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先輩研究者のご紹介 大内 彩子さん [2026年05月12日(Tue)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2023年度「海馬−嗅内皮質回路において未来の経路情報を表現する神経メカニズムの解明」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、理化学研究所・脳神経科学研究センター・時空間認知神経生理学研究チーム・基礎科学特別研究員(現所属)の大内 彩子さんからのお話をお届けします。

<大内さんより>
 2023年度はポスドクとして4年目を迎える年でしたが、当時は業績が十分でないまま、前年度に日本学術振興会特別研究員PDの任期を満了しました。日々実験に取り組んでいたものの、なかなか成果に結びつかず強い焦りを感じていました。そのような状況下で、この業績で自分の研究費を新たに獲得することはできるのだろうかと藁にも縋る思いで笹川科学研究助成に申請したことを今でも鮮明に覚えています。本研究助成によってご支援いただいた研究内容の概要を簡単にご紹介いたします。
 私たちは、自分が今どこにいるのかを把握し、目的地までの移動を計画することができます。こうした空間認知や空間ナビゲーション機能には、海馬や嗅内皮質(きゅうないひしつ)と呼ばれる脳の領域が関わっていると考えられています。海馬は、動物が特定の場所にいるときに活動する「場所細胞」があり、主に自分の現在位置を表しています。一方、嗅内皮質には、空間を移動するときに六角形の格子状に活動する「格子細胞」があり、空間全体の地図のような役割を果たしています(図1)。

画像3.jpg

 これまでの研究では、こうした神経細胞が「現在いる場所」をどのように表現しているかが調べられてきました。しかし、「これから向かう場所」を脳がどのように表現しているのかは不明でした。本研究では、ラットの嗅内皮質において将来の位置情報を表現する「予測的格子細胞」を発見しました(図2)。この発見により、動物やヒトがどのように目的地への移動を計画しているのか、さらに記憶と空間認知がどのように結びついているかの理解が進むことが期待されます。

画像4.jpg

【申請を検討している方へ】
 私の場合、申請時は後に論文化されたデータもまだ得られておらず、「何か新しい発見につながるのではないか」という期待だけが芽生え始めている段階でした。このように十分な根拠がない状況では、内容が適切に伝わるか、審査において評価されるかという不安もありましたが、「このようなことが明らかになれば意義深いのではないか」と構想を深めながら申請書を作成しました。
 本採択を通じて、データが十分でないから申請書が書けないのではなく、申請書を書くという行為そのものが、自身の研究を俯瞰的に見直し、研究者としての資質を高める機会になるのだと実感しました。助成制度や各種公募においては、不採択となる場合であっても、申請の過程から得られる学びは多いと考えています。申請に迷われている方がいらっしゃいましたらぜひ積極的に挑戦していただきたいと思います。

 最後に、研究者としての励みをくださった日本科学協会の皆様、日頃よりサポートしてくださる研究チームの皆様に、心より御礼申し上げます。

(参考文献)
・Ouchi, A., & Fujisawa, S. (2024). Predictive grid coding in the medial entorhinal cortex. Science, 385(6710), 776-784. https://doi.org/10.1126/science.ado4166
・Ouchi, A. (2026). Predictive grid cells: Future spatial representations in the hippocampal-entorhinal circuit. Neurosci Res, 227, 105053. https://doi.org/10.1016/j.neures.2026.105053

<以上>

 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:49 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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