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山口・循環人を訪ねて〔第十四弾〕(原田正暁さん)[2016年12月13日(Tue)]

 ここでは、私(東)が思う山口県内の「循環人(じゅんかんびと)」を、随時ご紹介させていただいています。併せて私の人生の記録として、私とのエピソードなども書かせてもらっています。お時間のある時にお読みください。

 今回ご紹介するのは、小鯖地域で地域農業の再生を目指して活動しておられる「おさば有機農業研究会」の原田正暁(ショウアキ)さんです。2016年12月6日、原田さんが運営しておられる「ふるさと出会い市場」に隣接する精米室でお話を伺わせていただきました。子どもたちの食の安全・安心やふるさと小鯖への原田さんの熱い思いを聞くことができました。
【下の写真は、今回の「山口・循環人」原田さんです。お邪魔させてもらった際、撮影させていただいたものです】
原田さん2.jpg

 小見出しは、次のとおりです。
  なぜ「循環人」なの
  私との関わりは
  有機農業に関心を持たれたきっかけとその実践は
  「おさば有機農業研究会」について
  「ふるさと出会い市場」について
  有機の貸農園について
  営農支援獲得ポイント制度について


なぜ「循環人」なの
 まず原田さんをなぜ「循環人」と思っているかといったことから、ご説明しましょう。それは、地域再生のために地域にある素材を生かしながら持続可能な農業を目指しておられるからです。しかも小鯖地域で有機農業を進めるために、「おさば有機農業研究会」を組織され、地域に根差した活動を展開しておられます。また消費者との情報交換のために「ふるさと出会い市場」を運営しておられるのです。さらにこのシリーズの第一弾として登場いただいた小田昊さんたちと有機の貸農園を運営しておられます。その上、援農の市民へは営農支援獲得ポイント制度を採用しておられるのです。まさに物事がうまく循環するように実践しておられると言えます。

私との関わりは
 原田さんに最初にお会いしたのは、2016年8月17日に開催された「山口市有機農業推進会設立準備会(第1回)」の席でした。その段階では、小鯖地域で有機農業に取り組んでいる方がいらっしゃるのだといった程度でした。原田さんに興味を持たせていただくようになったのは、11月1日に開催された2回目の準備会の後の雑談で、原田さんが直営店を出されていることを小耳に挟んだからです。そこで早速お店にお邪魔させていただきました。その際、循環する農業である有機農業に対する原田さんのお考えの一端を伺い、「山口・循環人」として原田さんをぜひ紹介させてほしいと考えたのです。
 ここで原田さんとお会いするきっかけとなった「山口市有機農業推進会設立準備会」について少し説明しておきましょう。準備会は、「『有機農業の推進に関する法律』(平成18年法律第112号。以下『有機農業推進法』という。)に定める基本理念に基づく本市域内における推進計画として、『山口県有機農業推進計画』の趣旨も踏まえ、『山口市食料・農業・農村振興プラン』との整合性を図りながら本市独自の推進施策の方向性を示す計画と位置づけて策定(「山口市有機農業推進計画」の「計画の位置づけ」より引用)された「山口市有機農業推進計画」の「有機農業の推進体制と施策」の記述に基づき設置されたものです。その「有機農業の推進体制と施策」には次のように記されています。

 有機農業者の登録、公表によって、生産者から消費者までの「輪(和)=繋がり)」を作り、増やしていくことを基本施策としながら、以下の課題について、市を事務局とする有機農業推進団体およびJAなどの関係機関で構成するワーキンググループを設置し、推進施策の評価、検討および状況に応じた有効な施策の立案について協議することとし、施策の実施に努めていくこととする。
・有機農業者等への支援
・新たに有機農業に取り組む者(市民農園などを含む)への支援
・栽培技術に関する情報収集および情報提供
・生産者、消費者への有機農業に対する理解の増進
・有機農業者による農産物の販路の確保
・その他、有機農業の推進に関する事項
 また、必要に応じては、ワーキンググループの協議に、専門家や県などにオブザーバーとして出席を求めることができることとする。


 ワーキンググループの設置ということに留まらず、市としては、関係者から成る「山口市有機農業推進会」を設立して、山口市における有機農業の推進を図ろうと考えておられるようです。そのための準備会で原田さんとお会いすることがきたのです。
【下の写真は、「ふるさと出会い市場」です。原田さんに提供していただきました】
市場(原田).jpg

有機農業に関心を持たれたきっかけとその実践は
 食品添加物の問題から食の安全・安心を考えるようになられたからだそうです。地域の農業の再生により、地域の消費者へ安全・安心な食べ物を届けたいと思っておられます。また子供の食は大切で、学校給食は十分に吟味する必要があると考えておられます。小鯖小へタマネギ、ジャガイモ、レンコン、サツマイモなどの有機野菜の提供も行われています。近くに1haの貸し農地が出たことから、10人で有機農業に取り組むことにされたのだそうです。草だらけの畑が有機だとおっしゃる人もいますが、原田さんはもっと一般の人がそんなに難しくなく取り組めて、受け入れられるような有機農業こそ必要だと考えておられます。つまり特殊な農法ではなく、一般に普及する農法こそ重要だと思っておられます。そのため草、虫との戦いに当たっては、マルチで草が生えないようにしたり、カンレイシャで覆い虫がつかないようにしておられるそうです。またタマネギのベト病を防ぐために納豆菌液がいいと聞かれ、メンバーでその実施を計画しておられるのだそうです。ジャンボタニシ、アイガモによる農法については、一般的ではないので普及が難しいのではないかとお考えです。とても勉強熱心で、除草のいらない米作りを学びに、熊本県湯前町の那須さんの所まで行かれたといった有様です。荒代掻きの後に施肥も兼ねてぼかし肥料を1反当たり200Kg投入すれば可能になるのだそうです。このような少しの工夫で有機農業を実践できることが有機農業の普及には重要だと考えておられます。慣れてくると要領がよくなるともおっしゃっていました。また行政に対しては、地域資源の活用ができるチップの粉砕機やぼかし肥料が効率よく散布できるといった有機の農業機械への半額補助をしてほしいと願っておられます。しかも大規模農業者ではなく小グループの農業者も補助対象としてほしいと考えておられます。このような有機農業者と行政の努力によって、有機農業が進んでいくのではないかとおっしゃっていました。慣行農業者に対しては、有機農産物の販路の拡大と有機農業者が実践する中で、有機農業へ転換してほしいと考えておられます。
【下の写真は、肥料にする燻炭作りの様子です。原田さんに提供していただきました】
肥料にする燻炭作りHP.jpg
【下の写真は、温湯消毒した種籾で苗箱作りの様子です。原田さんに提供していただきました】
温湯消毒した種籾で苗箱作りHP.jpg
【下の写真は、機械除草の様子です。原田さんに提供していただきました】
機械除草HP.jpg
【下の写真は、メンバーの粟屋さんが有機栽培されている自然薯です】
自然薯.jpg

「おさば有機農業研究会」について
 2010年、小鯖地域での地域農業の再生を目指して、研究会を立ち上げられました。それは同時に、市から1反当たり7千円の助成金を受けるためでもあったそうです。年15万円になり、活動資金として使われています。メンバーは10名だそうです。総会のほか研修会も開催されています。研修会では柚子コショウづくりや味噌づくりにチャレンジされたそうです。課題としては、普及する有機農法の確立、小鯖地域をはじめ各地での有機農業を目指す小グループの設立を挙げられました。なおこの研究会は、「日本有機農業研究会」や秋川牧園が事務局をしておられる「山口県有機農業研究会」との関連はないそうです。
【下の写真は、有機大豆と天日釜炊塩味噌作りの研修会の風景です。原田さんに提供していただきました】
有機大豆と天日釜炊塩味噌作りHP.jpg

「ふるさと出会い市場」について
 毎週火・金曜日の6:30〜11:00、「ふるさと出会い市場」を開いていらっしゃいます。消費者との対話を通じて、情報交換ができることを、メリットとして挙げられました。全商品が完全無農薬ではなく、3割程度はいわゆる減農薬の農産物があるそうです。地元の人との付き合い上やむを得ないとおっしゃっていました。原田さんたちが作られた作物は、基本的には地域の人たちに消費してほしいと願っておられますが、余剰農産物については宅配する準備を整えられたそうです。週二回くらいであれば、店番も大きな負担にはならないのだそうです。奥様の協力もあるからだと思われます。
 店内の壁には、「安全宣言」というプレートが掲げられていました。その宣言文の内容は次のとおりです。

 地球温暖化や原発事故などの影響で自然エネルギー社会が進展する中、従来の化学肥料や農薬にたよらない、次世代につなぐ環境保全型農業の構築が求められている。
 このため、ふるさと小鯖の自然環境の中で有機肥料を取り入れた健康野菜の栽培に努力するとともに、直売所を通じ消費者の皆様に、より安全で安心な農産物を提供することを下記のとおり宣言する。
                         記
 おさば有機農業研究会と連携し、栽培基準として化学合成農薬と化学合成肥料をまったく使用しない農産物および化学合成農薬と化学合成肥料の使用を削減したエコ農産物の二種類を表示する。
 A賞 植付から収穫まで化学合成農薬と化学合成肥料は使用しない
 B賞 植付から収穫まで化学合成農薬と化学合成肥料の使用を当地慣行レベルと比べ削減する。
  以上の項目を守るため農家日誌を記帳する。
 2010年8月1日
                                ふるさと出会い市場

【下の写真は、店内の風景です】
店内2.jpg
店内1.jpg
【下の写真は、店内の壁に貼られて「先人の言葉」です】
先人の言葉.jpg

有機の貸農園について
 有機農業の普及も兼ねて、小田さんたちと有機の貸農園を運営しておられます。原田さんの市民農園では、3人の方が借りられているそうです。今までは畝立てなど、原田さんが無償で行っておられたそうですが、来年からは油代として有料にしたいと考えておられます。有機で農業をしたいが、有機は難しいのではとお考えの方は、原田さんのご指導を受けられたらいかがでしょう。

営農支援獲得ポイント制度について
 消費者の方から「農作業をしたい」といった声があり、このポイント制度を実施することになられたそうです。草取りなどの農作業のお手伝いをすると、1時間当たり700ポイント(700円相当)がお礼としてもらえ、消費者はこのポイントを貯めて「ふるさと出会い市場」で農産物を購入することができるのです。いわば地域通貨的な仕組みです。有機農産物は市販の農産物より少し高いので、この制度は助かるといった声が消費者側からありました。何でもお金で処理される時代、このような相互扶助的な取組はどんどん広がっていく必要があるように感じます。
 農福連携にも取り組んでおられます。小鯖地域にある2つの障害者施設に対して、「ふるさと出会い市場」で残った農産物を格安で販売しておられるそうです。その2つの施設とは、知的障害者福祉法に基づいて設置された多機能型通所施設「社会福祉法人 ほおの木会 鳴滝園」と精神障がい者の作業所「(有)小川 就労継続支援B みんなの森」です。作物を無駄にしないように心掛けておられます。
【下の写真は、「ふるさと出会い市場」の壁に貼ってある「営農支援獲得ポイント証明書」です】
ポイント制度.jpg
タグ:東孝次

Posted by 東 at 16:42 | 研究員からの情報 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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