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北海道胆振東部地震で発生した表層崩壊地における初期の植生回復と地域資源活用緑化/山田夏希 [2021年09月29日(Wed)]
2021年9月に開催された第52回オンライン大会で優秀発表賞(論文・技術報告部門)を受賞された山田夏希さんからの投稿が届きました!

北海道胆振東部地震で発生した表層崩壊地における初期の植生回復と地域資源活用緑化
山田夏希(北海道大学)


 この度は第52回日本緑化工学会において, 優秀発表賞を受賞することができ大変光栄です。本研究は“地域資源”, “SDGs”をキーワードとして行いました。NPOやボランティア, 地域の方々にご協力いただきながら, 震災発生後の崩壊斜面の倒木の処理, 試験に用いる木柵工の作成から防鹿柵の設置まですべて手作業で行いました。力を貸していただいた関係者の皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。また, 研究から論文執筆まで, ご指導いただきました森本淳子准教授, 中村太士教授, 孫田敏様をはじめとする方々に感謝申し上げます。初めての論文執筆, 発表でしたが, 本学会で多くの方からのご質問や意見をいただき大変勉強になりました。この場をお借りし, 簡単にではありますが私の研究内容をご紹介させていただきます。

1. はじめに
 表層崩壊の要因は豪雨, 地震, 火山活動など様々である。相次ぐ表層崩壊は多くの人々の生活に影響を及ぼし, また生態系をも変容させてきた。表層崩壊が発生した場合, さらなる侵食と崩壊の防止を目的として山腹工事を行うことが一般的である。侵食防止機能が期待される緑化植物は, 山腹工事において多く用いられてきた。しかしその中心は外来草本であり, これらは地域生態系に大きな影響をもたらすことが明らかになってきた。そこで近年では, 従来の手法が見直され, 郷土種や木本など, 地域生態系の保全や森林の多面的機能を重視した手法へ転換されつつある。環境に配慮し, 地域性の資源を用いた山腹緑化はSDGs (Sustainable Development Goals) の観点からも重要である。本研究では北海道胆振東部地震で発生した緩斜面の表層崩壊地において, 現場の地域資源を用いた木柵工と郷土種の草本・木本を利用した山腹緑化の有効性を評価することを目的とした。

2. 材料並びに方法
 調査地は北海道勇払郡安平町早来の二次林に発生した2つの表層崩壊地である。防鹿柵や木柵工, 緑化植物, 自然侵入促進工の組み合わせによって6種類の処理を設定し, それぞれ6反復とした。すなわち, 処理区画は表層崩壊地に何も処理を行わなかった“Control”, 防鹿柵を設置した”Df(Df; deer fence)“, 防鹿柵と木柵工を設置した“ DfWf (Wf; wood fence)”, 防鹿柵と木柵工と緑化植物を設置した”DfWfP (P; plant)”, 防鹿柵と木柵工と緑化植物とヤシマットを設置した“DfWfP+P (+P; palm mat)”, 防鹿柵と木柵工と緑化植物と藁マットを設置した”DfWfP+S (+S; straw mat)”である。
 環境調査として土壌含水率, 照度, 土砂移動量を計測し, 箱ひげ図により比較を行った。
Kruskal-Wallis検定及びPairwise Permutation検定で各区画の植被率, 自然侵入の植物に関して実生数と種数, 緑化植物に関して活着率と成長率を調べた。DCAで種構成の違いを調べた。

3. 結果・考察
 防鹿柵の有無で植被率に差はなく, 防鹿柵の効果は実証されなかった。DCAの結果より, 木柵工の有無で自然に侵入した植物の種構成に違いがあり, ControlとDfは, 遷移初期種, 遷移中期種を多く含んでいた。それ以外の四つの区画は, ControlとDfに比べて遷移後期種を多く含んでいた。植被率は, 緑化植物を使用した処理区画で高い傾向があり, 初期緑化を迅速に進めるためには, 緑化植物の導入が有効であると考えられた。また, 自然に侵入した植物の実生数と種数は各処理区画で有意な差は見られなかったことから, 本研究で用いた郷土種の緑化植物は, 自然に侵入する植物の定着を阻害しなかった。土砂移動量は, DfWfP+P, DfWfP+Sの処理区画で低い傾向があり, ヤシや藁などの天然素材を主とする自然侵入促進工は侵食防止材として機能することが分かった。

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図-1 土壌含水率, 照度, 土砂移動量の箱ひげ図

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図-2 各処理区画全体の植被率と, 自然侵入の植物の実生数と種数における箱ひげ図

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図-3 自然侵入の植物におけるDCA 結果
抽出された第1 軸,第2 軸で表現されている。楕円は各処理の種構成の95%確率楕円で,処理の種類ごとに色分けしている。各点は植物種を示す。


4. おわりに
 緩斜面の表層崩壊地において生態系に配慮した緑化を行うにあたり, 初期の緑化の目的で郷土種, 土砂流出防止の目的で自然侵入促進工を設置することが, 森林再生に貢献すると考えられる。本研究の崩壊地に対する処理はSDGsを重視し, 天然素材を用いて,地域や遠方のボランティアの方々など多くの協力の下で行った。本研究で行った処理が初期の植生回復に及ぼす影響を検証するために, 今後も経年的な変化を観察する必要がある。

Yamada_04.jpg


 本研究は初期の植生回復を調査したものであり, 継続して調査を行うことで新しい発見があると思います。今後も調査を行い, 経年変化を観察していけたらと思います。
 最後になりましたが, 本研究に関わっていただいたすべての皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。


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