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先輩研究者のご紹介(押尾 高志さん) [2020年12月07日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2019年度に「近世西地中海地域における改宗の諸相:モリスコ由来のアラビア語写本とアルハミーア写本の分析」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、日本学術振興会特別研究員(PD )(助成時:千葉大学大学院人文社会科学研究科)所属の、押尾 高志さんから助成時の研究について、コメントを頂きました。

<押尾さんより>
 みなさん、こんにちは。
 今日は、私が笹川科学研究助成を受けて行なったスペインでの文献調査についてお話をしたいと思います。
 私の大きな研究テーマは、16−17世紀のスペイン・モロッコの歴史で、具体的にはモリスコと呼ばれるキリスト教への改宗したムスリム(イスラーム教徒)についての研究をしています。
 このモリスコと呼ばれる人たちが残した興味深い史料として、アルハミーア文献と呼ばれる写本史料があります(写真1)。これは、アラビア文字を用いて当時のスペイン語を書いた文字史料なので、読み解くためにはスペイン語とアラビア語の両言語の知識が必要です。わかりやすく言えば、文章がアルファベットではなくカタカナで書かれた英語の写本、のような感じでしょうか。このアルハミーア文献は、イスラーム信仰に関係する宗教的なものから、呪術的内容を取り扱ったものまで、様々な内容の写本が残されていて、モリスコがどのように知識を伝達、発展させていったのか、どんな世界観を持っていたのかを知るための貴重な史料となっています。

写真1.jpg
写真1 アルハミーア写本の例
ウプサラ大学所蔵(スウェーデン)
複製転載不許可

 このアルハミーア文献の研究拠点があるスペインのオビエド大学へ、私は2019年8月に調査へ行きました(写真2と3)。渡航前に、同大学附属図書館館長へメールで資料閲覧の許可をもらっていたので、特に閲覧カードなども作る必要もなく、図書館での調査はスムーズに始まりました。
 そして、2日目も同じ図書館で調査をしていると、一人のスペイン人が私に声をかけてきました。大学付属図書館の、モリスコ関連の書籍のある非常にマイナーなコーナーに、アジア人がいるのが珍しかったのでしょう。
 しかし、この出会いがこの調査の一番の収穫だったのです。実は、彼は前述のアルハミーア文献の研究拠点に所属する研究者の一人で、私を大学図書館の外にある研究室に案内してくれました。そこで、アルハミーア文献を扱った未刊行博士論文や、世界各国の図書館・文書館所蔵のアルハミーア文献の写本の電子データなどを閲覧することができたのは、今後の研究の発展にとって大変有意義でした。
 彼とは現在も連絡を取り合っていますが、こういう偶然の出会いも現地調査の大きな醍醐味の一つでしょう。

写真3.jpg
写真2 大学正面のファサード 

写真2.jpg
写真3 大学図書館の中庭

 さて、筆を置く前にこれから笹川科学研究助成に挑戦しようとしている人たちに、僭越ながら2つほどアドバイスをしたいと思います。
まず、この助成を過去に受けていた人の申請書をなんとか手に入れましょう(申請書類をゼロから書くのは本当に大変なので)。
 次に、研究仲間(友人でも先輩でも良いです)に申請書を読んでもらいましょう。申請書は他分野の研究者が読んで理解できるように書くのが望ましいと私は思います。
 私も同じ年度に笹川科学研究助成に応募した友人の研究者(専門は社会言語学)と、お互いの申請書をチェックしあいました。結果として、私もその友人も一緒に助成を受けることが出来たので、とても嬉しかったです。

 最後になりましたが、推薦書を書いてくださった指導教員の先生、および日本科学協会の関係者の皆様に、改めてお礼申し上げます。どうもありがとうございました。
<以上>

 現地調査は、言葉の壁など大変なことも多いかと思いますが、その場に行かなければ分からないことも多くあると思います。今回、当初の目的を達成するだけではなく、現地の研究者と出会うことで、その後も研究にも大きな影響があったとのこと、うれしく思います。
 また、笹川科学研究助成に申請される方の中には、初めて助成金の申請書を書く方も、多くいらっしゃるかと思います。当会の選考委員会が作成した、総評が下記URLにアップロードしておりますので、ご参考にしていただければと思います。
https://www.jss.or.jp/ikusei/sasakawa/senkou/

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 12:17 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0)
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