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先輩研究者のご紹介(藤田 健太郎さん) [2021年02月01日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2019年度に「汚染物質輸送因子に着目したウリ科作物における作物汚染の農薬を用いた低減化」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、神戸大学大学院農学研究科所属の、藤田 健太郎さんから助成時の研究について、コメントを頂きました。

<藤田さんより>
 過去に殺虫剤として使用されたディルドリンやヘプタクロルは、ダイオキシンと同様に、残留性有機汚染物質 (POPs) に指定されています。POPsは高い毒性や生物濃縮性を持つことから、多くの国々で、使用や排出が規制されています。しかし、POPsは環境中で分解されにくく、農環境においては、圃場の土壌中に多量に残留しており、作物への蓄積が懸念されます。

 特に、ウリ科作物は、POPsを果実に高濃度で蓄積するため、POPsによる作物汚染が懸念されます。これには、Major latex-like protein (MLP) というウリ科作物が持つタンパク質が関与しています。MLPは、土壌から根に浸透してきたPOPsと結合します。そして、導管を介して、MLPはPOPsを果実へと輸送します。現在でもなお、POPsが残留している圃場は多いことから、POPsで汚染された土壌で栽培しても、汚染されないウリ科作物栽培法の確立が急務になっています。

図1.jpg

 本研究では、農薬を散布することでMLP遺伝子の発現を抑制し、MLP量を減少させました。これにより、MLPを介したウリ科作物のPOPs蓄積を抑制しました。まず、ウリ科作物に使用可能な農薬5種から、MLP遺伝子の発現を抑制する農薬の選抜を行いました。次に、POPsで汚染された土壌で栽培しているズッキーニに、選抜した農薬を散布したところ、根と導管液で、MLP量の減少が確認されました。また、導管液中のPOPs濃度は50%にまで低下しました。本研究は、POPsで汚染された土壌において、安全な作物の生産を可能にしました。また、殺虫や殺菌といった農薬の従来の機能だけではない新たな利用法を見出しました。農薬の散布は、簡便かつ低コストな方法です。今後は、農薬を利用した作物汚染の低減化法の普及が大いに見込まれます。

図2.jpg

 本助成期間で得られた成果は、私が筆頭著者の論文として出版されています (https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2020.140439)。プレスリリースも行っていますので、是非ご覧ください((https://research-er.jp/articles/view/90726)。

 一つ、私から採択のためのアドバイスをさせて頂きますと、1年という短い期間で到達可能な目標を設定することです。そのためには、予備実験のデータを示すことで、50%以上の結果は既に出ていることをアピールすることが重要です。これによって、私は、申請時は修士課程1年で原著論文はありませんでしたが、採択されました。原著論文が無いからと諦めずに、到達可能性を審査員にアピールしてください。

 最後になりましたが、申請書を採択してくださった日本科学協会の関係者の皆様に、改めてお礼申し上げます。笹川科学研究助成により、研究を一層推進することができました。
<以上>

 食べ物の安全性を求める声は大きく、農薬の研究は非常に重要なことだと思います。より安全で、おいしい作物が安価でたくさん作れるようなると、良いなと思いました。
 笹川科学研究助成では、若手研究者の第一歩を応援したいと考えております。学会発表や論文投稿などの経験がなくとも、研究への熱意を申請書に込めて審査員にアピールしていただければ、良い結果となるのではないかと思います。皆様のご申請をお待ちしております。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 15:39 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0)
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