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異なる温度条件におけるベニシダ,オシダ,イヌガンソクの胞子発芽と前葉体成長/西野文貴 [2020年11月01日(Sun)]
2020年9月に開催された第51回大会(岩手Web大会)で優秀ペーパー賞を受賞された西野さんからの投稿が届きました!

異なる温度条件におけるベニシダ,オシダ,イヌガンソクの胞子発芽と前葉体成長
西野文貴


 この度は第51回日本緑化工学会大会において,論文部門にて優秀ペーパー賞を頂くことができ大変光栄です。まず,指導教官である福永健司教授と橘隆一教授に厚く御礼申し上げます。本稿を執筆するに当たり,統計手法等を御教授いただいた東京農業大学非常勤講師の相澤健実先生をはじめ,実験にご協力頂いた大畠功暉氏,関係者に深く感謝申し上げる。また,web討議期間中にご質問頂きました皆様にも感謝申し上げます。昨年に引き続き受賞をいただいたことで,自分の研究に自信がつきましたが,決して驕ることなく力戦奮闘し時代を変えたいと思います。この場をお借りし,私の研究内容を紹介させて頂きます。

1. はじめに
 シダ植物は日本に約700種生育し,様々な生活形や耐性などを持つことで多様な環境に適応してきたと考えられる。シダ植物は胞子を用いて繁殖する。胞子が発芽する環境要因については温度,光などがあげられ,定着には地形の起伏,土壌の質や湿度など微環境の影響を受けやすい特性があるとも指摘されている。
 シダ植物はオシダなどのように生活形や葉形などが独特なだけでなく,耐陰性に優れた種が存在し,室内緑化または新たな緑化素材としての利用が期待されている。シダ植物が緑化に利用されることで,新しい景観の創出や種多様性に貢献することが考えられる。

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 シダ植物の増殖方法については株分けが主流とされるが,オシダやイヌガンソクなど根茎が匍匐しない種類は株分けが難しい。他の増殖方法としてカルスを用いた実験が行われているものの,実験設備の確保や順化などの面から野外栽培などは困難と考えられる。したがって,シダ植物の増殖方法には胞子を用いた栽培が有効と考えられる。スギナの胞子の発芽可能温度域は15〜30 ℃,最適温度は20 ℃と温度による発芽の違いが確認されている。また,一般に在来シダ植物の胞子の発芽は22〜25 ℃前後が適し,前葉体は15 ℃以上で成長し,30 ℃以上だと抑制されると報告されている。しかし,温度条件の影響について種ごとの胞子の発芽率の推移や前葉体成長に関する具体的な数値や差異は明らかになっていない。
 実験は緑化に関係する種類を対象とし,温度勾配機内に5つの恒温条件を設定し,胞子の発芽試験と前葉体成長の測定を行うことで,胞子発芽と前葉体成長に適する温度条件を明らかにすることを目的とした。

2. 実験方法
 供試植物は従来から緑化植物として利用されているオシダ科オシダ属のベニシダ(Dryopteris erythrosora (D.C.Eaton) Kuntze.),独特の葉形や耐凍性を有し今後の緑化植物として期待されているオシダ科オシダ属のオシダ(Dryopteris crassirhizoma Nakai.),コウヤワラビ科コウヤワラビ属のイヌガンソク(Onoclea orientalis (Hook.) Hook.)とした。
  胞子の殺菌はクリーンベンチ内で行った。殺菌には12%次亜塩素酸ナトリウム(株式会社松葉薬品)を希釈して,1%次亜塩素酸ナトリウムを作成し,これを胞子の入ったスクリュー瓶に10 ml入れ5分間攪拌した。胞子は浸漬後,ろ過して滅菌水で3回洗浄した。培地はスクロースが添加されていないムラシゲ・スグーグ培地の粉末培地(日本製薬株式会社)を使用した(以下MS培地)。培地のpHは5.75±0.05に調整したのち,寒天粉末を濃度0.7%になるよう加え,オートクレーブ(121 ℃,20分間)で滅菌処理を行った。
 培地は滅菌処理後にクリーンベンチ内にて滅菌プラスチックシャーレ(直径50.7 mm,高さ14.7 mm)に15 ml分注し,常温になるまで放冷した。放冷後,殺菌した胞子をマイクロピペットで吸い取り,培地上の5ヵ所が等間隔になるように1滴ずつ播種した。播種後のシャーレは恒温10 ℃・15 ℃・20 ℃・25 ℃・30℃に設定した温度勾配機(東京理化器械 EYELA MTI-202)内に設置した。温度勾配機内の光量は3,300 lux(明期16時間・暗期8時間)とした。胞子発芽の観察には実体顕微鏡(OLYMPUS SZ61)を使用した。発芽は撮影画像の胞子から緑色の原糸体が突出した時点とした。胞子播種後90日,心臓形に発育した個体,各温度条件から30個体を無作為に5シャーレから採取した。採取した前葉体は白色の紙に定規(最小目盛りは1 mm)と一緒に貼り付け,3,366×2,514,300 dpiの解像度にてスキャン(.tiff)を行い,画像処理ソフトImageJ(National Institutes of Health, Bethesda, Maryland, USA)を用いた画像解析により,前葉体の部分のみを面積の測定範囲として抽出を行い,前葉体以外の部分が抽出された場合は修正を行った。

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3. 結果
 各温度条件の胞子の発芽率の推移を図-1,平均発芽日数と最終発芽率を表-1に示す。ベニシダで発芽が最初に確認されたのは30 ℃区の4日目,最も遅いのは10 ℃区の20日目で16日間の差があった。48日目以降,発芽率に変化は見られなかった。48日目で最も高い発芽率は15 ℃区で48.3%,最も低い発芽率は20 ℃区で40.8%となった。最終発芽率は48日目の全温度条件区間において有意な差は認められなかった。
 オシダで発芽が最初に確認されたのは20 ℃区,25 ℃区,30 ℃区の4日目,最も発芽が遅いのは10 ℃区の20日目で16日間の差があった。最終発芽率は28日目で全温度条件区において100%を示し,全条件間で有意な差は認められなかった。
 イヌガンソクで発芽が最初に確認されたのは25 ℃区と30℃区で8日目,最も発芽が遅いのは10 ℃区の34日目で26日間の差があった。90日目以降,発芽率に変化は見られなかった。イヌガンソクの平均発芽日数は64日目の測定より長期間欠測したため,64日までの発芽数から算出した。最終発芽率は90日目で10 ℃区と15 ℃区を除いて有意な差が認められた(p<0.01)。

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 播種後90日目の前葉体の様子,前葉体の表面積の値を表-1に示す。表-2の前葉体の写真は滴下した胞子が成長し,前葉体の集塊した状態となる。前葉体の大きさは目視による観察だと,集塊の中心部と縁辺部では大きな差は見られなかった。中心部の前葉体は寒天培地に対して上に伸長し,縁辺部では水平に成長していたが,定量的な判定は行っていない。
 ベニシダの表面積の最小は15 ℃区と30 ℃区で2.1 mm2,最大は25 ℃区で19.2 mm2となった。また,20 ℃区,25 ℃区において平均10 mm2の表面積となり,15 ℃区,30 ℃区と比べ約1.5倍以上の差が確認された。
 オシダの表面積の最小は25 ℃区で1.3 mm2,最大は20 ℃区で22.9 mm2となった。また,20 ℃区において面積が平均11.2 mm2で,15 ℃区,25 ℃区と比べておよそ2倍以上の差が確認された。また,オシダは30 ℃では前葉体の形成はなかったが,原糸体が前葉体になるまでに枯死した。
 イヌガンソクの表面積の最小は25 ℃区で1.7 mm2,最大は20 ℃区で23.1 mm2となった。また,20 ℃区において平均8.5 mm2の表面積となり, 15 ℃区,25 ℃区と比べ約1.5倍以上の差が確認された。また,30 ℃区の温度条件区においては前葉体の形成が一部確認されたが,計測が難しい状態であった。

4. 考察
 平均発芽日数は,3種とも25 ℃が最も早く,25 ℃以外では発芽日数が遅れるため,早く発芽させるには25 ℃が適切な温度条件だと考えられる。しかし,3種とも10 ℃で発芽日数は遅くなるが,最終発芽率は高い値を示していることから積算温度が胞子発芽に関係していると考えられる。今回の実験では積算温度の結果を胞子栽培に応用できるかはわからなかった。今後,積算温度に焦点を当てて実験を行うことで,胞子栽培に応用できるか判明すると考えられる。ベニシダとオシダの累積発芽率は各条件間で有意な差が認められなかったため,10 ℃〜30 ℃の範囲では温度条件が発芽率に与える影響は少ないと考えられる。本研究で使用したベニシダの胞子は常温保存約150日目となり,胞子の保存が長期間または保存方法が発芽率の低下に起因していると考えられる。しかし,詳細な原因究明には至っていない。また,分布域と胞子発芽における温度条件の研究は著者が調べた限り行われておらず,研究を行うことでシダ植物の生態の解明に繋がると考えられる。
 ベニシダの前葉体は,10 ℃では形成されず,成長が止まっていたが,15 ℃〜30 ℃においては形成が確認された。したがって,ベニシダの前葉体の形成には温度が15 ℃以上必要であると考えられる。オシダとイヌガンソクの前葉体は10 ℃では形成されず,成長が止まっていたが,15〜25 ℃においては前葉体の形成が確認された。また,オシダは30 ℃では前葉体の形成原糸体が前葉体になるまでに枯死し,イヌガンソクは30 ℃では一部を除いて前葉体の形成が確認されなかった。したがって,オシダとイヌガンソクの前葉体の形成には温度が15 ℃以上必要であると考えられる。ただし,30 ℃以上では前葉体の形成,原糸体の生育を抑制すると考えられる。主に暖温帯に生育するベニシダでは30 ℃でも前葉体は形成されたが,冷温帯に生育するオシダは原糸体が前葉体になるまでに枯死した。したがって,主に冷温帯に生育する種は30 ℃以上では胞子発芽するものの前葉体の形成は困難と考えられる。そのことから,分布域は栽培時における温度条件の目安になると考えられる。しかし,今回の実験では3種と対象種が少ないため,今後は対象種を増やすことで分布と温度の関係性が明瞭になると考えられる。また,ベニシダとオシダは同科同属であるが胞子発芽と前葉体成長の傾向が異なったことから,胞子栽培においては種ごとに温度条件を検討する必要があると考えられる。

5. おわりに
 本研究では最終発芽率はベニシダとオシダでは10〜30 ℃で同様の結果を示し,イヌガンソクでは10 ℃が最も高い値を示し,前葉体成長においてベニシダは20 ℃もしくは25 ℃,オシダとイヌガンソクは20 ℃が最も成長したことが明らかになった。本研究の実験は5 ℃ごとに恒温条件を設定したが,今後は細かい温度設定や変温条件を組み合わせることで最適な温度条件を解明できると考えられる。胞子発芽と前葉体成長に関係する要因は胞子の形態,胞子の大きさ,散布時期,生育環境,分布する気候帯など様々である。今後は供試植物の種類を増やし,複合的な実験条件を組むことで多岐にわたる要因を明らかできると考えられる。

 今回の受賞はコロナ禍の中という事もあり,色んな角度から研究を考えさせられました。研究対象のシダ植物という神秘ある生物を通して,自然科学の一端に触れられたのではないかと思っています。研究では常識にとらわれずに他の分野も貪欲に勉強したいと思います。世のため,人のためになるよう,何事にも全力で取り組み,率先垂範を心掛けたいと思います。この度は研究紹介をさせて頂き,ありがとうございました。研究に携わった皆様に改めて感謝申し上げます。


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オンラインアンケートを用いた看護学生の病院緑化および園芸療法に対する意識調査/渡邉藍 [2020年10月25日(Sun)]
2020年9月に開催された第51回大会(岩手Web大会)で優秀ペーパー賞を受賞された渡邉さんからの投稿が届きました!

オンラインアンケートを用いた看護学生の病院緑化および園芸療法に対する意識調査
渡邉藍(千葉大学大学院園芸学研究科 博士前期課程2年)


受賞した要旨2枚目(ポスター)はこちら!
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 この度は、第51回日本緑化工学会大会において、優秀ぺーパー賞(研究交流発表部門)をいただき、誠にありがとうございます。今年はWeb上での開催でしたが、期間中には様々な視点からコメントをいただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。簡単ではありますが、本研究について紹介させていただきます。

 既往研究より、病院緑化が入院患者の術後回復に有用であることや、園芸療法が病院勤務者のストレス緩和に有用であること等が報告されています。しかし、それらの効果を活かした緑化やプログラムが導入されている病院はまだまだ少ないのが現状です。今後、植物の効果を活かした緑を導入してもらうには、現場で働く医療従事者の病院緑化や園芸療法に対する理解が必要不可欠であると考えられます。しかし、医療従事者は夜勤など勤務形態が不規則であることや、激務であることなどから、緑の効果を理解する時間や余裕がない事が予想されます。そこで、時間に余裕があり、学ぶ環境でもある学生時代に着目し、学生時代に植物の有用性を理解してもらうことが有効ではないかと考えました。
 このような経緯から、本研究では全国の看護学生を対象に、病院緑化および園芸療法に対する意識についてオンラインアンケートを実施しました。医療従事者の中でも、看護師(看護学生)を選んだ理由は、病院緑化や園芸療法に対する理解が、看護師の職務内容や多職種連携での役割等から重要であると考えられること、また患者との距離が近い職種であることから、彼らの理解が進むことで、病院における緑の導入に繋がりやすいと考えたからです。

 病院において緑が必要な場所について聞いた結果、中庭や待合室など、「患者が利用する空間」が多く選ばれ、ナースステーションや職員の休憩室など「勤務者が利用する空間」はほとんど選ばれませんでした。現在、うつ病など精神疾患で休職する病院勤務者が急増しています。これらの対策としても、今後は「勤務者が利用する空間」への緑の導入が必要であると考えられます。そのためには、当事者である病院勤務者自身の意識を、学生時代から変えていくことが必要であることがわかりました。また、園芸療法に対する認知について聞いた結果、認知度自体は低いものの、「興味がある」と回答した学生が6割以上いることがわかりました。よって、園芸療法の認知度を上げ、導入を促進するには、学生時代の間に知ってもらう機会や場を提供することが有効であると考えられました。

 現在のコロナ禍において、医療従事者は、これまで以上にストレスフルな状況であると考えられます。そのストレスを緩和するための一つの手段として、植物の存在が病院緑化(ハード面)や園芸療法(ソフト面)といった形で広まれば、と考えております。今後も引き続き、病院における緑の研究を進めてまいりたいと思っています。
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ガマズミ属3種の種子の休眠打破/武井理臣 [2020年10月22日(Thu)]
2020年9月に開催された第51回大会(岩手Web大会)で優秀ペーパー賞を受賞された武井さんからの投稿が届きました!

ガマズミ属3種の種子の休眠打破
武井理臣


 この度は第51回日本緑化工学会大会において、研究交流発表部門にて優秀ポスター賞を頂くことができ大変光栄です。指導教官である福永健司教授と橘隆一教授に厚く御礼申し上げます。また、web討議期間中にご質問頂きました皆様にも感謝申し上げます。この場をお借りし、私の研究の内容を紹介させて頂きます。

1.はじめに
 ガマズミ属の種子の多くは形態生理的休眠を持つ。形態生理的休眠を持つ植物では種子は胚が未熟な状態で散布され、まず形態休眠が打破されることで胚の成長と発根が生じ、続いて成長した胚の生理的休眠が打破されると子葉が地上に出現する。このため発芽に時間がかかり、ガマズミやカンボクなどは播種から発芽までに2年以上の時間を要する。ガマズミでは、暖温湿層処理を120日間行った後に冷温湿層処理を60~90日間行うことで通常よりも300〜330日ほど早く形態生理的休眠が打破できる4)。しかし、北アメリカに自生するガマズミ属では、暖温湿層処理の要求期間と有効な温度条件はガマズミ属内でも樹種ごとに異なることが報告されている2、3)。日本のガマズミ属の樹種においても,種ごとに生育する気候や環境が異なるため,休眠打破に必要な暖温湿層処理の温度や期間が異なることが予想され,解明できればガマズミ同様通常よりも短期間に発芽させることが可能になると考えられる。そこでカンボク、ミヤマガマズミ、ゴマギの種子に対し、ガマズミ同様の方法で休眠打破ができるか実験を行った。

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2. 実験方法
 70%エタノールで殺菌し、蓋に通気孔を開けたポリプロピレン製容器に小粒の軽石砂を40g詰め、種子を50粒播種した。暖温湿層処理は25、20、15℃恒温条件と25/15℃変温条件(12時間切替)の4条件設けた。暖温湿層処理は、発根率が50%を上回るまで行った。その後冷温湿層処理を0±2 ℃で90日間行った。ゴマギのみ暖温湿層処理で発根しなかったため、0±2 ℃と25℃で湿層処理を行う追試験を行った。実験開始から30日に1回、実験開始75日目から終了時までは15日に1回発根率と、測定毎5粒の種子について胚の断面観察を行った。カンボクのみ、15/5℃変温条件(12時間切替)で発芽試験を行った。

3.結果と考察
 カンボクでは15/25℃変温条件の発根が一番早く、実験開始75日目で80%の種子が発根した。25℃恒温条件では発根開始が他の条件より50日ほど遅れた。発芽試験では25/15℃変温条件の発芽率が60%と1番高くなった。暖温湿層処理中に胚が成長し発根し始めたこと、冷温湿層処理後に子葉が展開したことから形態生理的休眠の8つのレベルの中でガマズミと同じDeep simple epicotylに属すると推測される。ミヤマガマズミでは25℃恒温以外の条件では、実験開始120日目には発根が始まった。暖温湿層処理中に胚が成長し発根し始めたことから、ガマズミと同様の方法で早期に発芽させられると示唆された。ゴマギは0℃での冷温湿層処理でのみ発根した。このことから、ゴマギの形態生理的休眠のレベルはDeep simple epicotylでは異なり、ガマズミのような休眠打破処理は不要と考えられる。

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 ガマズミ属は形態生理的休眠を持つ種が多いとされるが,休眠のレベルは種によって異なることが示唆された。今後,温度条件を追加し再度実験を行い,形態生理的休眠の8つのレベルのうち,どこに当てはまるのかを解明する必要がある。カンボクとミヤマガマズミに関しては,ガマズミと同様の方法で休眠打破ができると考えられる。今後,暖温湿層処理の期間を変えガマズミのように最短時間で休眠打破を行う方法についても解明する必要がある。

 ペーパー賞を励みに、これからも研究に邁進したいと考えております。最後に、本研究に携わった皆様に改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。
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河川水辺の国勢調査結果を用いた九州の一級水系における河川環境、とくに外来植物群落の変遷に関する考察/友口勇生 [2020年10月20日(Tue)]
2020年9月に開催された第51回大会(岩手Web大会)で優秀ペーパー賞を受賞された友口さんからの投稿が届きました!

河川水辺の国勢調査結果を用いた九州の一級水系における河川環境、とくに外来植物群落の変遷に関する考察
友口勇生


 この度は『河川水辺の国勢調査結果を用いた九州の一級水系における河川環境、とくに外来植物群落の変遷に関する考察』という題目で技術報告部門の優秀ペーパー賞を頂き、誠にありがとうございました。また、共同研究者、関係者の方々、大会期間中を通して貴重なご意見を頂いた方々にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。この度は簡単ではございますが、本研究の内容を紹介させて頂きます。

はじめに
 一級水系では、河川環境の整備ならびに保全を推進するために、1990年から5〜10年周期で河川水辺の国勢調査(以下、水国と称します)が実施されています。水国は「魚類」、「両生類・爬虫類・哺乳類」、「陸上昆虫類等」、「底生動物」、「植物」および「鳥類」の6項目について調査がなされ、その調査データはHPや情報公開制度などによって、広く一般に入手可能となっております。水国は調査開始から20年以上が経過し、今では、過去と現在のデータを比較することで、河川環境の変遷について検討可能な時期にきていると考えました。そこで本研究では、「植物」の調査データから、河川環境の変遷、とくに外来植物群落の変遷に焦点をあてて水国結果から解析を試みました。ここでは、本解析の足掛かりとして、九州の一級水系を対象としました。

方法
 各水系をそれぞれ過去と現在の2つに分け、現在については、各水系において最新のデータを使用しました(2017年現在)。過去については、1997年に水国の調査範囲が変更されているため、1997年以降のデータとしました。植物調査では、河辺植生域、造林地、耕作地、人工草地、施設地等、自然裸地および水面の7つの区分で、それぞれの面積(ha)が計測されています。本研究では、それら区分を、外来植物群落、在来植物群落、造林地、耕作地、人工草地、施設地等および自然裸地の7つに区分し、それぞれの面積(%)を集計しました(外来植物群落については、群落別の面積(%)を別途集計)。それらを変数に主成分分析、クラスター分析(グループ内平均連結法)および除歪対応分析(DCA)を行いました。

結果および考察
 九州の一級水系においては、過去から現在にかけて多くの水系で、その多くが在来植物群落から外来植物群落へと変遷していることが示されました(図-1)。また、施設地や人工草地等の開発(人為的攪乱)が増加し、それらが外来植物群落に影響を及ぼしていることが同時に示唆されました(図-1)。 

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外来種群落においては、過去においては、多くの水系でセイタカアワダチソウ群落が形成されていました(図-2)。これに対して、現在では、同種に代わって、セイバンモロコシ群落が成立していました(図-2)。

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 DCAによる序列化でも、年代と負の相関にあるX軸に対して、セイタカアワダチソウ群落は、セイバンモロコシ群落の大きく右側に配置されました(図-3)。
 以上から、九州の一級水系における外来植物群落は、過去から現在にかけて、セイタカアワダチソウ群落からセイバンモロコシ群落へと変遷しているものと考えられました。

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おわりに
 本報では、九州の一級水系における外来植物群落の変遷について多変量解析から概括的に捉えてみました。今後、水国の調査データ(素データ)との整合性についても検討を要しますが、本報の示す変遷は、昨今の河川環境について私共が日々感じている実態をよく反映していると考えます。特に本地域での繁茂が明らかとなったセイバンモロコシについては、我が国における知見がまだまだ乏しいことから、その動態を注視するとともに、抑制手法の検討が喫緊の問題と考えています。

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異なる培地と温度条件下におけるオシダ科3種の胞子の発芽と前葉体の成長/西野文貴 [2019年11月12日(Tue)]
2019年・第50回記念大会(九州産業大学)でポスター賞を受賞された西野文貴さんからの投稿が届きました!

異なる培地と温度条件下におけるオシダ科3種の胞子の発芽と前葉体の成長
西野文貴


受賞ポスターはこちら!
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この度は第50回日本緑化工学会大会において,技術報告部門にて優秀ポスター賞を頂くことができ大変光栄です。まず,指導教官である福永健司教授と橘隆一准教授に厚く御礼申し上げます。発表当日,私の発表を聞いて下さり、ご質問やご意見を下さった方々にも感謝申し上げます。今回の受賞で自分の研究に自信がつきましたが,決して驕ることなく粉骨砕身し時代を変えていきたいと殊に思います。この場をお借りし,私の研究の内容を紹介させて頂きます。

1. はじめに
 シダ植物は日本に約700種類生育しているが,都市緑化に使用される種類は,ベニシダ,オニヤブソテツなど多くても10種程度である。現在,シダ植物は株分けで増やしているが,効率が悪いため大量生産に向かない。また,株分けの難しい種もあり,自生地からの採取による個体数の減少なども懸念される。胞子は適度の水・光・温度さえあれば発芽して成長するが,種によって発芽に適した条件は異なる。
 そこで本研究では,胞子からの栽培技術の確立を目指し,異なる培地濃度と温度条件下において胞子の発芽と前葉体の成長過程を観察した(図1)。対象種は都市緑化に使用される緑化植物として有望なオシダとイヌガンソク,利用が多いベニシダのオシダ科3種とした(表1)。

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2. 実験方法
 胞子はNaClO水溶液(100ppm)に5分間浸漬させ殺菌し,蒸留水にて洗浄した。培地はムラシゲ・スグーグ培地(以下MS培地)を使用した。寒天培地は滅菌ディスポシャーレ(PS製直径56mm)に15mlずつ分注し,その培地上にマイクロピペットを用いて5地点等間隔に播種した。培養中の光量は両実験とも3,300lux(明期16時間・暗期8時間)とした。定期的に胞子を実体顕微鏡で撮影し,画像解析ソフトimage Jで発芽数を測定した。前葉体の成長は播種後90日目の画像データから面積を算出した(図2)。
 MS培地用混合塩類1ℓ用を蒸留水1ℓに溶かした濃度を1 MSとし,これに蒸留水を加えることで濃度を1/2 MS,1/4 MS,0 MS(蒸留水のみ)となるよう調整した培地を用意し,計4通りの濃度を設けた。各条件の繰り返しは5回,恒温25℃とした。培地の濃度は1/2 MSとした。温度条件は恒温10,15,20,25,30℃の5通りとし,各条件の繰り返しは5回とした。

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3. 結果と考察

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 イヌガンソクの発芽率は0 MSと1/4 MSで高い発芽率を示した(図3)。濃度が高くなると発芽率が低下し,0 MSでは41.9%と1 MSでは18.2%と約2倍の差があった(図4)。前葉体の成長は3種とも0 MSでは面積が小さく、仮根の伸長が目立った。

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 発芽開始日は3種ともに20℃以下で遅くなり,10℃で最も遅くなった。ベニシダとオシダは全条件間で最終発芽率に差がないことから,胞子の発芽はある積算温度に達すると開始するが,種によって積算温度は異なると考えられる。イヌガンソクは15℃を超えると最終発芽率が低くなることから,一定の温度を超えると発芽が阻害されると考えられる。また,3種とも10℃では前葉体が確認できなかった。

 今後は緑化植物として利用が拡大されると考えられるが,それに対する今の生産状況は大きな問題を抱えている。上述したようにシダ植物の主な増やし方としては自生地にて親株を採取し,株分けという地下茎を分割することで個体を増やす方法が行われている。しかし、この方法では一度に大量生産ができないことや自生地の個体数が減少する可能性が考えられる。また,ウラジロやコシダなど移植を行っても栽培が難しい種類,コタニワタリやイノデ,イワヒバなど株分け自体が難しい種類もあり,株分けだけでは対応できない種類も多い。自生地の環境が変化する中では,貴重種などの保全対策としても胞子栽培は有効であると考えられる。例えば,道路工事や開発で発生する植物の移植工事においてはシダ植物が移植困難植物として挙げられることも報告されている。これらの問題は胞子からの栽培方法を確立することで解決すると考えられる。

 今回の受賞で安堵し胡坐をかくのではなく,これからも日々研究に精進したいと思います。研究では常識にとらわれずに他の分野も貪欲に勉強したいと思います。自然科学という魅力ある学問に出会えた事に改めて喜びを感じます。研究紹介をさせて頂きありがとうございました。研究に携わった皆様に改めて感謝申し上げます。



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