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先輩研究者のご紹介 山本 翔平さん [2025年03月10日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2022年度「無料学習サイト大規模フィールド実験でのピア効果による学習時間と学習定着の促進」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、一橋大学特任講師の山本 翔平さんからのお話をお届けします。

<山本さんより>
 この記事を読んでくださっている皆様、山本翔平と申します。皆様は、友人や他の人と一緒に仕事や勉強をすることで、継続しやすくなった経験はありませんか?

 本研究では、模擬的な英語学習スマートフォンアプリを用いて、オンライン学習における学習パートナーの影響を検証しました。具体的には、学習者の成績や忍耐力が、パートナーの学習態度(どのように提示させたかどうかは図1参照)によってどのように変化するのかを調べました。

山本氏ブログ画像.png
図1. 自主学習パート(ペア条件)の例題のスクリーンショット
右上には、学習パートナー(PTQOI84)の学習状況が表示されています。参加者は、提示された英単語の正しい日本語訳を、5つの選択肢の中から選びます。

結果と議論
 しかし、予想に反し、忍耐力の高い学習パートナーは、参加者の成績や忍耐力への影響はみられませんでした。一方、忍耐力の低い学習パートナーと学ぶ場合、参加者の成績や忍耐力が低下してしまうことが明らかになりました (Yamamoto & Iwatani, 2024)。この結果から、教育や職場においてペアを組んで取り組む際には、ネガティブな影響が生じる可能性に注意を払う必要があることが示唆されました。

フィールド実験
 2025年2月から、カナダのトロントでの実際の授業「Management and Human Resource」において約1,500人の学生を対象に、ピア効果が課題の達成率やテスト成績に与える影響を調査しています。この実験には、以下のような意義があります。

1. 学生のモチベーション向上
クラスメイトとの学習を通じて、学生のモチベーションが高まり、授業がより魅力的になる可能性があります。また、大学側も学生の学習意欲の向上に関心を持っています。
2. 外的妥当性の向上
実験室ではなく、実際の授業でデータを収集するため、より一般化可能な研究成果が得られます。
3. 追加報酬が不要
課題やテストが通常の学習活動の一環として行われるため、金銭的なインセンティブを設ける必要がありません。特に研究資金が限られる若手研究者にとって、大きな利点です。

 さらに、このシステムはピア効果の研究にとどまらず、学習内容や介入方法を変更することで、他の教育研究にも応用可能です。

研究の発展と今後の展望
 この研究は現在ワーキングペーパーとしてまとめられ、国際学会で発表しました。今後は論文誌への掲載を目指し、さらなる発展を図っていきます。

 挑戦的な研究に取り組める機会は決して多くありません。しかし、笹川科学研究助成ではこうした革新的な研究を積極的に支援しているため、思い切って申請することを決めました。これから挑戦的な研究の申請を考えている方も、ぜひ前向きにチャレンジしてみることをお勧めします。

 この研究を実施するにあたり、笹川科学研究助成の支援を受けられたことに、心より感謝申し上げます。研究を通じて得られた知見が、今後の教育や学習環境の改善につながることを願っています。

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:36 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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