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先輩研究者のご紹介(市川 寛也さん) [2021年03月01日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2019年度に「重要伝統的建造物群保存地区における保存物件の創造的活用モデルの構築―岩手県胆沢郡金ケ崎町の事例から」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、群馬大学共同教育学部所属の市川 寛也さんから、助成時の研究とその後の展開について、コメントを頂きました。

<市川さんより>
 群馬大学共同教育学部の市川です。大学では、美術教育講座の教員として、美術理論や美術史に関する科目を担当しています。専門分野は芸術学です。特に、アートプロジェクトをはじめとする地域社会における芸術活動について、理論と実践の両面から研究を進めてきました。2019年度に笹川科学研究助成を受けて取り組んだ実践研究もこうした関心の延長線上にあります。
 具体的なフィールドは岩手県内陸南部に位置する金ケ崎町です。この町には、近世に仙台藩の要害が築かれ、現在も当時の町割が残されていることから、2001年に国の重要伝統的建造物群保存地区(以下、伝建群)に選定されました。この中にある一軒の保存物件(旧菅原家侍住宅)を地域に開かれた学びの拠点「金ケ崎芸術大学校」として活用しようというのが実践の主眼です。(図1)

図1 金ケ崎芸術大学校外観.jpg
図1 金ケ崎芸術大学校外観

 構想にあたっては、「生涯教育」と「農民芸術」という二つのキーワードを設定しました。金ケ崎町では、1979年に全国に先駆けて「生涯教育の町」を宣言して以降、教育がまちづくりの柱となっています。この理念を踏まえ、伝建群に芸術に焦点を当てた学び合いの場をつくることを目指しました。ただし、一口に芸術と言っても、絵画や彫刻、音楽など既存のジャンルに限定されるものではありません。宮沢賢治の「農民芸術」の理想に照らし合わせながら、生活そのものを芸術として実践することを試みています。(図2)

図2 金ケ崎芸術大学校「藍の時間」(畑への移植).jpg
図2 金ケ崎芸術大学校「藍の時間」(畑への移植)

 金ケ崎の伝統的建造物には、侍住宅でありながら農家としての構造を持つ「半士半農」と呼ばれる特徴があります。このような地域性を生かし、敷地内の畑で藍を栽培しながら、収穫した生葉で染色するプログラムなどを行ってきました。ご近所にお住いの染色愛好家が講師を務め、近隣市町村からも参加者が集まりました。この他にも、生け垣を刈ったり、庭を眺めたり、鬼のお面をつくったりしながら、四季の変化に合わせて「あり得たかもしれない暮らし」を創造するアートプロジェクトを展開しています。(図3・4)

図3 金ケ崎芸術大学校「藍の時間」(生葉染め).jpg
図3 金ケ崎芸術大学校「藍の時間」(生葉染め)

図4 金ケ崎芸術大学校「鬼の時間」.jpg
図4 金ケ崎芸術大学校「鬼の時間」

 このような日々の実践を通して、保存物件の公開のあり方について研究を進めてきました。伝建群は文化財であると同時に生活の場でもあります。そのため、いわゆる「有形文化財」のように、博物館に収蔵して保存することはできません。そのような中にあって、生活の一つひとつの場面を広義の芸術として実践することにより、参加する一人ひとりが意識するしないにかかわらず環境保全に関わっていることを改めて実感しました。ここから活動そのものに「動態保存」としての意義を見出したことがひとまずの結論です。
 最後に実践研究について私見を述べます。現実の地域社会は研究のために純粋培養された実験室ではありません。そこに暮らす人や外側から訪れる人など、様々な立場にある人々の思惑の絶妙なバランスの中で成り立っています。私自身は「研究者」としてフィールドに入り込むわけですが、同時に「実践者」として現場と深く関わりながら研究を進めてきました。プロジェクトを進めていくにつれ、もはや両者の境界線は曖昧になっていることを実感するようになります。無論、そのいずれであっても、私にとっての「理想の世界」の実現に向けた道のりを探ることには変わりはありません。このダイナミズムに実践研究の醍醐味があると思っています。

なお、金ケ崎芸術大学校では2020年の秋にこれまでの活動をまとめた記録集を発行しました。もしご興味のある方がいらっしゃいましたら以下のアカウントまでご一報ください。こちらで最新の活動状況についても発信しています。
金ケ崎芸術大学校広報部(https://twitter.com/kanegasakiart
<以上>


 家などの建物は、人が住んだり使ったりするために造られたものですので、人が出入りすることが保存することにつながり、大事なのかと思いました。また、フィールドに入り込み研究を行うことで、様々なことが見えてくるのだと思いました。今後も、このような実践研究を続け、頑張っていただきたいと思います。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 12:37 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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