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〜新型コロナ感染症を考える〜 酒井邦嘉先生 [2020年07月28日(Tue)]
 
 科学隣接領域研究会では、研究会メンバーの先生方からの「新型コロナウイルス感染症」に関するご寄稿をご紹介いたします。
 第4回目は、酒井邦嘉先生(所属:東京大学大学院総合文化研究科 教授 専門:言語脳科学)からのご寄稿です。医学書院が発行している『BRAIN and NERVE』2020年07月号 (増大号)の「あとがき」に掲載されたコラムで、韓流ドラマの話題から韓国でのコロナ禍の教育や倫理について考えるきっかけをいただきました。
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「酒井邦嘉先生からのご寄稿」

 最近観た『ブラックドッグ』という韓流ドラマ(全16話)が素晴らしかった。教師をめざす主人公が、私立高校で臨時採用となって後、念願の正規採用となるまでの成長を丁寧に描いたものだ。その国語科教師は、志厚いメンターや理解ある同僚に恵まれるも、臨時採用教師への差別、ライバルや派閥との確執、保護者からのクレームに悩み、迷い、そして生徒に寄り添う教師像を見出していく。このドラマのタイトルは,「ブラックドッグ症候群」を踏まえながら、正規採用と同じ仕事をこなす「臨時採用」なのに顕在化してしまう理不尽な偏見や疎外を浮き彫りにする。「生徒を見捨てるような教師は、教師の資格なんてない」、「教師が他人の目を意識するようになったら、終わりよ」といった、ベテラン教師の厳しくも温かな言葉が心に残った。

 このドラマの背景には、ますます過熱する韓国の教育事情がある。決して出題ミスが許されない日本の大学入試の様子が、そのまま韓国の高校3年生の中間試験と重なるのだから驚きだ。生徒たちは成績別にランク付けされ、内申書のいかんによって推薦入試枠を決められ、さらに入試制度の改革に翻弄される。そうした歪んだ教育の構図が、ドラマで克明に描かれつつも風刺され、疑問視されている。中でも学校と学習塾の関係(腐れ縁?)や、受験対策授業の過熱ぶりなどは日本にも共通した問題であり、極端な学歴偏重社会の中で、予備校化する高校の存在意義が問われているのだ。

 新型コロナウイルスの蔓延にともなう休校措置によって、在宅学習が世界的な課題となった。このドラマで描かれるEBC(教育放送局)は、実在するEBS(韓国教育放送公社)を恐らくモデルにしており、テキストや映像教材の充実ぶりがうかがわれる。学年ごとの各教科のカリキュラムに合わせた授業が、人気講師陣によって既に収録されていたため、韓国では在宅学習に大いに役立ったそうだ。日本の大学でも、収録済みのビデオによる講義が導入されている。それでも、教師と学生の双方向のやりとりを重視したオンライン講義は欠かせないのではないか。新たな疑問によって説明を改めるということの積み重ねなしに、学問の進歩はないのだから。

 さて、今月号の特集は「神経倫理ハンドブック」である。先ほどのベテラン教師の言葉で、「教師」を「医師」に、「生徒」を「患者」に置き換えて符合するところに、真の倫理がありそうだ。医療従事者には等しく、「患者を救う」というプロフェッショナルとしての仕事があり、そこに決して差別や偏見があってはならない。COVID-19 を経て、このことがいっそうはっきりしたように思える。

※このコラムは、BRAIN and NERVE, 72巻7号p.828, 2020年
http://www.igaku-shoin.co.jp/journalDetail.do?journal=38967)に掲載されたものです。
※無断転載、複写等はご遠慮ください。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:30 | 科学隣接領域研究会 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)