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先輩研究者のご紹介(田中 俊一さん) [2019年10月07日(Mon)]
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2018年度に「X線結晶構造解析によって解明する、抗体ミミックペプチドが酵素の基質特異性を改変する分子メカニズム」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、京都府立大学大学院生命環境科学研究科所属の、田中 俊一さんから最近・助成時の研究について、コメントを頂きました。

<田中さんより>
 酵素と聞くと、皆さんはどのようなイメージを持たれるでしょうか?ここ数年、酵素ダイエットが話題となり、ダイエットのサポート役というイメージを持たれる方も多いとは思いますが、教科書的には、カラダの中で起こる化学反応を促進する生体触媒です。およそ2,000種類といわれる多様な酵素の働きによって、私たちの生命活動は維持されています。他方、酵素はカラダの外にも働く場を持っていて、具体的には、食品加工、医薬品合成、化粧品、繊維加工、製紙、洗剤などの多くの産業分野で、様々な酵素が利用されています。今後も産業分野においてますますの利用拡大が期待される酵素ですが、実は課題もあります。それは、自然界から得られる天然の酵素では触媒機能が不足していて、そのままでは利用できないケースが多いということです。
 そこで私の研究では、酵素を人工的に改変して機能を高めたり、その改変を効率良く行うための新しい技術を開発しています。2018年のノーベル化学賞受賞となった分子進化工学やファージディスプレイ法を基盤に、異分野の技術とも融合させながら研究を進めています。これらの研究を進める中で最近、抗体様の小さなペプチドを酵素にくっつけるだけで、酵素の触媒機能(具体的には基質特異性)をいとも簡単に改変できる、そんな新しい方法論を提唱し、実証しました。

20190830_figure01.jpg

 けれども、方法論は実証できたのですが、抗体様ペプチドがどのように酵素の基質特異性を変えているのか、その分子メカニズムについては分からないままでした。私の性格上、“分からないままは許せない”ということで、このメカニズムを解明するという研究課題を笹川科学研究助成に提案し、採択いただきました。周囲の先生方や学生たちのおかげもあり、研究はとても順調に進み、研究課題タイトルのとおりX線結晶構造解析によってメカニズムを分子レベルで解明することに成功しました。学術論文発表はこれからですが、複数の学会で発表することができています。

20190830_figure02.jpg

 今後、明らかとなった分子メカニズムを基に、方法論の更なる改良や、新しい方法論の提案に繋げていきたいと思います。将来的には、自身の開発した方法論が広く研究者の間で浸透し、数多くの酵素で機能改変が実現され、酵素利用産業の発展に貢献できることを期待しています。
<以上>


 最近、健康診断に引っかかり、ダイエットの話か!と期待しましたが少し違いました。研究を進めていくには、“分からないままは許せない”という性格や、異分野の技術を融合させるという姿勢が、非常に重要なのかと思いました。酵素利用産業を発展させられるよう、これからも頑張っていただきたいと思います。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:04 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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