研究者コラム(2)前編 地質学者 山口直文先生
[2023年06月16日(Fri)]
研究者コラム第2回は地質学者の山口直文先生、インタビューアーは鈴木泰我さんです。
大学生になったサイエンスメンタープログラムのOB・OGが、研究者にインタビューして、研究者を紹介したコラムです。研究者についてもっと知りたい方必見です!
「科学好き」と「科学者」の違いって何だろう?(前編)
鈴木泰我(筑波大学4年生)
「地味なのに複雑」
左:山口先生 右:鈴木さん
イントロ
「科学好きと科学者の違いはどこにあるだろう?」とか、「科学好きは、一体どうすれば科学者になれるのだろうか?」、あるいは「科学者になれる才能がある気はしないけど、じゃあそもそも科学者の才能ってなんだ?」といった疑問を、あなたは抱いたことがあるだろうか。研究という世界には、飛び込んでみなければ分からないことがたくさんある。
でも、分からないからと言って諦めるには、科学の光はあまりにも眩しい。
この記事では、そんなあなたと同じ目線で、科学の世界を歩いている研究者を紹介したい。このコラムで少しでも、あなたの前に広がる科学の道が照らされれば幸いだ。
でも、分からないからと言って諦めるには、科学の光はあまりにも眩しい。
この記事では、そんなあなたと同じ目線で、科学の世界を歩いている研究者を紹介したい。このコラムで少しでも、あなたの前に広がる科学の道が照らされれば幸いだ。
「地味なのに複雑」
山口直文さんは現在、茨城大学 地球・地域環境共創機構(水圏環境フィールドステーション)で講師を務める地質学の研究者だ。専門は堆積学と呼ばれる分野で、主に水中で地層が形成されるプロセスについて研究している。例えば砂浜には整列した波模様が見られることがあるが、堆積学では「リップルマーク」と呼ばれる立派な研究対象だ。
山口先生のフィールドは浅い海から湖まで幅広く、茨城県が誇る湖沼面積日本第二位の霞ヶ浦もその一つだ。とはいっても、地元の茨城県民からすれば比較的身近な存在であり、一般的に研究という言葉からくるものものしいイメージとは離れているかもしれない。だが、山口先生は身近で地味なものに面白さを見出せることこそ醍醐(ルビ:だいご)味だという。堆積学の目を通じてみれば、味気ない地面が興味深い絶景に変わることもある。地味な見た目の奥に潜む複雑なプロセスを一つ一つ探り当てる作業は、科学的探究心をそそる行為だろう。
山口先生のフィールドは浅い海から湖まで幅広く、茨城県が誇る湖沼面積日本第二位の霞ヶ浦もその一つだ。とはいっても、地元の茨城県民からすれば比較的身近な存在であり、一般的に研究という言葉からくるものものしいイメージとは離れているかもしれない。だが、山口先生は身近で地味なものに面白さを見出せることこそ醍醐(ルビ:だいご)味だという。堆積学の目を通じてみれば、味気ない地面が興味深い絶景に変わることもある。地味な見た目の奥に潜む複雑なプロセスを一つ一つ探り当てる作業は、科学的探究心をそそる行為だろう。
得意になるのは後でいい。
何なら好きになるのも後でいい。
何なら好きになるのも後でいい。
学生時代の山口さんはごく一般的な科学好きの少年だった。幼いころにNHKスペシャルで科学の世界に触れ、高校も理系を選択し、大学では理学部に進学した。一方で高校科目としての理科は苦手ではなかったものの、飛びぬけて得意で大好きな科目だった訳ではない。科学分野を志したことと、理科科目でほどほどの点数が取れたことについて「単にラッキーだった」と山口さんは振り返る。高校の科目はあくまで一つの枠組みでしかなく、その得手不得手で自分の興味を推し量ることはもったいない。「得意」と「興味」が一致している必要はないのだ。最も重要な事は「苦手意識を持たない」ことだと山口さんは語る。理科の点数が取れない、理科を好きになれないという気持ちと、より広い科学に憧れる気持ちは共存していい。
山口直文先生
鈴木泰我さん(筑波大学 生命環境学群 地球学類4年生※取材当時の所属)
山口先生・鈴木さんありがとうございました!!
科学好きと科学者の違いとは?
科学者と科学好きであることの違いについて、山口さんに面白いエピソードを伺った。山口さんの大学時代、ある授業でいわゆる化石マニアの人たちに出会ったそうだ。その人たちは早い段階から論文も読み漁り、化石についての知識を収集していた。しかし卒業研究の頃には、彼らの姿を化石どころか地球科学系のどこのゼミにも見なかったという。一方で、化石に限らず、山口さんの知り合いの研究者の中には、いわゆるマニアと言われるような人たちと比べて研究対象から一歩引いて見ている人もそれなりの割合でいるそうだ。どうやらマニアだから研究者になれるわけでも、マニアでないと研究者になれないわけでもないようだ。
さて、科学者と科学好きの違いは何だろうか。山口さんによれば、その一つは「問い」を立てる、という行動にある。他人の用意した答えに納得するのではなく、どんなに単純なものでも自ら問いを立てること、それこそが科学者の入り口だ。いかに専門性の高い論文を読もうとも、その成果に感心するのみでは研究にはならない。しかし逆に考えれば、研究とは何かを極めてやっと始められる、というようなものではないとも言える。身構えず、自然に生まれた疑問を発すれば、あなたはもうスタートラインに立っている。あとは仮説を立て、信頼できる方法で一歩一歩仮説を検証していけば、それはあなたの研究だ。
さて、科学者と科学好きの違いは何だろうか。山口さんによれば、その一つは「問い」を立てる、という行動にある。他人の用意した答えに納得するのではなく、どんなに単純なものでも自ら問いを立てること、それこそが科学者の入り口だ。いかに専門性の高い論文を読もうとも、その成果に感心するのみでは研究にはならない。しかし逆に考えれば、研究とは何かを極めてやっと始められる、というようなものではないとも言える。身構えず、自然に生まれた疑問を発すれば、あなたはもうスタートラインに立っている。あとは仮説を立て、信頼できる方法で一歩一歩仮説を検証していけば、それはあなたの研究だ。
<後編に続く>
山口直文先生
所属:茨城大学 地球・地域環境共創機構 講師
専門分野:地質学
経歴:京都大学大学院で博士(理学)取得。その後、日本学術振興会特別研究員、
産業技術総合研究所 地質調査総合センター特別研究員、茨城大学 広域水圏環境科学教育
研究センター助教を経て現職。サイエンスメンタープログラムメンター(2020年)。
専門分野:地質学
経歴:京都大学大学院で博士(理学)取得。その後、日本学術振興会特別研究員、
産業技術総合研究所 地質調査総合センター特別研究員、茨城大学 広域水圏環境科学教育
研究センター助教を経て現職。サイエンスメンタープログラムメンター(2020年)。
鈴木泰我さん(筑波大学 生命環境学群 地球学類4年生※取材当時の所属)
サイエンスメンタープログラム当時の情報
研究期間:2017.9 - 2018.8
研究課題:「東京都新宿区立おとめ山公園内湧水周辺の地下水面及び地下水の挙動の分析」
学校名:海城高等学校
メンター:松山洋先生(首都大学東京 都市環境科学研究科 教授)
研究期間:2017.9 - 2018.8
研究課題:「東京都新宿区立おとめ山公園内湧水周辺の地下水面及び地下水の挙動の分析」
学校名:海城高等学校
メンター:松山洋先生(首都大学東京 都市環境科学研究科 教授)
山口先生・鈴木さんありがとうございました!!
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