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先輩研究者のご紹介 遠山 裕基さん [2024年07月03日(Wed)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2022年度「東南アジアにおける多様な担い手を包摂した稲作システム:タイの組織化政策とコミュニティの関係性を事例に」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、鳥取大学大学院連合農学研究科の遠山 裕基さんからのお話をお届けします。

<遠山さんより>
 鳥取大学農学部プロジェクト研究員の遠山です。私は2022年度に笹川科学研究助成に研究テーマを採択していただき,タイ東北部における稲作農家グループ内での共有財利用の調査を通じて,多様な担い手を包摂した稲作システムについて検討しました。

 2010年代以降,タイ東北部では農家あたりイネ作付面積が縮小傾向にあり,稲作規模を拡大しつつある中規模農家層の間では生産の粗放化が進行しつつありました(図1)。この状況を受けてタイ政府は2016年以降,東北部を中心に大規模稲作農家グループを多数設立し,稲作の生産性向上を図ってきました。しかし,タイ政府が公開しているデータベースを参照したところ,当該政策下で設立されるグループの平均登録戸数・農地面積はともに減少傾向にあることが確認できました。加えて,国内有数の稲作地帯である東北部のグループを扱ったケーススタディからは,グループの活動範囲が農家間の既存の関係性に規定され,広域グループがひとつの組織として機能していない実情が明らかとなりました(図2)。以上より,稲作生産性の向上を意図して農家を組織化する場合には,在地の農家間ネットワークを基礎とした組織体制の構築と,小規模農家層も含めた地域内の多様な生産主体を包摂することの重要性が示唆されました。

(図1).jpg
(図1)東北部3県(ウボンラチャタニ県,ブリラム県,ナコンパノム県)における
農家あたりイネ作付面積の規模構成とその推移(2010-2019年)
出所)Toyama et al. (2024)


(図2).jpg
(図2)事例グループにおける登録農家への共有財の分配状況
出所)Toyama et al. (2023)


 私が助成をいただいたのは,それまで勤めていた会社を退職し,博士課程に進学してから2年目のタイミングでした。コロナ禍で海外でのフィールドワークの機会が著しく制限されていたため,現地調査の委託にかかる予算の確保に苦心していたところだったので,笹川科学研究助成には本当に助けられました。日本科学協会のお力添えがなければ,私の博士論文はきっと今でも完成していなかったと思います。

 これから笹川科学研究助成に応募するみなさんに伝えたいのは,協会の担当者の方と密にコミュニケーションをとることの大切さです。私は助成期間中に,急激な円安や現地のカウンタパートだった大学教員の急病により,研究計画の大幅な変更を余儀なくされました。一時は研究自体の中断も考えましたが,担当者の方がメールや電話で丁寧に対応してくださり,どうにか折衷案を作り上げることができました。いただいた助成金は使い切れませんでしたが,無事に研究を完遂し,その成果は以下の査読付き論文として公表されています。

Yuki TOYAMA, Kazuki MIYATANI, Asres ELIAS, Kumi YASUNOBU (2024) Implication of the Change in Rice Cultivated Area and Yield by Individual Farmers in Northeast Thailand. International Journal of Environmental and Rural Development 15(1) (in press)
Yuki TOYAMA, Asres ELIAS, Kumi YASUNOBU, Panatda UTARANAKORN (2023) Assessing Common Property Use and Its Benefit Sharing among Members of Rice Farmer Groups: A Case Study in Khon Kaen Province, Northeast Thailand. Journal of Agricultural Development Studies 34(2) 19-28.

 現在,私はタイだけでなくラオスやカンボジアの稲作地帯にまで研究対象を広げ,稲作の生産構造の動向についての国際比較研究に取り組んでいます。今にして思えば,自分が代表者となって研究助成金を獲得し,関係者とコミュニケーションを取りながら適切に管理・執行した経験は本当に貴重なものでした。応募を考えている,あるいは迷っているようでしたら,まず挑戦してみることをお勧めします。皆さんの研究生活が少しでも豊かで実りあるものになるよう,心から願っています!

(図3).jpg
(図3)ラオス・バンビエンにて稲作農家へのインタビュー後に撮影した集合写真

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 13:32 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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