先輩研究者のご紹介(井上 治代さん)
[2019年12月09日(Mon)]
こんにちは。科学振興チームの豊田です。
本日は、2018年度に「「無縁死」が問題視される現代社会における葬儀や死後事務等を第三者に託す「葬送の社会化」に関する研究」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、認定NPO法人エンディングセンター所属の井上 治代さんから、助成時の研究についてコメントを頂きました。
<井上さんより>
2010年にNHK放送によって「無縁社会」の語とその実態がセンセーショナルに報道された。つづく2011年の東日本大震災では日本人の死生観が深まり、2010年に新語・流行語大賞にノミネートされた「終活」の語は、2012年には同大賞でトップテン入りをした。
つまり自分の死後のことは自身で準備しておこうという動きである。だが葬送の大原則は「自分の死後のことは自分ではできない」「遺骨は自分で歩いてお墓に入れない」のである。つまり自身の死後のことを託す者がいない人はどうするのか、といった問題が浮上した。
これまで福祉も法律も死者を対象とせず、わずかにあるのは「生活保護法」による葬祭費の給付と、「行旅病人及行旅死亡人取扱法」による措置である。ところが現在増えているのは、葬祭費もあり身元もはっきりしているが、死後のことを託す者がいないケースであって、先の2つの法律の範疇を超えた、既存の法律が想定していない事態が進んでいるのである。
尊厳ある死と葬送の実現をめざして活動する認定NPO法人エンディングセンター(以下、エンディングセンターと略す)は、前身の「21世紀の結縁と墓を考える会」(1990年発足)の時から「無縁社会」を想定していた。
夫婦一代限りの不連続な核家族が主流になりさらに個人化が進む社会で、連続性をその特徴にもつ「家」的性格を顕著に残した墓の継承制に制度疲労が起こっていたからだ。
そこで継承制をとらない非継承墓の必要性を説くと同時に、家族機能が希薄化した社会で葬儀・死後事務等の担い手を確保できない人々の増加に伴い、葬送の社会化の構築を訴えてきた。
2000年に「エンディングセンター」と改名し「考える会」から「実践する会」へと移行、喪主を確保できない人々のために「死後サポート」を開始した。
そして2005年東京町田市に、2012には大阪・高槻市に、継承を前提としない樹木葬墓地「桜葬」(墓標を桜とする)を開設した。
2007年にNPO法人の認証を受け、2014年には「認定」NPO法人となり、現在、会員数は約3,700名である。
昨年、笹川科学研究助成を得て、自身の葬儀や死後事務等を、生前の委任契約によってエンディングセンターに託した人々を対象に調査を行った。
その一部を紹介すると、「子どもがいない、頼れない」というケースでは、親族といえば両親や自分と同世代の兄弟姉妹となり、【高齢】で頼れない。「兄弟姉妹とも不仲ではないものの、面倒なことを頼みたくないという関係であった。
ましてや甥姪に至っては言うに及ばず」とか「兄弟は同じく年をとっていく。その子どもたちとは全く付き合いもないので【迷惑をかけたくない】」というように、兄弟姉妹は同世代の高齢者で、その子ども(甥や姪)となると【没交渉】となっている。もし死後のことを頼むと【迷惑】がかかると感じている。
「私は、子は持たなかった。子の代わりの装置(しくみ)としてのエンディングセンターという存在。そしてそのありがたさ」という記述があるように、親族の数の現象と関係性の希薄化によって【葬送の社会化】が求められていることがわかる。
あらゆる動物の中で、人間だけが遺体を葬るという行為を行うという。そうであるならば「埋葬」までが人間の尊厳、福祉の対象となるべきだろう。
笹川科学研究助成では実践研究部門として、現場の第一線で直面する問題を解決しようとする、教員やNPO職員の方、博物館の学芸員の方を対象に助成を行っております。
今回は「死」という扱うことが難しいですが、誰もが関係する問題について研究をされたそうです。
核家族という家族の形が増えることで、葬儀のあり方等についても考え方が変化し、どのように葬儀を変化させていけばいいか、より良い解決方法が見つかるよう頑張っていただきたいと思います。
日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本日は、2018年度に「「無縁死」が問題視される現代社会における葬儀や死後事務等を第三者に託す「葬送の社会化」に関する研究」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、認定NPO法人エンディングセンター所属の井上 治代さんから、助成時の研究についてコメントを頂きました。
<井上さんより>
2010年にNHK放送によって「無縁社会」の語とその実態がセンセーショナルに報道された。つづく2011年の東日本大震災では日本人の死生観が深まり、2010年に新語・流行語大賞にノミネートされた「終活」の語は、2012年には同大賞でトップテン入りをした。
つまり自分の死後のことは自身で準備しておこうという動きである。だが葬送の大原則は「自分の死後のことは自分ではできない」「遺骨は自分で歩いてお墓に入れない」のである。つまり自身の死後のことを託す者がいない人はどうするのか、といった問題が浮上した。
これまで福祉も法律も死者を対象とせず、わずかにあるのは「生活保護法」による葬祭費の給付と、「行旅病人及行旅死亡人取扱法」による措置である。ところが現在増えているのは、葬祭費もあり身元もはっきりしているが、死後のことを託す者がいないケースであって、先の2つの法律の範疇を超えた、既存の法律が想定していない事態が進んでいるのである。
尊厳ある死と葬送の実現をめざして活動する認定NPO法人エンディングセンター(以下、エンディングセンターと略す)は、前身の「21世紀の結縁と墓を考える会」(1990年発足)の時から「無縁社会」を想定していた。
夫婦一代限りの不連続な核家族が主流になりさらに個人化が進む社会で、連続性をその特徴にもつ「家」的性格を顕著に残した墓の継承制に制度疲労が起こっていたからだ。
そこで継承制をとらない非継承墓の必要性を説くと同時に、家族機能が希薄化した社会で葬儀・死後事務等の担い手を確保できない人々の増加に伴い、葬送の社会化の構築を訴えてきた。
2000年に「エンディングセンター」と改名し「考える会」から「実践する会」へと移行、喪主を確保できない人々のために「死後サポート」を開始した。
そして2005年東京町田市に、2012には大阪・高槻市に、継承を前提としない樹木葬墓地「桜葬」(墓標を桜とする)を開設した。
2007年にNPO法人の認証を受け、2014年には「認定」NPO法人となり、現在、会員数は約3,700名である。
昨年、笹川科学研究助成を得て、自身の葬儀や死後事務等を、生前の委任契約によってエンディングセンターに託した人々を対象に調査を行った。
その一部を紹介すると、「子どもがいない、頼れない」というケースでは、親族といえば両親や自分と同世代の兄弟姉妹となり、【高齢】で頼れない。「兄弟姉妹とも不仲ではないものの、面倒なことを頼みたくないという関係であった。
ましてや甥姪に至っては言うに及ばず」とか「兄弟は同じく年をとっていく。その子どもたちとは全く付き合いもないので【迷惑をかけたくない】」というように、兄弟姉妹は同世代の高齢者で、その子ども(甥や姪)となると【没交渉】となっている。もし死後のことを頼むと【迷惑】がかかると感じている。
「私は、子は持たなかった。子の代わりの装置(しくみ)としてのエンディングセンターという存在。そしてそのありがたさ」という記述があるように、親族の数の現象と関係性の希薄化によって【葬送の社会化】が求められていることがわかる。
あらゆる動物の中で、人間だけが遺体を葬るという行為を行うという。そうであるならば「埋葬」までが人間の尊厳、福祉の対象となるべきだろう。
<以上>
笹川科学研究助成では実践研究部門として、現場の第一線で直面する問題を解決しようとする、教員やNPO職員の方、博物館の学芸員の方を対象に助成を行っております。
今回は「死」という扱うことが難しいですが、誰もが関係する問題について研究をされたそうです。
核家族という家族の形が増えることで、葬儀のあり方等についても考え方が変化し、どのように葬儀を変化させていけばいいか、より良い解決方法が見つかるよう頑張っていただきたいと思います。
日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。