CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る

日本科学協会が"今"やっていること

お役立ち情報、楽しいイベントやおもしろい出来事などを紹介しています。是非、ご覧ください。


<< 2021年08月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
プロフィール

日本科学協会さんの画像
カテゴリアーカイブ
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
talking to (04/17)
shapex2.net (04/15)
KetoGenic BHB (04/15)
リンク集
https://blog.canpan.info/kagakukyokai/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/kagakukyokai/index2_0.xml
先輩研究者のご紹介(橋本 舜平さん) [2021年06月14日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2019年度に「イネ科作物ソルガムにおける夜低温誘導型開花のしくみに迫る」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、名古屋大学大学院 生命農学研究科所属の、橋本 舜平さんから助成時の研究やその背景について、コメントを頂きました。

<橋本さんより>
 みなさんは、「ソルガム」という作物をご存知でしょうか。ソルガムはイネやコムギなどと同じくイネ科に分類される植物で、生産高世界第5位の重要作物の1つです(図1)。アフリカではソルガムを主食としている国も数多くあり、かつては日本でも「タカキビ」と呼ばれ食用に栽培されていました。諸説ありますが、昔話でおなじみの「桃太郎」に登場する「きびだんご」の「きび」とは、このタカキビのことだとされています。ソルガムの大きな特徴の一つに、植物自体が大きく、利用できる資源の量(=バイオマス)が多いということが挙げられます(図1左)。草丈が4 m以上になる品種では、地上部のバイオマスは一般的なイネの10倍以上にもなります。また、茎に糖液を蓄積する品種(スイートソルガム)もあり、その糖度はサトウキビと肩を並べるほどです。ニュースや新聞などで、マイクロプラスティックによる海洋汚染の話を聞いたことのある方も多いと思いますが、その問題解決に向け、ソルガムの糖液をバイオプラスティックの原料とする研究も進められています。植物を原料とした分解性プラスティックは環境に優しい素材として注目されているほか、二酸化炭素の排出量削減にもつながります。もちろん、バイオマスが大きければ、それだけ糖液も多く得られるわけですから、ソルガムは現代社会における様々な環境問題の解決のために、今まさに必要とされている作物だと考えています。

図1.jpg
図1 ソルガム
茎葉部バイオマスはイネの10倍以上になる(左)。
右の写真はソルガムの穂(タカキビとは別の品種)。

 今回、私はソルガムの開花と気温の関係に着目した研究テーマで本助成に採択していただきました。ソルガムには、夜の気温が15℃程度になると開花が促進される系統があり、この現象は「夜低温誘導型開花」と呼ばれています(図2)。コムギなどに見られ、冬の厳しい寒さで花芽が誘導される「春化」はご存知の方もおられると思いますが、人間の感覚で言うと「少し涼しい」くらいの気温で開花が促進される例は他の植物ではあまり見られず、たいへん興味深い現象です。開花のタイミングは作物の収量やバイオマス性に直結する重要な要素ですから、この「夜低温誘導型開花」の仕組みを明らかにすることで、高バイオマスソルガムや搾汁糖液の安定生産につながる育種(品種改良)に結びつけば、という思いで研究を始めました。助成時には、気温の影響を受ける「感温性系統」と開花時期が気温に依らない「非感温性系統」を比較して、3万個以上あるソルガムの遺伝子のうち、どの遺伝子がこの現象に関連しているかを調べました。そして、全遺伝子の網羅的な発現量解析を行い、この現象に関連すると考えられる遺伝子の一群を明らかにすることができました。今後は、これらの遺伝子の機能や関係性を詳しく調べることで、「夜低温誘導型開花」のメカニズムの全体像を明らかにしたいと考えています。

図2.jpg
図2 夜低温誘導型開花
感温性系統は夜高温区では開花しないが、夜低温区で開花する。
一方で非感温性系統は、夜温に関係なく開花する。図中の矢頭は穂を示す。

 笹川科学研究助成は学生でも応募可能な数少ない研究助成です。応募する上で申請書の書き方や、これまでの研究背景をいかにわかりやすくかつ魅力的に伝えるかを試行錯誤したことは、非常に良い経験になったと思います。助成期間中での進捗状況に応じた研究計画の変更にも、柔軟に対応していただきました。
 最後に、今回貴重な機会を与えてくださった日本科学協会関係者の皆様、ならびに本研究を行うきっかけを与えてくださった、大阪府立大学大学院生命環境科学研究科 植物育種繁殖学研究室の皆様、そして名古屋大学大学院生命農学研究科 植物ゲノム育種研究室の皆様に改めて感謝申し上げます。
<以上>

 誰もが知っている「桃太郎」に出てくる「きびだんご」ですが、「きび」がタカキビという植物であることは初めて知りました。ソルガムの研究が、現代社会における様々な環境問題につながり、タカキビが多くの方に知られるようになるよう、頑張っていただきたいと思います。
 笹川科学研究助成の申請書を作成することは非常に大変なことかと思いますが、ご自身の研究を見直すことは新たな発見につながることもあるかと思いますので、是非とも挑戦してみてください。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 16:40 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました
コメント