先輩研究者のご紹介(佐藤 靖徳さん)
[2020年06月01日(Mon)]
こんにちは。科学振興チームの豊田です。
本日より、2019年度に笹川科学研究助成を受けられた方に、ブログのご執筆をお願いしております。
「コロイド溶液の降伏挙動を含む流動特性の解明」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、長岡技術科学大学所属の佐藤 靖徳さんから、ご専門の研究についてコメントを頂きました。
<佐藤さんより>
<研究について>
私が専攻しているレオロジーとは「物質の流動と変形」を取り扱う比較的新しい学問分野です。つまり、現代の工業製品の研究・開発にはレオロジー的な考え方が少なからず必要となります。
そのような背景もあり、私はこれまで複数の企業や大学との共同研究に携わる機会がありました。取り扱うサンプルは共同研究先で異なりますが、ある一つの共通した力学的な特徴がありました。それが研究テーマにある「降伏応力」です。
降伏応力とは機械工学を専攻している方であれば耳馴染みがあるかと思います。金属材料において弾性変形から塑性変形に変化する臨界の応力を降伏応力と言いますが、ソフトマターでも降伏応力を持つケースがあります。例えば、化粧品のクリームをイメージしてみてください。重力のような低荷重に対して、クリームは流れることはなく、クリームの形状は保持され固体的です。しかし、肌に塗り広げるような高荷重に対してクリームは流れ、液体的に振る舞います。この時、クリームは降伏応力を持っていると言えます。近年では、材料の組成が複雑化され、粒子間の結合力や高分子の絡み合いなどによって構造化され、降伏応力を持つ製品が増えております。
本研究では、コロイド溶液の降伏メカニズムの解明を目的とし、ひずみ挙動を微小区間ごとに分割し粘弾性モデル近似する新規近似手法を用いて、表面粗さが異なる壁面での粘弾性挙動を定量的に評価しました。また、分散粒子を用いることで壁面の流れを乱すことで、表面が平滑な場合に発生する滑り挙動を抑制できることが分かりました。さらに偶然にも、医療分野や生物工学分野で応用される現象のマイグレーション(粒子の配列)が発生することもわかっており、今後の研究の裾野が広がっていることを感じています
<助成について>
私が研究留学から帰国してすぐに本助成が採択されたことを知り、本当に喜んだことを覚えています。本助成を通して、研究の立案・申請書作成・実験・論文執筆・予算の管理など、これから自立した研究者として社会に出ていく上で必要なアクティビティを一通り経験できました。また、限られた予算の中で、最大限の成果を上げるためにはどうしたら良いか、これまでの研究生活とは違った視点で大変充実した1年間を過ごしました。
これから本助成に申請を考えている方がおられましたら、ぜひ自分の力を伸ばすためにもチャレンジしてみることを強くお勧めします。
最後に、本助成を受けた者として今後も自分の専門性を通して社会に貢献できるように努めたいと思います。1年間助成していただきありがとうございました。
笹川科学研究助成は、研究の遂行だけではなく予算の管理等もご自身で行うこととなります。若手研究者が社会に出る第一歩を支援したいと考えているため、このようにご活用していただけたことを嬉しく思います。今後も、陰ながら応援させていただきます。
日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本日より、2019年度に笹川科学研究助成を受けられた方に、ブログのご執筆をお願いしております。
「コロイド溶液の降伏挙動を含む流動特性の解明」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、長岡技術科学大学所属の佐藤 靖徳さんから、ご専門の研究についてコメントを頂きました。
<佐藤さんより>
<研究について>
私が専攻しているレオロジーとは「物質の流動と変形」を取り扱う比較的新しい学問分野です。つまり、現代の工業製品の研究・開発にはレオロジー的な考え方が少なからず必要となります。
そのような背景もあり、私はこれまで複数の企業や大学との共同研究に携わる機会がありました。取り扱うサンプルは共同研究先で異なりますが、ある一つの共通した力学的な特徴がありました。それが研究テーマにある「降伏応力」です。
降伏応力とは機械工学を専攻している方であれば耳馴染みがあるかと思います。金属材料において弾性変形から塑性変形に変化する臨界の応力を降伏応力と言いますが、ソフトマターでも降伏応力を持つケースがあります。例えば、化粧品のクリームをイメージしてみてください。重力のような低荷重に対して、クリームは流れることはなく、クリームの形状は保持され固体的です。しかし、肌に塗り広げるような高荷重に対してクリームは流れ、液体的に振る舞います。この時、クリームは降伏応力を持っていると言えます。近年では、材料の組成が複雑化され、粒子間の結合力や高分子の絡み合いなどによって構造化され、降伏応力を持つ製品が増えております。
本研究では、コロイド溶液の降伏メカニズムの解明を目的とし、ひずみ挙動を微小区間ごとに分割し粘弾性モデル近似する新規近似手法を用いて、表面粗さが異なる壁面での粘弾性挙動を定量的に評価しました。また、分散粒子を用いることで壁面の流れを乱すことで、表面が平滑な場合に発生する滑り挙動を抑制できることが分かりました。さらに偶然にも、医療分野や生物工学分野で応用される現象のマイグレーション(粒子の配列)が発生することもわかっており、今後の研究の裾野が広がっていることを感じています
<助成について>
私が研究留学から帰国してすぐに本助成が採択されたことを知り、本当に喜んだことを覚えています。本助成を通して、研究の立案・申請書作成・実験・論文執筆・予算の管理など、これから自立した研究者として社会に出ていく上で必要なアクティビティを一通り経験できました。また、限られた予算の中で、最大限の成果を上げるためにはどうしたら良いか、これまでの研究生活とは違った視点で大変充実した1年間を過ごしました。
これから本助成に申請を考えている方がおられましたら、ぜひ自分の力を伸ばすためにもチャレンジしてみることを強くお勧めします。
最後に、本助成を受けた者として今後も自分の専門性を通して社会に貢献できるように努めたいと思います。1年間助成していただきありがとうございました。
<以上>
笹川科学研究助成は、研究の遂行だけではなく予算の管理等もご自身で行うこととなります。若手研究者が社会に出る第一歩を支援したいと考えているため、このようにご活用していただけたことを嬉しく思います。今後も、陰ながら応援させていただきます。
日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。