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先輩研究者のご紹介(櫻庭 陽子さん) [2021年04月26日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2019年度に「身体障害に対するチンパンジーとヒトの社会的態度の違いに関する研究」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、京都市動物園生き物・学び・研究センター所属(助成時)の、櫻庭 陽子さんから助成時の研究について、コメントを頂きました。

<櫻庭 陽子さんより>
ヒト社会において、身体障害者に対する反応や態度は様々です。一方、ヒトに一番近縁なチンパンジーでは、身体障害個体に対する群れの仲間による攻撃行動や血縁者以外による特別な支援は、野生ではほとんど見られません。飼育下でも、身体障害個体が群れに復帰している例がいくつか報告されていますが、彼らに対する群れメンバーの社会行動や態度にフォーカスした研究はほとんどありません。これらの社会的態度を調査することにより、身体障害個体の福祉向上としての群れ飼育を議論するとともに、私たちヒトの身体障害者に対する社会的態度の進化について考察することを目的としました。

Fig.1.jpg
―Fig.1―

今回の研究では、2つの動物園(愛知・熊本県内の動物園)で生活している身体障害があるチンパンジー2個体とその群れメンバーの行動を観察し、さらに身体障害チンパンジーの写真に対しての視線の動きを調査し、「行動的態度」「認知的態度」の抽出を試みました。行動観察の結果、チンパンジーでは身体障害が社会行動の違いに影響することはほとんどなく、野生で報告されているように、身体障害個体だけが特別配慮されたり排除されたりするような行動的態度の偏りはありませんでした。また彼らが群れ復帰した際の群れメンバーの態度について、当時の飼育スタッフにインタビューしたところ、大きな変化はなかったという回答が得られました。障害の程度や群れ構成、個性や性別も考慮する必要はありますが、今回観察した2群では、身体障害個体に対して特別な配慮も攻撃的な態度もほとんどなく生活できていることから、群れ飼育が身体障害個体の福祉向上にも有効である可能性が示唆されました。

Fig.2.jpg
Fig.2 右後肢を病気で切断したメスのチンパンジー

Fig.3.jpg
Fig.3 群れの仲間と暮らす左前腕を切断したメスのチンパンジー(左から3番目)

視線計測の認知実験では、ヒトの被験者において障害部位を長時間見る傾向がありました。今回チンパンジーを対象にした視線計測は助成期間中に実施できませんでしたが、チンパンジーたちが身体障害を認知しているのか、認知しているけども行動的態度に現れないだけなのか、それとも新たな発見があるのか…実験の準備をしているところです。

「動物」「社会的態度」「身体障害」という生物分野にも人文・社会分野にもかかわる研究内容だったため、提出する分野によって書き方を工夫しました。繰り上げ採択でしたが、他園での観察に必要な旅費を確保できたことは非常にありがたかったです。荒天による観察日の変更や観察対象個体の死亡などのハプニングもありましたが、メールでの相談にも応じていただき、無事遂行することができました。また、笹川科学研究助成は基本的に個人管理です。私は所属施設に管理をお願いしましたが、支出簿の作成や領収書の保管など、自ら研究費を管理・運用するいい機会になりました。
<以上>

 ヒトと、ヒトに一番近縁なチンパンジーの身体障害に対する行動や認知について調査する、興味深い研究でした。まだ実験の途中ということですので、これからも頑張っていただきたいと思います。
 研究は予想通りに進まず、様々なハプニングが起こることもあります。当会としては、計画の変更等によって対応させていただきたいと思いますが、あまりにも当初の計画と異なる場合は承認されない場合もあり、助成金を使い切れなかったという例もあります。そのため研究計画を立てる際は、様々なことを想定し柔軟な計画とすることも、研究を速やかに遂行する上では重要になるかと思いますので、意識していただけますと幸いです。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 16:37 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)