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現地見学会「新潟県の海岸から感じるグリーンインフラ」報告・感想 [2023年10月25日(Wed)]
2023年9月に開催された第54回大会(2023年・新潟)の現地見学会(9月22日開催「新潟県の海岸から感じるグリーンインフラ」)に参加なさった植野晴子さんからの報告投稿が届きました!
(注:写真は大会運営委員会から提供されたものを掲載しています)

現地見学会「新潟県の海岸から感じるグリーンインフラ」報告・感想
植野晴子(北海道大学)


現地見学会では、「新潟県の海岸から感じるグリーンインフラ」という趣旨で、柏崎市松波海岸と新潟市青山海岸を視察しました。新潟県は冬季の季節風による飛砂が激しく、200年以上前からクロマツを主体とした海岸林造成が行われてきた地域です。見学会前日のシンポジウムでは、「新潟県の海岸から学ぶグリーンインフラ」という趣旨で、新潟県の海岸の土地利用の変遷や実態、海岸林の維持管理の課題について、紹介および議論が行われました。そのため現地見学会は、このシンポジウムを踏まえて、現場を確かめられる贅沢な機会となっていました。

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柏崎市松波河岸では、主に、松波海岸林の変遷や現状、砂丘の在来種植栽の取り組みについて説明を頂きました。松波海岸林は、昭和29年に飛砂防備保安林へ指定後、本格的に海岸林造成・整備が実施されてきた、林帯幅70 m~180 mの海岸林です。近年は、松くい虫被害によるクロマツの生育不良や枯死、ニセアカシアの繁茂が問題になっており、対策として抵抗性クロマツの植栽や、天地返しによるニセアカシアの除根などが実施されています。
また、前砂丘では平成28年から令和1年に、在来種による緑化を目指して、有機質資材の含まれたマットの埋設が実施されました。これは、従来の砂草を植栽する植生導入工に代わるもので、砂浜面を20 p程度掘削し、マットを設置し、現地の砂で埋め戻します。そうすることで、砂地の保水力向上や有機質を中心とした基盤材に含まれる養分が供給され、海浜表土に含まれる埋土種子の発芽を促します。現地調査により、マット施工後2年程度は、一年草、二年草主体の群落が構成され、施工後3年程度で在来種(海浜植物)が優占する群落に遷移する傾向が確認されています。見学会では、実際にその様子を観察することができました。

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新潟市青山海岸では、まず、前砂丘を見学しました。この海岸はかつて砂丘が決壊しましたが、その後、離岸堤やテトラポッドの設置、堆砂垣工の実施により、砂の供給が増え、砂丘が維持されています。また、堆砂垣工の際に植栽されたオオハマガヤの繁茂がみられました。

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つぎに、砂丘の背後に広がる青山海岸林内を散策しました。青山海岸林は、約300 mの林帯幅で、海側から陸側にむかって、50年生、70年生、90年生のクロマツが発達しています。松葉かきの終了とともに土壌が発達し、タブノキやシロダモなどの広葉樹の侵入・定着がみられています。また、この海岸林は、近隣の自然林からの種子散布だけでなく、近隣の庭や公園に生育する緑化植物の種子散布も確認されており、新たな森林生態系が成立しています。現在は、地域のボランティアによって、雑木の伐採などの維持管理が定期的に行われており、地域住民が散歩など日常的に利用する空間にもなっています。

今回の見学会を通して、クロマツ海岸林は、マツ枯れ被害や植生遷移により、造成当時と異なる生態系が成立していることを確かめることができました。今後は、地域の海岸林の実態やニーズに合わせた維持管理目標の設定が重要になると考えられます。例えば、シンポジウムでは、海岸林が渡り鳥の飛来地として機能している事例が紹介されていました。海岸林計画時には想定されていない機能が発揮されることも踏まえ、樹種選定が必要であると考えられます。また、地域住民と現状を共有し、目標設定に取り組むことで、多様な機能が発揮されるだけでなく、地域で維持されていくグリーンインフラの形成につながると考えられます。


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Posted by JSRT・Web担当 at 15:50 | 会員より | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ワークプレイスとして国営昭和記念公園を利用した際の心理的効果に関する実証実験 [2023年10月19日(Thu)]
2023年9月に開催された第54回大会(2023年・新潟)で優秀ポスター賞(技術報告部門)を受賞された梅原瑞幾さんからの投稿が届きました!

ワークプレイスとして国営昭和記念公園を利用した際の心理的効果に関する実証実験
梅原瑞幾


受賞ポスターはこちら!

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このたびは、第54回日本緑化工学会大会において、ポスター賞を授与いただき、心より感謝申し上げます。また、この研究に携わっていただいた共同研究者や関係者の皆様、被験者の皆様にも、この場をお借りして深くお礼申し上げます。

本研究では、働き方改革におけるワークプレイスの柔軟化やオフィス緑化空間における勤務者のストレスケアの背景から、都市近郊の緑地をワークプレイスとして利用する、新しい活用を提案しました。そこで、通常オフィス勤務時と公園で働いた際の主観的心理状態の比較やワークプレイスとして公園を活用する際に必要な設備等について検討することを目的とし、2022年10月から11月にかけ、東京都立川市の国営昭和記念公園内で、実際のオフィスワーカーの方30名にリモートワークをしていただく実証実験を行いました。

昭和記念公園は、広大な敷地で四季折々の美しい植栽の変化を楽しむことができ、日本庭園やドッグラン、またイベント会場もあることから、幅広い世代の方が自然を体感できる場所です。また、都心部からのアクセスも良く、一年を通して来場者で賑わっています。会員の皆様には、実際に昭和記念公園へ訪れた経験のある方もいらっしゃることかと思います。しかし、PC等を持参し、リモートワークをされたことのある方はまだまだ少ないのではないでしょうか?

本実験の最大の特徴はオフィスワーカーの方に、公園の中で実際にリモートワークをしていただいたことです。実験は公園という公共の場で行われたことや、屋外であることから様々な制約がありました。また、勤務時間の中で実験に参加していただくこと、データを計測することは容易ではありませんでした。また、限られた実験期間や天候、仕事の都合などから、3日も昭和記念公園まで足を運んでいただくことは相当なご負担だったと思います。しかし、連名者や被験者の皆様のご協力から実験は滞りなく遂行し、今回の大会で、その成果を発表する運びとなりました。

我々が本研究で明らかにしたことを以下に簡単に示します。
(1)主観的心理状態について
・公園をワークプレイスとすることは、普段のオフィス勤務時と比較して、「気分」・「緊張」が有意に改善された。
・「新しいアイデアが浮かんだ」・「仕事に対する総合的な満足度」は、公園内リモートワークが増えるほど改善する傾向がみられた。

(2)公園内リモートワーク内容や必要設備について
・「メール」・「事務的PC作業」などの軽内容の実施割合が高かった。一方、「ミーティング」や「会議」が少ないことは、声を出す内容であることから、他の利用客や会社のコンプライアンスに対する配慮である可能性があると考えられた。
・公園内リモートワークには「電源」や「Wi-Fi」、「テーブル・ベンチ」や「屋根」など、普段のオフィスに近づけるためのハード面の設備が必要。
・被験者の感想から、公園で働くことはアイデア出し等の創造的業務に向いていることや、公園内を自転車で移動し自然を感じたことがリラックスに繋がっていることがわかった。

長期的な公園リモートワークの効果や異なる季節での評価など、まだ残された課題は多いです。しかし、都市近郊の緑地をワークプレイスとして利用することが、勤務者の健康向上に対する示唆を得たことは喜ばしい成果であるといえます。また、本研究の成果が「緑・健康」分野において新たな知見をもたらし、日本緑化工学会において高く評価されたことは非常に意義深いと考えます。今後も継続的な調査を行い、研究の深化を図ると同時に、社会の様々な問題に対して、植物や緑地の活用を通じて解決に取り組みたいです。

是非、会員の皆様にも公園でのリモートワークを体験していただければと思います。

最後までお読み下さり、ありがとうございました。









Posted by JSRT・Web担当 at 15:57 | 会員より | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
海水浴場における飛砂対策を目的とした砂丘復元前後の植生と地形の変化 [2023年10月17日(Tue)]
2023年9月に開催された第54回大会(2023年・新潟)で優秀ポスター賞(研究交流発表部門)を受賞された植野晴子さんからの投稿が届きました!

海水浴場における飛砂対策を目的とした砂丘復元前後の植生と地形の変化
植野晴子(北海道大学)


この度は、研究交流発表部門で優秀ポスター賞を頂き光栄に存じます。研究計画から調査、解析、発表に際し、指導教員や共同研究者の皆様、北海道大学農学部 花卉・緑地計画学研究室の皆様をはじめ、多くの方々から、ご協力および懇切丁寧なご指導を頂きました。この場を借りて、心より感謝申し上げます。また、発表当日は、様々なご意見・ご示唆を頂きありがとうございました。新たに得ることができた学びや気づきを、これからの研究の糧にして参ります。以下、簡単になりますが、本研究について紹介いたします。

受賞ポスターはこちら!
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砂浜海岸では海浜植物が飛砂を捕捉し堆積させることで、海岸砂丘が成立します 1)。海岸砂丘は特有の生態系を有し、風や飛砂、波の営力を減衰させ、自律的に復元できる自然堤防として機能する一方、近年の開発やレクリエーション利用、海岸侵食により、全国的に減少しています 1)
北海道石狩市浜益区の川下海水浴場もかつては砂丘を有する海岸でしたが、海水浴場整備に伴い砂丘を整地し海浜へと転換してから、飛砂害が発生するようになりました。そこで、飛砂害を軽減し、多面的な機能が期待される海浜植生の定着を目指して、海岸砂丘の復元を試みました
。本研究では、海岸砂丘の復元にあたり、草方格と堆砂垣を設置しました。草方格は格子状の静砂工 2)、堆砂垣は風を減衰させ、飛砂の抑制・堆積を促し砂丘を造成する工法 3)です。ともに治砂緑化の現場で用いられてきましたが、海浜生態系の視点から、設置前後の生物相の変化や復元効果を検証した事例はほとんどありません。
本研究では海浜植生に着目し、構造物(草方格、堆砂垣)設置による、地形と植生の変化を明らかにし、その砂丘復元効果を検証しました。

その結果、設置後2年目で、草方格区は最大60 cm、堆砂垣区は最大100 cm程度の堆砂が確認されました。海岸と駐車場の境界に位置する防砂柵への堆砂も、設置前より少なくなっていました。草方格区・堆砂垣区ともに、植物の出現種・被度の増加が確認されました。
一方、残存砂丘や人工砂丘と比較すると、草方格区・堆砂垣区の砂丘の幅や植生被度は小さかったです。また、残存砂丘や人工砂丘は多年生草本のみ出現したのに対し、草方格区・堆砂垣区では加えて一年生草本が出現しました。砂浜海岸の植生は、海からの距離(海由来の攪乱の程度)に応じて、一年生草本群落から多年生草本群落へ変化する 4)ことから、草方格区・堆砂垣区は、多年生草本の出現・定着に不安定な環境であることが推察されました。
以上、本研究では、草方格・堆砂垣の設置が、地形と植生の復元や、飛砂害対策に寄与していることを定量的に提示することができました。しかし、その回復過程はまだ途上であり、引き続きモニタリングが求められます。

図-1は草方格区、図-2は堆砂垣区の経時変化を示しています。
現在は、地形と植生の復元により、構造物の姿が確認しづらくなりました。
今後も調査を続け、砂浜海岸の利用や維持管理コストについても考えながら、地域にあった砂丘復元・活用について探求していきたく思います。

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図-1草方格区の経時変化

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図-2堆砂格区の経時変化

最後になりますが、研究紹介をさせていただきありがとうございました。本研究に携わった皆様へ、改めて感謝申し上げます。
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Posted by JSRT・Web担当 at 12:41 | 会員より | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
凍結融解履歴が植生工の侵食防止効果に与える影響を定量的に評価するための研究手法の検討 [2023年10月11日(Wed)]
2023年9月に開催された第54回大会(2023年・新潟)で優秀ポスター賞(論文部門)を受賞された鍜冶元雅史さんからの投稿が届きました!

凍結融解履歴が植生工の侵食防止効果に与える影響を定量的に評価するための研究手法の検討
鍜冶元雅史(北見工業大学)


連名:中村 大1)・渡部 樹1)・川口貴之1)・川尻俊三2)・宗岡寿美3)
1) 北見工業大学 2) 九州工業大学 3) 帯広畜産大学

この度は第54回日本緑化工学会大会の論文部門にて、優秀ポスター賞を頂戴し大変光栄です。これもひとえに、指導教員である中村大教授の親身なご指導と研究メンバーの協力があったからこそです。
今から本研究について簡単ではありますが紹介していこうと思います。

1. はじめに

 北海道ではのり面保護工を選定する際に,自然環境に配慮して,植生工が優先的に採用されている。植生工はのり面に植物を繁茂させることで,のり面を雨水による侵食から保護する工法である。しかしながら,積雪寒冷地ではのり面表層が寒気に曝されるため,凍結融解によって植生工の侵食防止効果が低減してしまう懸念があるが,これについて詳細に検討した事例は極めて少ない。
 そこで本研究では,凍結融解履歴が植生工の侵食防止効果に与える影響を評価するための研究手法について検討した。

2. 実験条件と方法

 本研究では,土を締固めて作製した土供試体に,ケンタッキーブルーグラスを播種して生育させた供試体(以下,植生供試体)を用いた。この植生供試体に対して,未凍結状態と凍結融解を与えた状態とで侵食試験を実施している。
 図-1は本研究で用いた侵食試験装置の模式図である。図の傾斜台に供試体を容器ごと設置し,その上にタンク付の水路を据え付ける。タンクの下方は供試体表面が幅150 mm,長さ430 mmの範囲で露出するように開放している。傾斜台は1:1.5 の勾配(約34o)とした。流水はタンクに貯留した水を越水させることで発生させており,流量は毎分2Lとした。なお,流水が供試体表面で拡散しないように,幅50 mmに拡縮している。
 以上の方法で土供試体は30秒間,植生供試体は600秒間流水を与えた後に,SfM写真測量用の写真撮影を行う。これを1回の侵食試験とし,1つの供試体に対して複数回繰り返し行うことで侵食痕の経時変化を観察した。また,侵食試験中にはSfM写真測量に加えて,流出土砂量,浸透水量,体積含水率θの計測を行った。
 図-2は本研究で作製した凍結融解装置である。凍結融解過程はこの装置を,常に+3℃で制御した恒温室に設置して行った。地盤が寒気で地表面から一次元的に凍結融解するのを再現するため,供試体表面にステンレス製の冷却板を設置した。冷却板は供試体表面を覆うように3つ配置しており,全てチューブで連結されている。また,冷却板は低温恒温水槽に接続されており,冷媒を循環させることで温度制御することができる。冷却板の上面には地表面との密着性を高め,融解時の沈下をスムーズにすることを目的として,1 kgの重錘を載せた。容器底部の排水経路にはビュレットを接続し,地下水を模擬した水分供給を行っている。

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3.試験結果及び考察

 図-3は凍結融解履歴を与えた植生供試体の侵食試験後の様子とそのコンター図である。凍結融解履歴を与えた植生供試体では,表層部分に空洞が形成されている。
 図-4は(a)土供試体および(b)植生供試体における積算流出土砂量,体積含水率,浸透水量の経時変化である。
 積算流出土砂量に着目すると,未凍結状態の土供試体では試験開始直後から土砂の流出が始まり,11回目終了時(330 s経過)には流出量は概ね600gに達している。これに対し,未凍結状態の植生供試体では10回目終了時(6000 s経過)においても土砂の流出は極わずかであった。以上の結果から,植生には侵食量を低減し,侵食開始時間を大幅に遅延させる侵食防止効果があることが確認できた。しかしながら,凍結融解履歴を与えた植生供試体では,試験開始直後から土砂が流出し始めていることがわかる。

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4. まとめ

 本研究では,凍結融解履歴が植生工の侵食防止効果に与える影響を評価するための研究手法について検討した。試験の結果から,本研究で用いた研究手法で,凍結融解履歴による植生供試体の侵食抵抗の低下を定量的に評価できることが確認できた。また,凍結融解履歴が植生工の侵食防止効果に与える影響のうち,最も基礎的な知見が得られたと考えられる。

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 この表彰は私個人の力ではなく、これまで自分を指導して育ててくださった先生や、自分を支えてくれた同僚・後輩の皆様のお陰であると痛感しております。本当にありがとうございます。
 これからも決して驕ることなく研究を精進していこうと思います。最後になりますが、この場で研究を紹介させていただきありがとうございます。


Posted by JSRT・Web担当 at 16:24 | 会員より | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
日本緑化工学会 令和5年定時総会および令和4年度日本緑化工学会賞授賞式 [2023年10月01日(Sun)]
2023年9月21日に、日本緑化工学会
令和5年定時総会 および 令和4年度日本緑化工学会賞授賞式が開催されました。

最初に高橋会長から、今期を振り返ってあいさつがありました。
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総会では事業報告や収支決算が審議され、第18期の役員の選任が行われました。
総会の合間に行われた理事会において、新会長には高橋輝昌理事が 副会長には岩崎寛理事、簗瀬知史理事が選出されたことが報告されました。


そして、総会の開催前に「令和4年度 日本緑化工学会賞」の授与式が行われました。
岩崎学会賞選考委員長による選考経過の報告に引き続き 高橋会長から、 
技術賞が中村華子氏に贈られました。

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受賞者からの自己紹介や研究紹介は,次回以降の学会誌上にて紹介記事が掲載される予定です。

なお、総会の議事録および議事資料は、学会のホームページに報告・議案を掲載いたします。
http://www.jsrt.jp/announce.html