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先輩研究者のご紹介 古谷 悠真さん [2024年10月01日(Tue)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2022年度「近代日本における海員養成 −日本海員掖済会による普通海員養成の実態および歴史的役割−」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、東京海洋大学大学院の古谷 悠真さんからのお話をお届けします。

<古谷さんより>
 こんにちは。東京海洋大学大学院博士後期課程で、海洋に関する経済史の研究をしている古谷です。

 私は2022年度の笹川科学研究助成にて、明治中期から昭和戦前期にかけてのわが国における船員養成史を課題とした研究に取り組みました。

 船員という職業に馴染みがない方もおられるかと思いますが、わが国の貿易や流通は海運に多くを頼っており、船員は船を確実・安全に運航することでそれを支える役割を担っています。明治以降の海運業の近代化と外航海運の伸長の中で、どのように船員が育てられていたのか興味深く感じ、この研究を始めました。

 船員は、船長や航海士(運転士)、機関士といった「船舶職員」と、甲板長(水夫長)、操機長(火夫長)以下の「普通船員」に分かれます(図)。法律上、普通船員となるのには特別な資格は必要としませんが、船舶職員になるにはライセンス(海技免状)が必要となるのが大きな違いです。

図.jpg


 明治期以来、政府や一部の地方庁が海運の振興のため船員養成を行ってきましたが、その対象は基本的に船舶職員であり、普通船員は行政による養成の対象外とされていました。

 では、普通船員養成は業界的に必要とされていなかったのかというと、そういうわけではなかったようです。船員は技術職であり、海上という特殊な労働環境に置かれます。全く経験のない人よりも、ある程度基礎を持ち、船上生活に慣れた人が業界からは求められていました。

 そのような業界のニーズを汲みとり、普通船員養成を行っていたのが「日本海員掖済会」(以下、掖済会)でした。この会は船員に関するさまざまな業務を行ってきましたが、主要業務として船員養成があり、1888年から1944年までのおよそ57年間にわたって普通船員養成を実施していました。

写真サイズ変更.png
掖済会の練習船での船員養成
(後藤政蔵編『日本海員掖済会沿革提要』、日本海員掖済会、1911年より引用)


 笹川科学研究助成をいただいた際は、この掖済会による船員養成の内容と、業界からのニーズに特に注目して分析を行いました。普通船員養成についての先行研究はあまり多くありません。史料もまとまって残されているわけではなく、各地の文書館や図書館に出張して史料を閲覧することが重要な作業になりました。助成をいただいたおかげで、船員養成に関する史料が保管されている土地に何度か出向き、これまでの研究で分析されてこなかった多くの史料に触れることができたのは非常に大きな喜びでした。

 私が笹川科学研究助成をいただいたのは修士2年のときでしたが、修士課程の学生が受けられる研究助成は限られており、研究を行う上で大きな助けとなりました。対象となるテーマも広く、本助成は大変貴重なプログラムだと思います。
 また、申請書を書く過程や、助成を受け研究をするということそのものにも、得るものが多くあったように感じています。
 最後に、研究をご支援いただきました日本科学協会と、同会の皆様にこの場を借りて心より感謝申し上げます。

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 10:27 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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