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先輩研究者のご紹介(胡 凱龍さん) [2021年01月18日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2019年度に「酸性水溶液中で溶けないグラフェンで保護された卑金属ナノ粒子触媒の触媒メカニズムの解明」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、筑波大学大学院数理物質科学研究科所属の、胡 凱龍さんから助成時の研究について、コメントを頂きました。

<胡さんより>
 次世代エネルギーとして期待される水素は、特に燃料電池車への応用が期待されています。効率良く水素製造が可能な水の電気分解は酸性条件下で行われており、電極の多くは白金が用いられています。酸性条件下で卑金属が腐食しないのであれば貴金属に代わって使用したいという社会的要望はますます高くなってきています。しかし、防腐技術と触媒性能の両立は原理的に背反します。つまり、防腐とは腐食しやすい卑金属の表面を覆い保護することですが、触媒反応が起こる反応サイトを潰すことを意味しています。一方で触媒は触媒反応が起こるサイトを酸電解液に露出させなければいけません。これらを両立するために、私は化学的に安定なグラフェンを卑金属表面に張り付けて保護膜として採用するのと同時にグラフェンが持つプロトン透過能力に着目しました。従来の保護法は保護を優先し触媒活性サイトを潰していましたが、私の研究は保護状態であっても触媒反応に関われるように保護膜自身に機能(プロトン透過能力)を与え、透過したプロトンの触媒反応を積極的に活用することで卑金属を腐食から保護しつつ触媒性能を生かせるのではないかと着想し、笹川科学研究助成に提案し採択していただきました。
 1年間の助成研究の結果、卑金属ナノ粒子の表面に2-4層のグラフェンを蒸着することで腐食と触媒性能のバランスの実現に成功しました(図1)。また、1-2層のグラフェン被膜卑金属ナノ粒子では触媒性能は卑金属触媒に近い値を示しましたが腐食が激しく、一方で、10層以上のグラフェン被膜卑金属ナノ粒子では腐食が完全に起こらない代わりに触媒性能は膜であるグラフェンにドンドン近づくことも明らかとなりました。

画像1.jpg
図 1. (a) 折り曲げ可能な触媒の光学顕微鏡写真.
(b)1層のグラフェンで被膜したNiMoナノ粒子の高分解電子顕微鏡像.

 このような層数依存性を持つ触媒能力についてプロトン透過能力という観点で詳細に検討しました。異なる層数のグラフェンを用いて膜を作製し、電気化学セルの隔膜として採用し水の電気分解実験を行いました(液漏れがなくグラフェン隔膜以外に電気的接続がない状態)。I-V測定やインピーダンス測定からプロトンが透過していることを実証し(図2a)、定電位測定から1-4層のグラフェン膜はプロトンをよく透過させ、10層以上ではプロトン透過量が著しく減少することが分かりました(図2b)。これらの透過実験結果から、2-4層のグラフェンで覆った卑金属は程よくプロトンを透過させて卑金属表に到達した透過したプロトンが触媒反応を起こし、一方で10層以上のグラフェンで覆った卑金属はプロトンを透過させないため卑金属表面で触媒反応が起こらず腐食もしないという触媒反応メカニズであると提案することができました。

画像2.jpg
図 2.層数を変化させたグラフェンと窒素ドープグラフェン膜に対する
(a) I-V測定と(b)定電位測定.

 このような触媒反応メカニズムはこれまで卑金属が腐食して使えなかった場面でも卑金属が活躍できる可能性を示しており、様々な卑金属分野で貢献できるのではないかと期待しています。
 笹川科学研究助成は学生自身の自由な発想を提案し、自分の研究費を獲得できる数少ない機会を提供してくれます。応募するにあたって、申請書作成、予算管理と報告書作成など、アカデミックの世界で生き残るために必要な貴重な経験をさせて頂きました。初めは学生ではなかなか目にしない書類と責任の重さで戸惑いましたが、自立した研究者生活を先取りして経験させてくれる貴重な機会を頂き、笹川科学研究助成の関係者の皆様、また、私の研究提案を理解し採択して頂いた審査員の皆様に心から感謝をいたします。
<以上>

 次世代エネルギーとして期待される水素を製造するため、電気分解で用いる電極を研究されたそうです。卑金属を電極として使うことは、腐食してしまうため無理だと言われてきましたが諦めずに挑戦し、腐食を抑える方法を発見されました。一見無理と考えられることにも立ち向かっていく姿勢は、研究者として大切であり、今後も頑張っていただきたいと思います。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 13:24 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0)