先輩研究者のご紹介 杉村 晴菜さん
[2026年06月12日(Fri)]
こんにちは。科学振興チームです。
本日は、2023年度「反芳香族アプローチによる有機近赤外発光色素の創生」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科物質創成科学領域機能有機化学研究室の杉村 晴菜さんからのお話をお届けします。
<杉村さんより>
私は大学院時代に有機合成化学を専攻し、その中で特異な芳香族性を示す化合物の合成に取り組んできました。ベンゼンなどの芳香族分子は通常安定な化合物ですが、共役系に二電子を加えると性質が反転し、反芳香族化合物となります。反芳香族化合物は不安定で合成が困難だとされる一方で、興味深い電子特性を示すことが期待されています。2023年度笹川科学研究助成では、反芳香族イソフロリンの金属錯体合成、および発光特性の評価に関する研究に対し、ご支援いただきました。研究内容を簡単にご紹介します。
私たちの身のまわりには野菜や果物、肉など色のついた物質が多くみられます。これらの色はヘムやクロロフィルといった天然色素に由来しています。ヘムやクロロフィルの骨格はポルフィリンと総称され、窒素原子を含む五員環が環状に4個結合した構造を持ちます。ポルフィリンは芳香族性をもつ非常に安定な化合物です。色素や触媒として幅広く用いられています。
私の注目したイソフロリンは、ポルフィリンの合成中間体として提案された化合物です。イソフロリンはポルフィリンと同じ骨格をもちますが、二電子加わって反芳香族性を帯びるために不安定であるとされてきました。私は合成前駆体ポルフィリンに電子求引性置換基を導入し、イソフロリンを安定に合成することに成功しました(図1)[1]。笹川科学研究助成では、さらに研究を発展させ、イソフロリン金属錯体の合成、およびイソフロリンの発光特性を評価しました。得られた成果は国際学術論文として発表しております[2]。
笹川科学研究助成には博士前期課程2年在籍時に申請しました。それまで目の前の実験で手いっぱいだった私にとって、申請書類の作成過程は、自分の研究の意義を深く理解し、次の展開を考える、素晴らしい機会となりました。研究者としての大切な訓練となり、採択いただいたことで研究を続ける自信にもなりました。申請を迷っておられる方は、ぜひチャレンジされることをお薦めします。
博士課程修了後、私は奈良先端科学技術大学院大学に助教として着任し、反芳香族化合物の本質的な性質を理解しその謎に迫る研究を続けています。このように生涯の研究テーマと言える研究対象に出会えたことも、日本科学協会の皆様に素敵なご縁をいただき、様々ご支援いただいたからです。心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
[1] H. Sugimura, K. Nakajima, K. Yamashita, T. Ogawa, Eur. J. Org. Chem. 2022, e202200747.
https://doi.org/10.1002/ejoc.202200747
[2] H. Sugimura, K. Nakajima, K. Yamashita, Asian J. Org. Chem. 2025, 14, e202400550.
https://doi.org/10.1002/ajoc.202400550
日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本日は、2023年度「反芳香族アプローチによる有機近赤外発光色素の創生」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科物質創成科学領域機能有機化学研究室の杉村 晴菜さんからのお話をお届けします。
<杉村さんより>
私は大学院時代に有機合成化学を専攻し、その中で特異な芳香族性を示す化合物の合成に取り組んできました。ベンゼンなどの芳香族分子は通常安定な化合物ですが、共役系に二電子を加えると性質が反転し、反芳香族化合物となります。反芳香族化合物は不安定で合成が困難だとされる一方で、興味深い電子特性を示すことが期待されています。2023年度笹川科学研究助成では、反芳香族イソフロリンの金属錯体合成、および発光特性の評価に関する研究に対し、ご支援いただきました。研究内容を簡単にご紹介します。
私たちの身のまわりには野菜や果物、肉など色のついた物質が多くみられます。これらの色はヘムやクロロフィルといった天然色素に由来しています。ヘムやクロロフィルの骨格はポルフィリンと総称され、窒素原子を含む五員環が環状に4個結合した構造を持ちます。ポルフィリンは芳香族性をもつ非常に安定な化合物です。色素や触媒として幅広く用いられています。
私の注目したイソフロリンは、ポルフィリンの合成中間体として提案された化合物です。イソフロリンはポルフィリンと同じ骨格をもちますが、二電子加わって反芳香族性を帯びるために不安定であるとされてきました。私は合成前駆体ポルフィリンに電子求引性置換基を導入し、イソフロリンを安定に合成することに成功しました(図1)[1]。笹川科学研究助成では、さらに研究を発展させ、イソフロリン金属錯体の合成、およびイソフロリンの発光特性を評価しました。得られた成果は国際学術論文として発表しております[2]。
図1 反芳香族イソフロリンとその前駆体ポルフィリンの化学構造と溶液写真
笹川科学研究助成には博士前期課程2年在籍時に申請しました。それまで目の前の実験で手いっぱいだった私にとって、申請書類の作成過程は、自分の研究の意義を深く理解し、次の展開を考える、素晴らしい機会となりました。研究者としての大切な訓練となり、採択いただいたことで研究を続ける自信にもなりました。申請を迷っておられる方は、ぜひチャレンジされることをお薦めします。
博士課程修了後、私は奈良先端科学技術大学院大学に助教として着任し、反芳香族化合物の本質的な性質を理解しその謎に迫る研究を続けています。このように生涯の研究テーマと言える研究対象に出会えたことも、日本科学協会の皆様に素敵なご縁をいただき、様々ご支援いただいたからです。心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
[1] H. Sugimura, K. Nakajima, K. Yamashita, T. Ogawa, Eur. J. Org. Chem. 2022, e202200747.
https://doi.org/10.1002/ejoc.202200747
[2] H. Sugimura, K. Nakajima, K. Yamashita, Asian J. Org. Chem. 2025, 14, e202400550.
https://doi.org/10.1002/ajoc.202400550
<以上>
日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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