検出と分析システムの開発」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、大阪大学生命機能研究科、SHEN YIGANGさんから最近の研究とコメントを頂きました。

<SHENさんより>
 私の専門分野は微細加工、電気計測と生命科学の融合分野であり、最新のマイクロ流体デバイスの開発とその応用の開拓を中心とした研究を行っております。2019年度に笹川科学研究助成をいただき、1年間、マイクロ流体デバイスを用いて船舶エンジンの故障研究関連の研究を行いました。お陰様で、最先端のマイクロ微細加工技術の利用ができ、電磁検出機能を搭載したマイクロ流体デバイスの開発に成功しました。この提案は、私の修士時代で開発した技術を一部生かしているものであり、エンジンの故障予兆とされる潤滑剤に含まれる金属粒子の量を定量的に評価する方法です。本手法の開発を経て、計測技術の習得やマイクロ流体デバイス技術への理解が一層深まり、今後の研究への活用も十分期待できると思います。
 さらに、私の現在取り込んでいる研究は、上記の課題のみならず、細胞などの微小粒子を高精度に操作可能な技術の開発にも力を入れています。細胞操作技術は、細胞の化学・力学的な挙動の解析やドラッグデリバリーのツールとして、生物学や医学の分野に大きな進展をもたらしています。これまで、様々な細胞操作技術は開発されて来たが、物理的な接触を必要としない非接触操作法は細胞等へのダメージを最小限に抑えることができ、操作も比較的簡便であることから、広く注目を集めています。既存の非接触細胞操作技術は、光学場、音響場、電場、熱場などといった、外部からの制御による場の勾配を利用して、微小物体の動きを制御するものです。この中でも、熱場(熱勾配による流体還流)を用いる操作方法は、物体への刺激が少ない、周囲の他のユニットとの統合し易い、物理的振動がなく、媒体の伝導率による制限がないなど、数多い非常に魅力的な特徴があります。そこで、私は上記のマイク流体デバイス技術と熱場による流体還流操作を融合し、多種類細胞の高精度操作が可能な次世代ポタブル細胞操作デバイスの開発を行っています。参考文献:Y. Shen,et al, Lab Chip, 2020, 20, 3733–3743.

図1.jpg

 最後ですが、この度、日本科学協会に充実したご支援をいただき、期待していた以上の成果を上げることができました。予算の使用に関する相談や、研究の進捗状況に合わせた途中変更にも親身になって柔軟に対応していただきました。お陰様で、ヨーロッパでの国際学会にも参加ができました。学会でプレナリー講演や他の発表を聞くことで、マイクロ流体や細胞のスクリーニングの分野の最先端の技術を知ることができ、自身の知識を広げ、また深めることができました。本会議では、自身の研究を深め、海外の研究者らの研究を広く知り、また研究者らと交流することができ、私にとって素晴らしい機会となりました(図2)。

図2.jpg

 笹川科学研究助成を申請する過程も非常に勉強になりました。研究計画の作成や研究費の管理、プロジェクト遂行に関する決断など、研究室の長が行う作業を自分自身で体験ができ、非常に貴重な経験でした。このような機会を与えてくださった本助成プログラムおよび関係者の方々に心から感謝いたします。
<以上>

 本制度の助成期間は1年間と短いものであり、その間に研究がすべて完了するものではなく、予算も十分では無いかと思います。しかし、研究計画を立案して研究費を獲得し、研究の進捗や経費をご自身で管理し、成果を発表するという一連の研究の流れを、若手のうちから経験することで、様々なことが見えてきたのではないかと思います。研究分野の壁を越え、今後も頑張っていただきたいと思います。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 13:52 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)