先輩研究者のご紹介(六車 宜央さん)
[2020年06月15日(Mon)]
こんにちは。科学振興チームの豊田です。
本日は、2019年度に「アルツハイマー型認知症の早期判別を目的とする新たな簡易的層別化検査法の開発と一滴の血液への応用」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、立命館大学大学院薬学研究科所属の、六車 宜央さんから助成時から最近までの研究について、コメントを頂きました。
<六車さんより>
近年の高齢化社会において認知症は大きな社会問題となっています。現在の医療では、重度の認知症を完全に治すことは困難であるため、早期の段階から進行状況を把握し、いち早く適切な治療や予防を行うことが重要となります。
認知症の診断には、認知機能検査や画像診断などが主流ですが、これらの診断法は個人差や労力、費用などの観点から、早期の患者候補に対する選別検査(スクリーニング検査)にはハードルが高くなっています。そのため、認知症の進行に伴い、変動する体内の生化学的指標(バイオマーカー)による客観的評価法が求められています。
2007年に米国ワシントン大学から始まったDIAN研究により、認知症が発症する数十年前から脳内のグルコース代謝が有意に変動していることが報告されました。グルコース代謝から生成する代謝産物は、身体の健康状態に密接に関わっており、その代謝物を標的としたメタボロミクス研究により、癌やメタボリック症候群など既に多くの疾病に対して有効なバイオマーカー候補化合物が特定されています。
私たちは、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS/MS)を用いて(図1)、体内に存在する100種類以上のアミン代謝物質を測定し、認知症・老年期の神経疾患の進行状況を把握できる“健常者”のための診断技術の開発を目指しています(図2)。
今回の研究助成では、病理診断に基づいた脳脊髄液(CSF)を分析し、得られたデータに対して様々な解析を行いました。これにより、CSF診断に利用可能なバイオマーカー候補を複数、特定することに成功しました。今回の研究成果を生かし、これからは臨床現場での実用化を目指し、血液を用いた簡便な検査法の開発に挑戦しています。
認知症発症と有意な代謝経路全体を代謝系として評価する方法は、疾患特有のマーカーを見つける上で有用な方法であり、認知症の早期治療介入や予防・発症遅延をはじめとした認知症研究の新たな扉を開く可能性を秘めていると考えています。
笹川科学研究助成は、私たち学生自らが研究費の申請書を作成し、研究計画や目標、それに係る費用など、すべてを考えながら申請する難しさがあります。その一方で、非常に貴重なチャンスです。改めて、自分の研究の独創性や萌芽性など、考える機会にもなりました。そのうえで、申請が受理された時の喜びは代えがたく、研究遂行の責任感も芽生えました。そのおかげもあって、日本学術振興会の特別研究員(DC1)にもなることができました。
最後になりますが、研究を進めることは一人ではできません、研究室の仲間たちや立命館大学の先生方に感謝したいと思います。また、日本科学協会の関係者皆様に改めてお礼申し上げます。これからも創薬研究の発展に寄与できるよう、精進していきたいと思いますので、今後も見守って頂ければ、幸いです。
日本は、高齢化社会となっているため、非常に重要な研究ではないかと思います。いずれは健康診断のように、誰もが簡単に検査できるような技術とできるよう、陰ながら応援させていただきたいと思います。また、本助成制度を第一歩として、日本学術振興会の特別研究員に採択されたとのこと、嬉しく思います。
日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本日は、2019年度に「アルツハイマー型認知症の早期判別を目的とする新たな簡易的層別化検査法の開発と一滴の血液への応用」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、立命館大学大学院薬学研究科所属の、六車 宜央さんから助成時から最近までの研究について、コメントを頂きました。
<六車さんより>
近年の高齢化社会において認知症は大きな社会問題となっています。現在の医療では、重度の認知症を完全に治すことは困難であるため、早期の段階から進行状況を把握し、いち早く適切な治療や予防を行うことが重要となります。
認知症の診断には、認知機能検査や画像診断などが主流ですが、これらの診断法は個人差や労力、費用などの観点から、早期の患者候補に対する選別検査(スクリーニング検査)にはハードルが高くなっています。そのため、認知症の進行に伴い、変動する体内の生化学的指標(バイオマーカー)による客観的評価法が求められています。
2007年に米国ワシントン大学から始まったDIAN研究により、認知症が発症する数十年前から脳内のグルコース代謝が有意に変動していることが報告されました。グルコース代謝から生成する代謝産物は、身体の健康状態に密接に関わっており、その代謝物を標的としたメタボロミクス研究により、癌やメタボリック症候群など既に多くの疾病に対して有効なバイオマーカー候補化合物が特定されています。
私たちは、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS/MS)を用いて(図1)、体内に存在する100種類以上のアミン代謝物質を測定し、認知症・老年期の神経疾患の進行状況を把握できる“健常者”のための診断技術の開発を目指しています(図2)。
今回の研究助成では、病理診断に基づいた脳脊髄液(CSF)を分析し、得られたデータに対して様々な解析を行いました。これにより、CSF診断に利用可能なバイオマーカー候補を複数、特定することに成功しました。今回の研究成果を生かし、これからは臨床現場での実用化を目指し、血液を用いた簡便な検査法の開発に挑戦しています。
認知症発症と有意な代謝経路全体を代謝系として評価する方法は、疾患特有のマーカーを見つける上で有用な方法であり、認知症の早期治療介入や予防・発症遅延をはじめとした認知症研究の新たな扉を開く可能性を秘めていると考えています。
笹川科学研究助成は、私たち学生自らが研究費の申請書を作成し、研究計画や目標、それに係る費用など、すべてを考えながら申請する難しさがあります。その一方で、非常に貴重なチャンスです。改めて、自分の研究の独創性や萌芽性など、考える機会にもなりました。そのうえで、申請が受理された時の喜びは代えがたく、研究遂行の責任感も芽生えました。そのおかげもあって、日本学術振興会の特別研究員(DC1)にもなることができました。
最後になりますが、研究を進めることは一人ではできません、研究室の仲間たちや立命館大学の先生方に感謝したいと思います。また、日本科学協会の関係者皆様に改めてお礼申し上げます。これからも創薬研究の発展に寄与できるよう、精進していきたいと思いますので、今後も見守って頂ければ、幸いです。
<以上>
日本は、高齢化社会となっているため、非常に重要な研究ではないかと思います。いずれは健康診断のように、誰もが簡単に検査できるような技術とできるよう、陰ながら応援させていただきたいと思います。また、本助成制度を第一歩として、日本学術振興会の特別研究員に採択されたとのこと、嬉しく思います。
日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。