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研究者コラム(4)無機化学研究者 三宅 亮介先生 [2023年08月03日(Thu)]

 こんにちは、熊澤有紗です。さて、皆さんが研究をしてみたいと思ったとき、「どんな心構えを持っていたら研究者になれるのか?」「そもそも、研究とは何なのか?」と考えたことはありませんか? 私も高校生の頃に日本科学協会のサイエンスメンタープログラムに参加して、研究者に向いているのか、研究とはそもそも何なのか、ということをよく考えていました。
 そこで、お茶の水女子大学で錯体化学を研究されている三宅先生にインタビューをしました。この記事を読みながら、研究について考えてみてくださいね。

「人生にも通ずる、研究に必要な心構え」

熊澤 有沙(お茶の水女子大学3年生)
三宅先生・熊沢さん写真.jpg
左:熊澤さん 右:三宅先生
 

研究とは

 「研究」とは、未知なものに対して仮説を立てて探究していくプロセスです。つまり実験のような目の前で起こっている現象に対し考察して、仮説を立てて実験を繰り返し、それぞれの考察から現象に共通している真理を得ていくプロセスです。考察するというのは、解釈するとも言えます。
 少し難しい表現を使ってしまいました。皆さんにとって研究とはどのようなイメージでしょうか? 本当にたくさんのイメージがあると思います。私にとっては、実験も図書館での調べ学習も、小学生の自由研究も、企業の商品開発も、研究のイメージがあります。
 三宅先生にとって、研究は世の中で全く分かっていなかったことを明らかにすることだそうです。その言葉を受けて考えてみると、理科の授業でやる実験は教科書のとおりに行いますが、研究の実験では自分で実験方法を考えて、結果がどのようなものだったらどういう考察するかを全て自分で決めて行うという違いがあるように思いました。つまり、テストにあるような正解がないのです。
 しかし一方で、「研究の定義は人それぞれでよい」ということも三宅先生は語っていました。好奇心を持ったことに対して、さまざまなアプローチでチャレンジすることこそが、探究することであり研究なのだと思います。


うまくいかない研究は「無駄」なのか?

 「研究とは」という話をしましたが、教科書のない実験というものを想像できたでしょうか? それは自由で楽しいけれど、同時にその正解のなさに不安になってしまいます。私は研究をしていた中で、そのような不安から自分の研究が無駄だったのではないかと思うことがありました。その不安について、三宅先生に尋ねると「研究を無駄だと判断できるほど、私たちは頭が良いのだろうか」とおっしゃっていました。「無駄と判断することは傲慢ではないか?」、ともおっしゃっていました。私はそれを聞いて、研究に正解がないのだとすれば、研究に不正解もないのだということを考えました。「無駄=不正解」だとすれば、研究に無駄はないのです。無駄と判断することは、研究に正解を求めているということで、傲慢なことなのかもしれませんね。
 そして、三宅先生は「研究というのは『一見無駄に見える1万個の基礎研究があるから1個が革新的な技術が生まれる』のだと思う。1万個の研究が切磋琢磨した結果、革新的な研究や技術に繋がっているのではないか」と語っていました。三宅先生には、研究で6,7年間も結果がでなかった時期がありました。
 研究の成果が得られるまでの期間、ずっと自分の研究の面白さを信じ続けられたわけではなく、周りの先生や先輩・仲間からのサポートがあってなんとか乗り越えた時期もあったそうです。自分の研究に「面白いね」と声をかけてくれる人、一緒に考えてくれる人が大きな支えになったとおっしゃいます。上手くいっていない時は「無駄なんじゃないか」と批判してくる人の声の方が耳に残りやすい。でも、実際には、面白いと思ってくれている人はいて、そういう人は、上手くいってからその存在を知ることが多い。実際に、成果が出てから「君の研究は面白い。いつか結果が出るんじゃないかと思っていたよ」と言われた経験があるそうです。その経験から、人の評価は変わっていくものだから、気にしないのが一番と思うようになったと話されていました。
 自分の研究を信じること、応援してくれる人を大切にすることがとても大切だということが分かりました。


中高生にメッセージ

 最後に、三宅先生に中高生が研究において大切にすべきことを聞きました。「自分がどうしていきたいのかをちゃんと向き合える時間を取ること」が大事なのだそうです。
 ここまで、三宅先生から「研究に正解はないけれど、正しいと信じ続ける」「人の評価に振り回されないようにする」「応援してくれる仲間を大切にする」など、さまざまなことを教わりました。そして、これらの学びは、目標に向けて努力をしていく中で壁にぶつかり、それを乗り越える時に得られたとのことです。実験の結果が出ない、他の人の方が良い結果を出しているなど、理想と現実、他人と自分を比べては打ちひしがれる時期が三宅先生にもありました。そして前を向こうとして、できることをやり始めると徐々に打開できることが多かったようです。これは、皆さんにも当てはまることだと思います。勉強や部活などで、思ったような成績が出なかったとき、他の人に先を越されてしまったとき、打ちひしがれたことがあると思います。でもそんなときに、前を向こうと、できることを続けていると何か大事なことを学べるのではないでしょうか。
 常に前を向いていけるように、たまに自分と向き合う時間を設けてみてはいかがでしょうか?

(おわり)


三宅先生.png
三宅亮介先生

   所  属:お茶の水女子大学 基幹研究院 自然科学系 講師
   専門分野:錯体化学、超分子化学、生体機能関連化学
   経  歴:東京大学で博士(理学)取得。お茶の水女子大学助教を経て現職。
   サイエンスメンタープログラムでメンターとして高校生を指導。


熊澤さん.png
熊澤有紗さん(お茶の水女子大学3年生)

サイエンスメンタープログラム当時の情報
   研究期間:2018.9 - 2019.8
   研究課題:「粘菌は菌類と共生出来るのか」
   学 校 名:東京農業大学第一高等学校
   メンター:出川洋介先生(筑波大学 生命環境系 准教授)

三宅先生・熊澤さんありがとうございました!!

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Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 15:47 | サイエンスコミュニケーション | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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