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先輩研究者のご紹介(東 里香さん) [2019年09月17日(Tue)]
先輩研究者のご紹介(東 里香さん)
 こんにちは。科学振興チームの豊田です。
 本日は、2018年度に「動物園動物の人工繁殖技術に貢献する新規ユニバーサル卵子の作出に関する技術開発」という研究課題で笹川科学研究助成を受けられた、近畿大学大学院生物理工学研究科所属の、東 里香さんから最近・助成時の研究について、コメントを頂きました。

<東さんより>
 全国の動物園や水族館等の展示施設で飼育されている動物は、現在、深刻な高齢化問題を抱えています。ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の締結により、国内展示施設においても新たな動物を海外から導入することが困難になることが予想され、飼育下繁殖技術のさらなる向上が求められています。さらに、これまでに試みられている人工授精やペアリングによる自然交配を基本とした技術に加えて、生殖細胞以外の細胞を用いる研究調査の進展は、次世代に向けた個体の管理や増殖に大きく貢献すると考えられています。

 私は、体細胞核移植技術を学部生の頃に習得し、大学院ではこの技術を用いた研究を進めてきました。体細胞核移植技術という言葉はあまり聞きなれないかもしれませんが、一般的にはクローン技術と言われ、培養細胞(体細胞)から直接的に遺伝情報を評価することが可能で、一部の動物種では個体を作製できることも報告されています。体細胞核移植実験には、マイクロマニュピレーターを用いた顕微鏡下での繊細な操作が必要となります(写真1)。私は、この装置を用いて体細胞や卵子等を操作することにより、日々研究活動を行っています。

Leica 顕微鏡写真.jpg
写真1 マイクロマニュピレーター

 近年、私たちの研究グループは、マウス体細胞を用いた個体作出効率を改善する方法を見出し技術的負担の軽減に成功しました(Azuma et al.,2018, Miyamoto et al.,2017)。私は、この新しい体細胞核移植技術を用いて、さらなる応用研究を検討することにしました。そこで、野生マウス由来の体細胞を用いた異種間核移植への応用と高齢マウス由来クローン個体の作製に挑戦しました。この研究助成期間中においては、異種間クローン胚の作製は可能であることが確かめられ、卵細胞質内で野生マウス由来のヒストン修飾のメチル化状態を検証することができました。また、高齢マウス由来体細胞を用いたクローン個体の作出が可能であることを検証することができました。これらの成果の一部は、第52回日本実験動物技術者協会総会や日本動物学会第89回大会そして第65回日本実験動物学会総会にて報告するに至っております。

 笹川科学研究助成への採択のご連絡を頂いた時は、正直驚きました。博士後期課程に進学を決めた時から、自分の研究費を獲得することが1つの目標でもありましたので、非常に嬉しかったです。また、一大学院生の私に研究者としてのチャンスを頂き、自信を付けて頂きました。現在、研究結果については詳細をまとめて学術誌への投稿を考えているところです。ありがとうございました。
<以上>

 高齢化問題は人間だけではなく、動物園の動物たちにも人間と同じように、高齢化問題が起きていているようでした。クローン技術というと、絶滅したマンモスを復活させるという話が話題になっていましたが、今生きている種の絶滅を防ぐためにも、頑張っていただければと、陰ながら応援させて頂きます。

 日本科学協会では過去助成者の方より、近況や研究成果についてのご報告をお待ちしております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Posted by 公益財団法人 日本科学協会 at 09:21 | 笹川科学研究助成 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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