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先輩研究者のご紹介 藤田 純太さん [2024年03月11日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2021年度「舞鶴湾における両側回遊性エビ類の実験分子生態学的研究:次世代シークエンス解析による海洋幼生分散の推定」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、京都府立福知山高校・教諭の藤田 純太さんからのお話をお届けします。

<藤田さんより>
 私は、2021年度日本科学協会 笹川科学研究助成において、「学術研究部門『海に関する研究』」で採択いただきました。高校生を相手に日々教育活動を展開する立場ですので、本来であれば教育実践上の研究課題を設定するべきと思われるかもしれませんが、現行の学習指導要領では、高校現場でも生徒主体の探究活動を推進するように示されており、近年、「総合的な探究の時間」という授業内で探究学習が活発に行われています。

 私は、学生時代より遺伝子解析で生物の生態特性を調べる分子生態学をコンセプトとした研究を行なってきました。分子生物学と生態学の境界領域に位置しており、ツールとして遺伝子を扱いますが、分野としてはマクロ生物学に属します。

 今回ご紹介するのは、川と海を回遊するエビのお話です。ミゾレヌマエビという小型の淡水エビで、南西日本の河川下流域を中心に生息する種類です(図1)。本種は、成体は河川で過ごし、メスは5〜6月頃に抱卵、約一カ月の抱卵期間を経て、ふ化した幼生はそのまま川を流下、発生が進んで稚エビとなると、川の淵を歩いて遡上し、河川生活に戻るという生活環を送ります。このように河川での生態はよく調べられていますが、ミゾレヌマエビの流下幼生は海洋ではほとんど採集されず、幼生期をどこでどのように過ごすのかは謎に包まれています。

図1 2024-03-06 01_05_42.jpg
図1 ミゾレヌマエビ


 本研究では、遺伝子を使って、河川間の分散を推測してみようと計画しました。遺伝子といっても機能的な側面ではなく、DNA塩基配列を個体間で比較し、塩基がどの程度違うかによって、幼生の移動分散性を調べる方法をとります(図2)。

図2 2024-03-06 01_05_47.jpg
図2 遺伝的組成から幼生の生息環境を推測


 私は、学生時代にミトコンドリアDNAを使って本種の遺伝的多様性を調べましたが、今回はより解像度高く幼生分散を調べるために次世代シークエンス解析にチャレンジしました。高校生には(教師にとっても)、ビッグデータを処理するのは敷居が高いですが、なんとか無事に成果を出すことができました。

 対象種が河川生物の研究では、遺伝子を扱っていても、川のフィールドワークが研究の醍醐味です。たも網で川べりの水生植物を調べることを「ガサガサする」と表現します。「ガサガサ」すると、対象外の様々な生き物が採れるので、高校生に生物を好きになってもらうには「ガサガサ」は欠かせません。ところが、時代はコロナ禍の真っ只中。コロナの罹患者数が少ない時期を見計らって、フィールドワークに出かけ、なんとか予定していたサンプル数を確保することができました(図3)。

図3 2024-03-06 01_05_48.jpg
図3 高校生による標本収集


 分子生態学が専門の私ですが、高校の探究活動の一環で他分野の研究テーマにもチャレンジしており、近年では環境DNAによる群集解析や細菌類の培養実験、細菌叢解析なども行なっています。笹川科学研究助成でバイオインフォマティクスを勉強する機会をいただきましたので、ビッグデータを使った他の解析方法にも活かすことができています。

 最後に、本申請課題は、私の学生時代の研究テーマを発展させたものです。青春を捧げた研究の続編に助成いただいたことは感慨深く、学生時代を思い出しながら、生徒と共に研究活動を行うことができました。心より感謝申し上げます。日本科学協会、読者の皆様の更なるご発展を祈念いたします。

<以上>


 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 13:30 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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