先輩研究者のご紹介 小嶋 翔さん
[2024年09月17日(Tue)]
こんにちは。科学振興チームです。
本日は、2022年度「民間による地域アーカイブズの経営と活用」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、吉野作造記念館の小嶋 翔さんからのお話をお届けします。
<小嶋さんより>
私は宮城県にある吉野作造記念館(写真1)という歴史資料館の研究員です。研究者としての専門は日本近代思想史で、明治時代のキリスト教や大正デモクラシー運動について研究しています。ですが、私が助成を頂いたのは実践研究(教員・NPO職員等が行う問題解決型研究)の部門でした。
私の勤務先は、大正デモクラシーや吉野作造に関する歴史資料の他、郷土資料も幅広く所蔵し、地域の歴史伝承を担っています(写真2)。また、そこで行われる事業は地域の先人顕彰活動の一部であり、施設運営に関する文書も長い目で見れば歴史資料になります。こうした歴史資料や文書は公的なもの、つまり市民の財産ですから、自治体が設置した歴史資料館や文書館(公文書館)などの施設で保存・管理するのが普通です。
しかし、その施設が民営化されたらどうでしょうか。吉野作造記念館の設置者は自治体ですが、運営者は自治体から独立したNPO法人で、スタッフも公務員ではありません。そこで収集した歴史資料、あるいは作成した施設運営に関する文書は、どうすれば公的なものとして、適切に扱えるでしょうか。
歴史資料や文書の保存・管理・活用までのプロセスを体系的に行うための学問分野をアーカイブズ学といいます。しかし、この分野ではこれまで、民営化の問題は正面切って議論されなかったように思います。文書館運営には知る権利の保障や個人情報保護といった公的な責任が伴うので、そもそも民営化には適さないと考えられた面がありました。しかし、実際の問題は常に現場で起きるもの。そこで私は、民営化された文書館の先進事例を調査し、公立民営アーカイブズ施設に必要な制度設計について考察しました。
アーカイブズ学に関して、私は必ずしも体系だった専門知を修めていませんでした。そのため、問題解決型のテーマ設定が可能な実践研究部門の助成は非常にありがたいものでした。研究で得られた知見は実際の資料管理に活かせていますし、成果をまとめた論文が専門誌に掲載される機会も得ました。民間研究助成の良さは、チャレンジングな問題関心を率直に表現しやすい点にありますが、笹川科学研究助成の実践研究部門は私のニーズにとって最適でした。今後も実践性とチャレンジ精神に富んだ成果が、ここから生まれてくることを期待したいです。
日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本日は、2022年度「民間による地域アーカイブズの経営と活用」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、吉野作造記念館の小嶋 翔さんからのお話をお届けします。
<小嶋さんより>
私は宮城県にある吉野作造記念館(写真1)という歴史資料館の研究員です。研究者としての専門は日本近代思想史で、明治時代のキリスト教や大正デモクラシー運動について研究しています。ですが、私が助成を頂いたのは実践研究(教員・NPO職員等が行う問題解決型研究)の部門でした。
私の勤務先は、大正デモクラシーや吉野作造に関する歴史資料の他、郷土資料も幅広く所蔵し、地域の歴史伝承を担っています(写真2)。また、そこで行われる事業は地域の先人顕彰活動の一部であり、施設運営に関する文書も長い目で見れば歴史資料になります。こうした歴史資料や文書は公的なもの、つまり市民の財産ですから、自治体が設置した歴史資料館や文書館(公文書館)などの施設で保存・管理するのが普通です。
しかし、その施設が民営化されたらどうでしょうか。吉野作造記念館の設置者は自治体ですが、運営者は自治体から独立したNPO法人で、スタッフも公務員ではありません。そこで収集した歴史資料、あるいは作成した施設運営に関する文書は、どうすれば公的なものとして、適切に扱えるでしょうか。
歴史資料や文書の保存・管理・活用までのプロセスを体系的に行うための学問分野をアーカイブズ学といいます。しかし、この分野ではこれまで、民営化の問題は正面切って議論されなかったように思います。文書館運営には知る権利の保障や個人情報保護といった公的な責任が伴うので、そもそも民営化には適さないと考えられた面がありました。しかし、実際の問題は常に現場で起きるもの。そこで私は、民営化された文書館の先進事例を調査し、公立民営アーカイブズ施設に必要な制度設計について考察しました。
アーカイブズ学に関して、私は必ずしも体系だった専門知を修めていませんでした。そのため、問題解決型のテーマ設定が可能な実践研究部門の助成は非常にありがたいものでした。研究で得られた知見は実際の資料管理に活かせていますし、成果をまとめた論文が専門誌に掲載される機会も得ました。民間研究助成の良さは、チャレンジングな問題関心を率直に表現しやすい点にありますが、笹川科学研究助成の実践研究部門は私のニーズにとって最適でした。今後も実践性とチャレンジ精神に富んだ成果が、ここから生まれてくることを期待したいです。
<以上>
日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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