2023年9月に開催された第54回大会(2023年・新潟)で優秀ポスター賞(研究交流発表部門)を受賞された植野晴子さんからの投稿が届きました!海水浴場における飛砂対策を目的とした砂丘復元前後の植生と地形の変化植野晴子(北海道大学)
この度は、研究交流発表部門で優秀ポスター賞を頂き光栄に存じます。研究計画から調査、解析、発表に際し、指導教員や共同研究者の皆様、北海道大学農学部 花卉・緑地計画学研究室の皆様をはじめ、多くの方々から、ご協力および懇切丁寧なご指導を頂きました。この場を借りて、心より感謝申し上げます。また、発表当日は、様々なご意見・ご示唆を頂きありがとうございました。新たに得ることができた学びや気づきを、これからの研究の糧にして参ります。以下、簡単になりますが、本研究について紹介いたします。
受賞ポスターはこちら!砂浜海岸では海浜植物が飛砂を捕捉し堆積させることで、海岸砂丘が成立します
1)。海岸砂丘は特有の生態系を有し、風や飛砂、波の営力を減衰させ、自律的に復元できる自然堤防として機能する一方、近年の開発やレクリエーション利用、海岸侵食により、全国的に減少しています
1)。
北海道石狩市浜益区の川下海水浴場もかつては砂丘を有する海岸でしたが、海水浴場整備に伴い砂丘を整地し海浜へと転換してから、飛砂害が発生するようになりました。そこで、飛砂害を軽減し、多面的な機能が期待される海浜植生の定着を目指して、海岸砂丘の復元を試みました
。本研究では、海岸砂丘の復元にあたり、草方格と堆砂垣を設置しました。草方格は格子状の静砂工
2)、堆砂垣は風を減衰させ、飛砂の抑制・堆積を促し砂丘を造成する工法
3)です。ともに治砂緑化の現場で用いられてきましたが、海浜生態系の視点から、設置前後の生物相の変化や復元効果を検証した事例はほとんどありません。
本研究では海浜植生に着目し、構造物(草方格、堆砂垣)設置による、地形と植生の変化を明らかにし、その砂丘復元効果を検証しました。
その結果、設置後2年目で、草方格区は最大60 cm、堆砂垣区は最大100 cm程度の堆砂が確認されました。海岸と駐車場の境界に位置する防砂柵への堆砂も、設置前より少なくなっていました。草方格区・堆砂垣区ともに、植物の出現種・被度の増加が確認されました。
一方、残存砂丘や人工砂丘と比較すると、草方格区・堆砂垣区の砂丘の幅や植生被度は小さかったです。また、残存砂丘や人工砂丘は多年生草本のみ出現したのに対し、草方格区・堆砂垣区では加えて一年生草本が出現しました。砂浜海岸の植生は、海からの距離(海由来の攪乱の程度)に応じて、一年生草本群落から多年生草本群落へ変化する
4)ことから、草方格区・堆砂垣区は、多年生草本の出現・定着に不安定な環境であることが推察されました。
以上、本研究では、草方格・堆砂垣の設置が、地形と植生の復元や、飛砂害対策に寄与していることを定量的に提示することができました。しかし、その回復過程はまだ途上であり、引き続きモニタリングが求められます。
図-1は草方格区、図-2は堆砂垣区の経時変化を示しています。
現在は、地形と植生の復元により、構造物の姿が確認しづらくなりました。
今後も調査を続け、砂浜海岸の利用や維持管理コストについても考えながら、地域にあった砂丘復元・活用について探求していきたく思います。

図-1草方格区の経時変化

図-2堆砂格区の経時変化
最後になりますが、研究紹介をさせていただきありがとうございました。本研究に携わった皆様へ、改めて感謝申し上げます。