こんにちは。科学振興チームです。
本日は、2021年度「植物の多細胞化の鍵を握る原形質連絡を作り出す新奇因子の発見とその分子機構の解明」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、北海道大学大学院 生命科学院 生命科学専攻の神野 智世さんからのお話をお届けします。
<神野さんより>
私達が普段目にするほとんどの生き物は、複数の細胞で形作られた多細胞生物です。複数の細胞が一つの組織や生命体としてふるまうには、細胞同士のコミュニケーションが重要です。植物の体は皆さんと同じように多くの細胞でできていますが、細胞壁で覆われているという点で動物細胞とは構造が異なります。原形質連絡はこの細胞壁を貫通するようにして隣接した細胞同士の細胞質を繋ぐ孔のような構造であり、この孔を介した物質の受け渡しは植物の発生や成長、環境適応に重要な役割を果たしています。
原形質連絡は、周りの環境や植物個体の発生段階、組織や細胞の種類によって孔の大きさや数が変化します。この細やかな変化によって細胞間の物質の輸送を調節しているのです。原形質連絡はその存在の発見から140年近くが経っていますが、どのような仕組みで原形質連絡がつくられているのか、またどのように孔の大きさや数を調節しているのか、未だに謎に包まれています。この仕組みに関わる因子を探索するために、本研究ではコケ植物ヒメツリガネゴケを用いた化合物スクリーニングや遺伝子操作を行った変異体の解析などを行いました。
結果、化合物スクリーニングでは、原形質連絡を介した分子輸送を促進させるヒット化合物がいくつか見つかった他、原形質連絡の形成に関わる因子や、環境ストレス下で原形質連絡の形成を抑制する因子を見出しました。現在はこれらの因子がコケ植物だけでなく被子植物など他の陸上植物でも保存されているか、またどのような分子機構で機能しているのかを研究しています。
図 3:細胞間の細胞壁(隔壁)の電子顕微鏡画像
笹川科学研究助成は、大学院生でも応募可能であるというのが大きな特徴だと思います。申請時には選考総評を参考にしつつ、専門外の方々に向けて申請書を推敲すること自体が、自身の研究を客観的にとらえ直し、情報を整理するとてもいい機会になりました。実際の研究では高価な試薬や器具・機材を使用しており、その多くは助成金により新たに購入できました。これらは実験の質や自身のモチベーションの向上に繋がったと考えています。
また、新型コロナウイルスの影響による学会の開催状況の変更、実験機材のトラブルなどで予算計画書の変更を迫られることがありましたが、日本科学協会の方々は急な変更にも迅速かつ真摯に対応してくださいました。予算の管理や執行を個人で行うというのは初めてで大変なこともありましたが、大学院生としてとても貴重で有意義な経験でした。
改めまして、このような研究の機会をくださいました日本科学協会の皆様、並びに研究協力者の皆様に深く感謝申し上げます。
<以上>
日本科学協会では過去助成者の皆様より、研究成果や近況についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。



