先輩研究者のご紹介(岩田 由香さん)
[2022年09月12日(Mon)]
こんにちは。科学振興チームの豊田です。
本日は、2021年度に「高次脳機能障害者家族介護者におけるエコマッピングを応用したライフチェンジ適応促進プログラムの開発」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、横浜市立大学大学院医学研究科所属の、岩田 由香さんから、助成時の研究について、コメントを頂きました。
<岩田さんより>
2021年度笹川科学研究助成学術研究部門にてご支援頂きました、横浜市立大学大学院地域ケアシステム看護学分野の岩田です。現在は博士課程生として在籍する傍ら、同教室で助教として勤めています。
私がフォーカスしている研究対象は高次脳機能障害者の家族介護者です。高次脳機能障害は、脳血管疾患や脳外傷等を原因とする、失語、失行、失認、遂行機能障害、注意障害などを有する障害です。国内外において症例数は約1億1640万人に上り、発症率は1990年比で3.6%増加し、地域での累積的増加を鑑みれば、この国際的な介護負担への取り組みは目先の急務です。
学術的施策的には、高次脳機能障害者の家族介護者に降りかかる介護負担感を主とした”弱みの軽減”が試みられています。私は、介護負担感はもはや軽減でき得ない条件であり、一転して、”強みを向上”する視点が必要だと着想しました。そこで当該家族介護者の【ライフチェンジ適応】を見出しました。高次脳機能障害は患者の人格変化や家庭内役割の再構築、喪失など、当該家族介護者に予期せぬ生活変化=ライフチェンジをもたらします。このライフチェンジに適応することが当該家族介護者のQOL向上に結び付くと考えました。以上より、本研究にてライフチェンジ適応を促進し得るプログラムを開発しました。
研究デザインは無作為化比較試験であり、当該家族介護者の家族会の協力を得て全国調査を行いました。介入群に開発したプログラムを、対照群に各家族会で行われる通常サービスを提供し、介入前後の評価を行いました。結果、介入群が対照群と比較してライフチェンジ適応尺度スコアが有意に高く、開発したプログラムの効果が検証されました。本研究の成果は、国際オープンジャーナルPLOS ONEにて公表されています(https://doi.org/10.1371/journal.pone.0273278)。
本研究は、看護の視点がメインであるものの、社会福祉分野にも関わる複合的な研究であり、合致した研究助成が乏しく資金調達は困難でした。このような複合的・特異的な研究テーマをも歓迎くださる笹川科学研究助成のご支援は大変力強いものでした。さらに、本研究はプログラム作成、エコマッピングの回収にかかる郵送料、英文校正費用など、多額の研究費が発生しましたが、ご支援のお陰で研究費への負担を感じることなく、研究に専念でき、適切かつ円滑な研究プロセスを踏むことができました。改めまして、ご支援頂きました日本科学協会の皆様方に深く感謝申し上げます。
介護を受ける高次脳機能障害者だけでなく、家族介護者のQOL向上も、非常に重要な問題だと思います。多くの介護問題で困っている方の役に立つような研究成果がでるよう、これからも頑張っていただきたいと思います。
笹川科学研究助成では複合系分野として、分野の垣根を超えた研究を募集しております。2023年度の募集は、9月15日から10月17日となります。皆様も是非、挑戦してみてください。
日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本日は、2021年度に「高次脳機能障害者家族介護者におけるエコマッピングを応用したライフチェンジ適応促進プログラムの開発」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、横浜市立大学大学院医学研究科所属の、岩田 由香さんから、助成時の研究について、コメントを頂きました。
<岩田さんより>
2021年度笹川科学研究助成学術研究部門にてご支援頂きました、横浜市立大学大学院地域ケアシステム看護学分野の岩田です。現在は博士課程生として在籍する傍ら、同教室で助教として勤めています。
私がフォーカスしている研究対象は高次脳機能障害者の家族介護者です。高次脳機能障害は、脳血管疾患や脳外傷等を原因とする、失語、失行、失認、遂行機能障害、注意障害などを有する障害です。国内外において症例数は約1億1640万人に上り、発症率は1990年比で3.6%増加し、地域での累積的増加を鑑みれば、この国際的な介護負担への取り組みは目先の急務です。
学術的施策的には、高次脳機能障害者の家族介護者に降りかかる介護負担感を主とした”弱みの軽減”が試みられています。私は、介護負担感はもはや軽減でき得ない条件であり、一転して、”強みを向上”する視点が必要だと着想しました。そこで当該家族介護者の【ライフチェンジ適応】を見出しました。高次脳機能障害は患者の人格変化や家庭内役割の再構築、喪失など、当該家族介護者に予期せぬ生活変化=ライフチェンジをもたらします。このライフチェンジに適応することが当該家族介護者のQOL向上に結び付くと考えました。以上より、本研究にてライフチェンジ適応を促進し得るプログラムを開発しました。
研究デザインは無作為化比較試験であり、当該家族介護者の家族会の協力を得て全国調査を行いました。介入群に開発したプログラムを、対照群に各家族会で行われる通常サービスを提供し、介入前後の評価を行いました。結果、介入群が対照群と比較してライフチェンジ適応尺度スコアが有意に高く、開発したプログラムの効果が検証されました。本研究の成果は、国際オープンジャーナルPLOS ONEにて公表されています(https://doi.org/10.1371/journal.pone.0273278)。
本研究は、看護の視点がメインであるものの、社会福祉分野にも関わる複合的な研究であり、合致した研究助成が乏しく資金調達は困難でした。このような複合的・特異的な研究テーマをも歓迎くださる笹川科学研究助成のご支援は大変力強いものでした。さらに、本研究はプログラム作成、エコマッピングの回収にかかる郵送料、英文校正費用など、多額の研究費が発生しましたが、ご支援のお陰で研究費への負担を感じることなく、研究に専念でき、適切かつ円滑な研究プロセスを踏むことができました。改めまして、ご支援頂きました日本科学協会の皆様方に深く感謝申し上げます。
<以上>
介護を受ける高次脳機能障害者だけでなく、家族介護者のQOL向上も、非常に重要な問題だと思います。多くの介護問題で困っている方の役に立つような研究成果がでるよう、これからも頑張っていただきたいと思います。
笹川科学研究助成では複合系分野として、分野の垣根を超えた研究を募集しております。2023年度の募集は、9月15日から10月17日となります。皆様も是非、挑戦してみてください。
日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。