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先輩研究者のご紹介(米田 大樹さん) [2019年12月02日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2018年度に「弾性体折り紙:紙ばねの変形と力学特性の解明」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、立命館大学大学院理工学研究科所属の、米田 大樹さんから研究についての、コメントを頂きました。

<米田さんより>
 折り紙は日本の伝統芸術であり、昔から親しまれてきた遊戯ですが、近年その構造が学術的に注目を集めています。シート状の巨大な構造を小さく折り畳んで収納することが可能で、かつ可逆的に再度展開ができるからです。特に、固いパネルと可動折り目で構成された剛体折り構造は、例えば人工衛星のソーラーパネルに折り紙構造を持たせて打ち上げロケットに格納したり、人体の中でマイクロロボットを立体的に立ち上げたりと、有名な工学応用が数多くあります。

 一方で柔らかいパネルで構成され、バネのような復元力をもつ「弾性体折り」という折り畳み構造も存在します。例えば、テントウムシのような昆虫は薄い羽を背中で折り畳んでいますが、飛翔時にはこの羽を一瞬でバネのようにパッと展開できます。これは、折り畳むときに羽を少し曲げて弾性エネルギーを溜めて、展開時に一気に開放する弾性体折りだからです。剛体折り構造であれば、外力なしにこのような瞬発的な駆動は難しいので、弾性体折りの折り畳みは様々な応用が期待されています。しかし、3次元幾何変形と併せて面内応力も考慮しなければならず、まだまだ定量的な理解が進んでいない現状があります。私たちは弾性体折りの特有の機能がどのように創発するのか、いくつか基本的な構造から研究を進めています。

図1.jpg

 まず注目した構造が紙ばね(図1)という、2本のじゃばらを組合せただけのシンプルな弾性体折り紙構造でした。研究を始めたころ、私たちは理論系物理学の研究室であったので理論構築や数値計算は強みでしたが、実験による紙ばねの力学・幾何形状測定には苦戦していました。ペットボトルと質量計を組合せたなんとも手作り感満載な測定装置(図2)を組むなどしていましたが、折り紙の形状複雑で、紙の弾性力は微小なので、より精度の良い計測機器が新たに必要でした。助成金は主にこれら計測機器に使わせていただきました。これによって得た研究成果はアメリカ物理学会の学術誌 Physical Review Eの第100巻に掲載され、Editors' Suggestion にも選出されました(図3)。

図2、3.jpg 

 この研究に続いて、研究室では最近弾性薄膜構造のかたちと機能に関する議論が活発になっています。現在では、「曲るストローはどういったかたちが曲るのか?」(図4)、「折り切り紙の持つ多重安定性」、「摩擦と弾性の競合を考慮するシェルのスナップフ ィット構造」(図5)などをテーマにして、幾何理論と力学測定の両面から、折り紙に限らず弾性薄膜構造のもつ機能について詳しく調べています。

図4、5.jpg

<以上>

 子供の頃、誰もが遊んだことのある折り紙ですが、まだまだ分からないことが多くあることに驚きました。新しい分野であるため測定装置が無く、手作りで装置を作成されるなど様々な苦労があったかと思います。笹川科学研究助成は、その装置作成に役に立つことができたようで、嬉しく思います。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 10:13 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0)
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