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先輩研究者のご紹介(愛甲 将司さん) [2022年09月05日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2020年度に「ヒッグスセクターの構造解明と宇宙バリオン数生成問題」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、高エネルギー加速器研究機構所属の、愛甲 将司さんから助成時の研究について、コメントを頂きました。

<愛甲さんより>
 この記事を執筆している2022年は、ヒッグス粒子が発見されてから10年目の節目に当たります。ヒッグス粒子の発見と、それに続くHiggs, Englert両博士のノーベル物理学賞受賞は、当時のニュースなどで大きく取り上げられたので、記憶にある読者の方もいらっしゃるかもしれません。

pic1.jpg
写真1:2022年7月にイタリアで開催された国際会議ICHEP2022での写真です。ヒッグス粒子発見10周年を祝う記念講演も開かれました。

 ヒッグス粒子は、素粒子の質量を生成する「ヒッグス機構」に付随して現れる素粒子です。素粒子間の相互作用は、ゲージ理論と呼ばれる枠組みで記述され、直感的にはゲージボソンと呼ばれる粒子が力を伝達するという形で理解できます。ゲージ理論では、その基礎となるゲージ対称性の帰結として、ゲージボソンの質量がゼロになります。一方で、自然界に存在する弱い相互作用を記述するためには、ゼロでない質量を持ったゲージボソンが必要です。ヒッグス機構では、ゲージ対称性を自発的に破ることによって、ゲージボソンの質量を生成しますが、このときヒッグス粒子が観測可能な粒子として現れます。詳細は割愛しますが、ゲージボソンの質量を生成するために考案されたヒッグス機構は、クォークとレプトンと呼ばれる他の素粒子の質量生成にも関与しており、ヒッグス粒子の発見は、新粒子の発見という意味だけでなく、素粒子の質量生成機構の解明という観点でも重要な出来事でした。
 さて、ヒッグス粒子が発見されたことで、素粒子の標準理論が一応の完成を見ました。しかしながら、話はここで終わりません。というのも、ヒッグス粒子の荷電・鏡映変換の下での振る舞いや、他の素粒子との相互作用のあり方など、その性質に関して調べるべき事柄がたくさんあるからです。また、素粒子の標準理論も完璧ではなく、暗黒物質やニュートリノ質量、宇宙のバリオン数優勢など説明できない問題があります。私は、特に宇宙のバリオン数優勢を解決する理論模型では、しばしば第二第三のヒッグス粒子が導入されることに注目し、そのような理論模型を将来実験でどのように調べていくかを本助成のテーマとして研究しました。発見されたヒッグス粒子の性質を詳細に調べあげることで、上述の諸問題を解決するような新物理理論への糸口が掴めるのではないかと期待しています。

pic2.jpg
写真2:黒板での議論風景です。一人では考え付かなかったアイデアが生まれるなど、共同研究者との議論を通じて得たものは多いです。

 振り返ると、本助成への応募に際して、研究計画を練り、申請書を作成したことは、苦労もありましたが、とても良い経験だったと思います。また、採択されたことは研究活動を行う上で大きな励みとなりました。学生の皆さんにも、ぜひ挑戦して欲しいと思います。
 最後に、本助成を通じて貴重な機会を与えてくださった日本科学協会の関係者の皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。
<以上>

 研究は個人で行うものと考えられがちですが、共同研究者と議論をしたり、先生から指導をうけたり、多くの人達と関わることで、より良い研究になるのではないかと思います。新型コロナウイルス感染症の流行がなかなか収まらず、対面での交流が難しい状況ではありますが、頑張って研究を続けていただきたいと思います。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございまし
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 10:33 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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