先輩研究者のご紹介 田村 嘉章さん
[2025年06月09日(Mon)]
こんにちは。科学振興チームです。
本日は、2022年度「分子座標系における光電子放出のアト秒遅延に関する理論的研究」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、京都大学の田村 嘉章さんからのお話をお届けします。
<田村さんより>
私は、アト秒(10-18秒)という非常に短い時間スケールで起こる電子の動きを、理論の立場から研究しています。電子が光を受けて物質の中から放出されるとき、その動きにはアト秒オーダーのほんのわずかな“遅れ”が生じます。これは「光電子放出遅延時間」と呼ばれ、電子がどのように物質中を動き、どのように相互作用しているかを知る手がかりになります。
この遅延時間を調べるには、電子が物質の中でどのように散乱されているのかを理解する必要があります。私は「多重散乱理論」という枠組みを使って、電子が分子内で何度も跳ね返りながら進む様子を数式で表し、遅延時間の変化から、気相中の分子構造の情報を読み取る可能性を示すことができました。この成果は国際学会でも発表し、ポスター賞を受賞しました。
笹川科学研究助成は、私にとって研究者としての基盤を築く大きな転機となりました。助成金は主に、ポスター賞を受賞したアメリカ・オーランドでの国際学会への渡航費や参加費に充てました。本助成のおかげで現地での発表が実現し、世界中の研究者との議論を通じて視野を大きく広げることができました。
また、助成を受けた翌年度には、笹川科学研究助成の「海外発表促進助成」を活用することができました。この制度では、助成対象研究の成果を国際学会で発表する際の旅費などを支援していただけます。私はこの制度を利用して、再び海外での発表の機会を得ることができ、継続的に研究を世界に発信する後押しとなりました。単年の助成にとどまらず、その後の発展や発表の場まで支えてくれる制度の充実ぶりには、大変助けられました。
現在私は京都大学でポスドクとして研究に従事していますが、オーランドでの国際学会で出会った同じく受賞者の一人、Alexie Boyer氏と京都大学で偶然再会し、現在では共同で液相中のアト秒光電子放出遅延時間というより複雑な系の研究に取り組んでいます。挑戦的なテーマですが、まさに笹川科学研究助成によって得た知見とつながりが、新しい研究の一歩を後押ししてくれています。
日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本日は、2022年度「分子座標系における光電子放出のアト秒遅延に関する理論的研究」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、京都大学の田村 嘉章さんからのお話をお届けします。
<田村さんより>
私は、アト秒(10-18秒)という非常に短い時間スケールで起こる電子の動きを、理論の立場から研究しています。電子が光を受けて物質の中から放出されるとき、その動きにはアト秒オーダーのほんのわずかな“遅れ”が生じます。これは「光電子放出遅延時間」と呼ばれ、電子がどのように物質中を動き、どのように相互作用しているかを知る手がかりになります。
この遅延時間を調べるには、電子が物質の中でどのように散乱されているのかを理解する必要があります。私は「多重散乱理論」という枠組みを使って、電子が分子内で何度も跳ね返りながら進む様子を数式で表し、遅延時間の変化から、気相中の分子構造の情報を読み取る可能性を示すことができました。この成果は国際学会でも発表し、ポスター賞を受賞しました。
笹川科学研究助成は、私にとって研究者としての基盤を築く大きな転機となりました。助成金は主に、ポスター賞を受賞したアメリカ・オーランドでの国際学会への渡航費や参加費に充てました。本助成のおかげで現地での発表が実現し、世界中の研究者との議論を通じて視野を大きく広げることができました。
また、助成を受けた翌年度には、笹川科学研究助成の「海外発表促進助成」を活用することができました。この制度では、助成対象研究の成果を国際学会で発表する際の旅費などを支援していただけます。私はこの制度を利用して、再び海外での発表の機会を得ることができ、継続的に研究を世界に発信する後押しとなりました。単年の助成にとどまらず、その後の発展や発表の場まで支えてくれる制度の充実ぶりには、大変助けられました。
現在私は京都大学でポスドクとして研究に従事していますが、オーランドでの国際学会で出会った同じく受賞者の一人、Alexie Boyer氏と京都大学で偶然再会し、現在では共同で液相中のアト秒光電子放出遅延時間というより複雑な系の研究に取り組んでいます。挑戦的なテーマですが、まさに笹川科学研究助成によって得た知見とつながりが、新しい研究の一歩を後押ししてくれています。
<以上>
日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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