ワークプレイスとして国営昭和記念公園を利用した際の心理的効果に関する実証実験 [2023年10月19日(Thu)]
2023年9月に開催された第54回大会(2023年・新潟)で優秀ポスター賞(技術報告部門)を受賞された梅原瑞幾さんからの投稿が届きました!
ワークプレイスとして国営昭和記念公園を利用した際の心理的効果に関する実証実験 梅原瑞幾 受賞ポスターはこちら! このたびは、第54回日本緑化工学会大会において、ポスター賞を授与いただき、心より感謝申し上げます。また、この研究に携わっていただいた共同研究者や関係者の皆様、被験者の皆様にも、この場をお借りして深くお礼申し上げます。 本研究では、働き方改革におけるワークプレイスの柔軟化やオフィス緑化空間における勤務者のストレスケアの背景から、都市近郊の緑地をワークプレイスとして利用する、新しい活用を提案しました。そこで、通常オフィス勤務時と公園で働いた際の主観的心理状態の比較やワークプレイスとして公園を活用する際に必要な設備等について検討することを目的とし、2022年10月から11月にかけ、東京都立川市の国営昭和記念公園内で、実際のオフィスワーカーの方30名にリモートワークをしていただく実証実験を行いました。 昭和記念公園は、広大な敷地で四季折々の美しい植栽の変化を楽しむことができ、日本庭園やドッグラン、またイベント会場もあることから、幅広い世代の方が自然を体感できる場所です。また、都心部からのアクセスも良く、一年を通して来場者で賑わっています。会員の皆様には、実際に昭和記念公園へ訪れた経験のある方もいらっしゃることかと思います。しかし、PC等を持参し、リモートワークをされたことのある方はまだまだ少ないのではないでしょうか? 本実験の最大の特徴はオフィスワーカーの方に、公園の中で実際にリモートワークをしていただいたことです。実験は公園という公共の場で行われたことや、屋外であることから様々な制約がありました。また、勤務時間の中で実験に参加していただくこと、データを計測することは容易ではありませんでした。また、限られた実験期間や天候、仕事の都合などから、3日も昭和記念公園まで足を運んでいただくことは相当なご負担だったと思います。しかし、連名者や被験者の皆様のご協力から実験は滞りなく遂行し、今回の大会で、その成果を発表する運びとなりました。 我々が本研究で明らかにしたことを以下に簡単に示します。 (1)主観的心理状態について ・公園をワークプレイスとすることは、普段のオフィス勤務時と比較して、「気分」・「緊張」が有意に改善された。 ・「新しいアイデアが浮かんだ」・「仕事に対する総合的な満足度」は、公園内リモートワークが増えるほど改善する傾向がみられた。 (2)公園内リモートワーク内容や必要設備について ・「メール」・「事務的PC作業」などの軽内容の実施割合が高かった。一方、「ミーティング」や「会議」が少ないことは、声を出す内容であることから、他の利用客や会社のコンプライアンスに対する配慮である可能性があると考えられた。 ・公園内リモートワークには「電源」や「Wi-Fi」、「テーブル・ベンチ」や「屋根」など、普段のオフィスに近づけるためのハード面の設備が必要。 ・被験者の感想から、公園で働くことはアイデア出し等の創造的業務に向いていることや、公園内を自転車で移動し自然を感じたことがリラックスに繋がっていることがわかった。 長期的な公園リモートワークの効果や異なる季節での評価など、まだ残された課題は多いです。しかし、都市近郊の緑地をワークプレイスとして利用することが、勤務者の健康向上に対する示唆を得たことは喜ばしい成果であるといえます。また、本研究の成果が「緑・健康」分野において新たな知見をもたらし、日本緑化工学会において高く評価されたことは非常に意義深いと考えます。今後も継続的な調査を行い、研究の深化を図ると同時に、社会の様々な問題に対して、植物や緑地の活用を通じて解決に取り組みたいです。 是非、会員の皆様にも公園でのリモートワークを体験していただければと思います。 最後までお読み下さり、ありがとうございました。 |