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先輩研究者のご紹介 石井 陽子さん [2024年02月26日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームです。
 本日は、2020年度「視覚障がい者の博物館での学びに必要な情報とはなにか 自然史博物館を身体で楽しむ方法の提案」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、大阪市立自然史博物館所属の、石井 陽子さんからのお話をお届けします。

<石井さんより>
 私が勤務する大阪市立自然史博物館には、来館者が触ることのできる模型や標本が1974年の開館当初から展示されています。1986年には視覚障がい当事者の団体からの大阪市への申し入れを受けて触れる展示の数を増やし、大きな文字や点字による解説パネルや見学ガイド冊子の作成が行われました。その後、部分的な展示更新を経て現在に至りますが、触れる展示の見直しは行われていません(写真1)。

図1DSC01905.jpg
写真1 触れる展示の一例。
部分的な展示更新によりパネルの内容が点字と墨字で別のものになっている。

 数年前に視覚障がいのある子ども達の支援をしているNPO団体の方が来館された際に、触れる展示をご案内しました。その時に解説パネルの内容が標本の周辺知識に偏り、触ることで何がわかるのか書かれていないことに気が付きました。これでは視覚障がい者の触察の助けにならないし、視覚障がいのない人にも触るという体験をした以上の意味を持たないのではないかと考えました。これをきっかけに館内の触れる展示のパネルの内容や触りやすいかどうかの調査、先行事例の調査、視覚障がい当事者・支援者からのヒアリングを行い、触れる展示の展示方法の改善点やパネルの内容の見直し、大きな文字による見学ガイド冊子(写真2)の改訂を行ったというのが、2020年度の笹川科学研究助成で行った実践の概要です。このときのヒアリング対象者は、先に述べたNPO団体の方にご紹介いただきました。

図2DSC01937.jpg
写真2 作成した大きな文字による見学ガイド冊子(右)。
左は他の助成制度で作成した点字版の見学ガイド冊子。

 予算の関係で展示の改修には至っていませんが、他の助成金で専門家による建物や展示の改善のためのコンサルティング、視覚障がいへの理解を深めるための職員研修、触れる展示解説パネル文案の点訳、見学ガイド冊子の点訳と印刷製本、先進事例を紹介するシンポジウムなどを実施しました。コンサルティングや研修を通じて、視覚障がい者には様々な人がおり、点字や大きな文字によるパネルや冊子を作成すればそれで全て解決という訳にはいかないことが理解できました。また、触れる展示に用いることのできる標本は、化石や岩石、貝殻などの耐久性の高いものに偏るため、触れる展示を設置すればそれで博物館の全体像が視覚障がい者に伝わるという訳ではないということも、視覚障がいのある方をご案内する過程で理解できました。今回の課題はおそらく明確なゴールや正解がない性質のもので、視覚障がい当事者や支援者、専門家、同業者など様々な人の助言をいただきながら、当面の間模索を続けることになりそうです。
 私が助成を受けたのは博物館等の職員も対象となる実践研究部門で、施設の課題や社会的課題の解決の方向を、実践を通じて探る際に最適です。日常業務を行いながら無理なく使い切れる予算規模であるし、中間報告の提出など計画的に仕事を進めることができるよう配慮された助成制度であると思います。学芸員にはそれぞれ専門とする研究分野がありますが、自身の研究と所属する施設の課題や社会的課題を関連づけることで、より有意義な実践研究が可能になるのではないでしょうか。

<以上>

 日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 15:46 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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