2021年9月に開催された第52回オンライン大会で優秀発表賞(論文・技術報告部門)を受賞された五郎部生成さんからの投稿が届きました!植生工の雨滴に対する侵食防止効果の新たな評価手法の検討五郎部生成(北見工業大学)
この度は第52回日本緑化工学会大会の論文・技術報告部門にて、優秀発表賞を頂戴し大変光栄です。これもひとえに、指導教員である中村大准教授の親身なご指導があったからこそです。また、web討議期間中にご質問を頂いた皆様にも心より感謝申し上げます。
今から本研究について簡単ではありますが紹介していこうと思います。
1.はじめに植生工はのり面に植物を繁茂させ、根系を侵入させることで表層地盤を補強する工法であり、雨水による侵食を防止する効果が期待できる。本研究では、植生工が有する侵食防止効果を明らかにすることを目的として、草本植物を生育させた土供試体に対する侵食抵抗試験方法について検討を行った。
2.実験条件と方法本研究では砂質土を締固めた土供試体と、これにケンタッキーブルーグラスを散播して植物根系を発達さ せた根系含有土供試体を作製した。また,根系含有土供試体には試験前に茎葉を根元でカットしたものと、茎葉を残したもの(茎葉部有土供試体)がある。各供試体は直径60 mm、高さ130 mm の円柱形で、締固め度 Dcは85%と95%の2 種類である。図-1は侵食抵抗試験装置の模式図である。供試体は上下を逆にして設置し、下方のノズルから水をストレートに上方へ向かって噴射して侵食を発生させた。試験は0.02 MPaと0.04 MPaの2種類の水圧で行った。試験前後および試験中の任意の時間に X 線 CT スキャンを行い、供試体内の侵食状況を非破壊で観察した。
3.試験結果および考察図-2は各供試体の侵食抵抗試験終了時におけるX線CT スキャン画像の一例である。画像では土が灰色、侵食でできた空洞部分が黒色で示されている。この画像中の黒色部分が最も深く侵入した箇所を侵食深として読み取った。図から、土供試体では侵食は水流の方向に真直ぐ進行し、貫通していることがわかる。一方、根系含有土供試体、茎葉部有土供試体では侵食孔がボトル状に形成され、侵食が止まっていることがわかる。図-3はX 線CT画像から読み取った侵食深の経時変化である。図-3(a)から、土供試体は短時間で貫通しており、貫通までにかかる時間はDcが小さく、水圧が高いほど短くなっていることがわかる。この傾向は図-3(b)の根系含有土供試体においても概ね同様であることが確認できる。一方で、図-3(b)の茎葉部有土供試体ではDcが小さく、水圧が高いケースであっても、侵食深が小さい供試体もみられた。このことから、本研究の実験条件であれば Dcや水圧の影響を受けないほど、茎葉の侵食防止効果は極めて大きいと解釈できる。

4.まとめ本研究で実施した試験方法によって、植物根系を含む土の雨滴に対する侵食抵抗をある程度定量的に評価できるようになったと考えられる。この試験方法は植生工の雨滴に対する侵食防止効果を評価する手法として、極めて有効であると言える。
今回の受賞が初めてで大変嬉しい気持ちで一杯ですが、これからも決して驕ることなく精進していこうと思います。最後になりますが、この場で研究を紹介させていただきありがとうございます。