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先輩研究者のご紹介(和泉 彩香さん) [2022年06月06日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2020年度に「熱活性化遅延蛍光および円偏向発光を示すπ共役マクロサイクル」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻所属(当時)の、和泉 彩香さんから専門の研究について、コメントを頂きました。

<和泉さんより>
 私は、大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻の南方研究室(http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~komaken/)で2021年3月に博士号を取得しました。当時取り組んでいたテーマの一部を紹介します。
 スマートフォンやテレビを購入しようとした時に、有機ELディスプレイという言葉を耳にしたことはありませんか。従来品である液晶ディスプレイと比べて、薄型やハイコントラストといった長所があるため、近年実用化が進んでいます。半年前ほどに、私も有機ELディスプレイのテレビを買いましたが、黒が綺麗だと感じています。
 有機ELディスプレイの特徴は発光層に有機発光材料が用いられていることです。発光材料は発光過程の違いから、3種類に分類できます(Figure 1)。新しい発光材料である熱活性化遅延蛍光(TADF)材料は、励起一重項状態と励起三重項状態のエネルギー差を室温で乗り越えられる程度にまで小さくすることで、励起一重項状態からの即時蛍光に加えて、励起三重項状態のエネルギーを逆項間交差によって遅れた蛍光(熱活性化遅延蛍光)として取り出す事ができます。そのため、前世代の発光材料と比べて電気エネルギーを光エネルギーに変換する効率とコストの両面に利点があります。

Figure1.jpg
Figure 1. 有機発光材料の種類と発光過程

 これまでに、電子ユニットが直線状に連結したTADF分子は数多く研究されていましたが、TADFを示す環状分子の研究は環構造を構築する難易度が高いことがあり極めて限定的でした。私は、このTADFを示す環状分子を創製し、発光を中心にどのような性質をもつのか明らかにしました(Figure 2)。環状分子は電子ドナーという部品と電子アクセプターという部品を交互に2つずつ繋げた構造のものを設計しました。所属研究室で開発したU字型構造の分子をアクセプターに用いたことがポイントで、これにより環構造構築の難易度を下がり、設計通り合成に成功しました。

Figure2.jpg
Figure 2. 設計したTADFを示す環状分子の構造

 合成した環状分子の発光特性を調査したところ、各ユニットが環状に縛られているため分子が動きにくくなり、環状分子を切り開いた直線状の分子と比較して、より効率よく励起三重項状態のエネルギーを励起一重項状態に変換している(= 良く光る)ことが判りました(Figure 3)。これはTADF材料設計指針の多様性につながる成果です。

Figure3.jpg
Figure 3. 環状分子と直線状分子の発光のイメージ

 上記研究に取り組む中で、環状分子の設計に工夫を加えることでTADFという特徴に加えて、円偏向発光という新たな光機能を付与することができることに気づきました。このテーマを本助成で採択していただき、研究を開始しました。合成難易度が高いことに加えて、COVID-19の影響で研究時間が少なくなってしまったことがあり、設計した分子の合成達成には至りませんでした。しかし、同時に進めていた類似構造の分子の合成は達成でき、今後の展開につながる研究成果が得られました。

 COVID-19の影響は助成金の用途にも及びましたが、柔軟に対応していただき用途変更することができ助かりました。また、助成応募に向けて申請書を書くこと自体が貴重な経験であり、採択されたことは自信に繋がりました。自分で獲得したお金で研究することでやりたい研究ができる有り難みも感じました。この場をお借りして、研究助成を通じて貴重な機会をくださった日本科学協会の皆様に厚く御礼申し上げます。
 笹川科学研究助成は、大学院生が応募できる数少ない研究助成だと思います。これからの研究者人生でプラスになる経験が得られました。皆さんも挑戦してみたらいかがでしょうか。
<以上>

 最近は、有機ELを用いたスマートフォンやテレビも多く見かけるようになり、科学の進歩を感じます。
 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 10:35 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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