先輩研究者のご紹介(相田 裕介さん)
[2019年09月02日(Mon)]
こんにちは。科学振興チームの豊田です。
本日は、2018年度に「障害者に対応するための3Dプリンタを用いたハンズオン資料の作成とその活用」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、坂東市立南中学校所属(助成当時:ミュージアムパーク茨城県自然博物館所属)の、相田 裕介さんから助成時の研究について、コメントを頂きました。
<相田さんより>
ミュージアムパーク茨城県自然博物館は、年間48万人以上の来館者があり、そのなかで障がい者の団体や個人が多数来館しており、その人数は年々増加傾向にあります。障がい者が一般の人と同じように学ぶことができるためには、展示方法や解説方法などに様々な工夫が必要とされます。
博物館の資料は直接触れることができるものが非常に少ない現状があります。これまでは標本を「物」として「見せる」だけの展示が主流でしたが、現在学校や博物館に求められているものは「体験を伴った学び」であり、従来の「見せる」だけの展示だけでは十分に博物館の標本を生かしきれていない現状があります。この課題を解決するための方法の一つとしてハンズオン資料の活用が考えられます。
2018年度に笹川科学研究助成をいただき、3Dプリンタを用いたハンズオン資料の製作および活用について研究することができました。昨今、3Dプリンタは家庭用も普及し始め、以前よりも身近なものとなりました。今回は3Dプリンタを用いて資料を製作し、博物館の常設展示に取り入れることで、障がい者の方が触れて学べる展示を製作し、その効果について研究を行いました。
ハンズオン資料は展示だけでは学習効果はあまりありません。体験者が自発的に学ぶことができるように学習プログラムを検討し実践しました。ハンズオン資料のすべての部分についてではなく、形状において一番顕著であり分かりやすい内容についてクイズ形式の学習プログラムとしました。例えば、蚊と蠅の拡大模型では、口器の形状の違いについてクイズを製作しました。視覚障がい者のための学習プログラムであるため、問題文や解説については点字を付けることで自発的に取り組むことができる工夫を行いました。
今回の研究では、製作した資料を、博物館のアウトリーチ事業で行っている「移動博物館」でも活用しました。茨城県内の盲学校において、3Dプリンタで製作した資料を持参し、多くの児童・生徒に触れてもらいました。ハンズオン資料を細かく触り、小さな特徴にも疑問を持ちながら観察する姿が見られました。
今回の研究をとおして、視覚障がい者の方からとても重要な意見をいただきました。それは「小さなものを大きくして製作したものに触れて学びたい」という意見でした。大きなものは実際に触れて自分の体の大きさと比較することで大きさを実感できます。また形状も理解することができます。しかし、小さなもの(蚊やハエなど)は、小さすぎて触ってもどのような形状のものなのか分からないとのことです。そのような小さなものを大きくして製作することができるのも3Dプリンタの良いところと考えます。今後は、より小さなもの(微化石や花粉など)についてマイクロCTなどを用いて3Dデータ化し、それらの拡大模型を3Dプリンタを用いて製作することで障がい者のニーズに合った資料を製作していきたいと考えています。
博物館で、障がいのある方も自発的に学習ができるように、3Dプリンタも用いた新しい展示の方法を研究されたとのことでした。私は、3Dプリンタは空想上のアニメキャラクタ等を立体化するような使い方しか思いつきませんでしたが、現実にあるものでも大きくしたり小さくしたりすることで、様々な活用方法があることに驚きました。
日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本日は、2018年度に「障害者に対応するための3Dプリンタを用いたハンズオン資料の作成とその活用」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、坂東市立南中学校所属(助成当時:ミュージアムパーク茨城県自然博物館所属)の、相田 裕介さんから助成時の研究について、コメントを頂きました。
<相田さんより>
ミュージアムパーク茨城県自然博物館は、年間48万人以上の来館者があり、そのなかで障がい者の団体や個人が多数来館しており、その人数は年々増加傾向にあります。障がい者が一般の人と同じように学ぶことができるためには、展示方法や解説方法などに様々な工夫が必要とされます。
博物館の資料は直接触れることができるものが非常に少ない現状があります。これまでは標本を「物」として「見せる」だけの展示が主流でしたが、現在学校や博物館に求められているものは「体験を伴った学び」であり、従来の「見せる」だけの展示だけでは十分に博物館の標本を生かしきれていない現状があります。この課題を解決するための方法の一つとしてハンズオン資料の活用が考えられます。
2018年度に笹川科学研究助成をいただき、3Dプリンタを用いたハンズオン資料の製作および活用について研究することができました。昨今、3Dプリンタは家庭用も普及し始め、以前よりも身近なものとなりました。今回は3Dプリンタを用いて資料を製作し、博物館の常設展示に取り入れることで、障がい者の方が触れて学べる展示を製作し、その効果について研究を行いました。
ハンズオン資料は展示だけでは学習効果はあまりありません。体験者が自発的に学ぶことができるように学習プログラムを検討し実践しました。ハンズオン資料のすべての部分についてではなく、形状において一番顕著であり分かりやすい内容についてクイズ形式の学習プログラムとしました。例えば、蚊と蠅の拡大模型では、口器の形状の違いについてクイズを製作しました。視覚障がい者のための学習プログラムであるため、問題文や解説については点字を付けることで自発的に取り組むことができる工夫を行いました。
今回の研究では、製作した資料を、博物館のアウトリーチ事業で行っている「移動博物館」でも活用しました。茨城県内の盲学校において、3Dプリンタで製作した資料を持参し、多くの児童・生徒に触れてもらいました。ハンズオン資料を細かく触り、小さな特徴にも疑問を持ちながら観察する姿が見られました。
今回の研究をとおして、視覚障がい者の方からとても重要な意見をいただきました。それは「小さなものを大きくして製作したものに触れて学びたい」という意見でした。大きなものは実際に触れて自分の体の大きさと比較することで大きさを実感できます。また形状も理解することができます。しかし、小さなもの(蚊やハエなど)は、小さすぎて触ってもどのような形状のものなのか分からないとのことです。そのような小さなものを大きくして製作することができるのも3Dプリンタの良いところと考えます。今後は、より小さなもの(微化石や花粉など)についてマイクロCTなどを用いて3Dデータ化し、それらの拡大模型を3Dプリンタを用いて製作することで障がい者のニーズに合った資料を製作していきたいと考えています。
<以上>
博物館で、障がいのある方も自発的に学習ができるように、3Dプリンタも用いた新しい展示の方法を研究されたとのことでした。私は、3Dプリンタは空想上のアニメキャラクタ等を立体化するような使い方しか思いつきませんでしたが、現実にあるものでも大きくしたり小さくしたりすることで、様々な活用方法があることに驚きました。
日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。