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先輩研究者のご紹介 稲葉 勇人さん [2026年06月23日(Tue)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2023年度「ティラノサウルス類の残存タンパク質の多角的解析から確立する、
信頼性が高い化石タンパク質の検出方法」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられ
た、丹波市立たんば恐竜博物館 教育普及専門員 / 岡山理科大学大学院 総合情報研究科
数理・環境システム専攻の稲葉勇人さんからのお話をお届けします。

<稲葉さんより>
 この度は、執筆の機会をいただき、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。現在の私
は、丹波市立たんば恐竜博物館にて教育普及専門員を務めながら、岡山理科大学の大学院
生として化石に残されたタンパク質の研究を続けています。

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写真1.たんば恐竜博物館

 「化石」は、「石に化ける」と書きます。このため、読者の方は、骨や歯などが完全に「石」になったものを、化石として思い浮かべるかもしれません。しかし、一部の化石は、完全な「石」ではなく、当時の生き物の成分を保存している場合があります。その成分の代表例が、タンパク質です。
 私たちの体にもあるタンパク質は、一つひとつのアミノ酸が並んで構成されています。そして、その並び方は生き物によって少しずつ異なります。このため、今の動物では、アミノ酸の並び方を調べることで、研究対象がどの動物に近いのか、どのような進化の道をたどってきたのかを考える手がかりになります。一方、絶滅した動物では、多くの場合、化石の形に基づいて仲間分けや進化が考えられています。私は将来的に、恐竜などの絶滅動物を形だけでなく、化石に残された分子情報をもとに進化や分類を考えられるようにしたいと思い、この研究に取り組んでいます。

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写真2. 一部の化石は、ゆっくりと溶かされると、徐々に柔らかくなります。より詳細な分析を実施すると、アミノ酸の並び方まで推測できます。

 しかし、笹川科学研究助成に応募した当時の私には、論文業績が全くありませんでした。また、「化石にタンパク質が残る」ということ自体が、恐らく読者の方に馴染みの無いことのように、研究分野としても発展途上です。そのような状況の中で採択通知をいただいた際には、自分の業績ではなく、この研究の面白さや将来性を認めていただいたように感じて、嬉しかったです。また、周りの先生方や後輩たちも一緒に喜んでくれました。
 採択後、まず印象に残っていることは、研究者交流会に参加したことです。普段の学会では近い分野の研究者と話しますが、この会では、異なる分野に取り組む同年代の大学院生と交流することができました。自分の研究の面白さや悩みなどを語り、「奨励賞を目指そう」と盛り上がったことも覚えています。異なる分野で研究に向き合う仲間に出会えたことは、大きな刺激になりました。
 助成開始後は、概ね計画通りに研究を進めることができました。助成金は、日々使用する実験用品だけでなく、試料採取のためのモンゴル・ゴビ砂漠での恐竜化石の発掘調査、モンゴルの研究所での標本調査、化石から抽出したタンパク質の解析、学会発表のための旅費など、研究の進行に合わせて幅広く活用させていただきました。特に、発掘調査や標本調査に参加できたことは、私の研究にとって大きな意味がありました。化石に残るタンパク質の研究は、ほとんどを実験室で過ごします。このため、発掘現場や研究所で化石と向き合った経験は、化石の残り方や、化石を産出する地層の状態など、試料の地質学的な背景を知ることに繋がり、後の実験室で得られたデータを考える上でも重要な情報になりました。
 しかし、研究を進めていく中で、当初予定していたカナダでの発掘調査には、参加できなくなりました。このときには、研究計画および助成金の使用用途の変更について、柔軟かつ寛大なご対応をしていただけました。このため、当初の目的を保ちながら、安心して研究を進めることができました。

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写真3.日々の実験の様子

 助成終了後には、この助成によって進めることのできた研究成果をもとに、化石からタンパク質を可視化し、抽出する手法の開発に関する論文を発表できました。応募当時には論文業績の無かった私にとって、この成果は研究者としての大きな一歩と感じています。そして現在は、丹波市立たんば恐竜博物館にて、恐竜や化石の魅力を多くの方に伝える仕事もしています。幼い頃から大好きな恐竜に、研究と教育普及の両面から携わることができている現在は、助成によって、研究を継続できたことも大きく影響していると思います。当時の私に、温かいご支援と挑戦の機会を与えてくださった笹川科学研究助成の皆様に、心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
 私自身の経験から、笹川科学研究助成の採択では、業績や肩書きなどではなく、純粋な研究の面白さを高く評価してくださると思います。これからの応募を考えている方は、自分自新の研究の可能性を信じて、ぜひ挑戦してみてください。

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写真4.モンゴルの発掘調査にて発見した恐竜の骨化石

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写真5.論文発表時の様子


<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 13:56 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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