2020年9月に開催された第51回大会(岩手Web大会)で優秀ペーパー賞を受賞された渡邉さんからの投稿が届きました!オンラインアンケートを用いた看護学生の病院緑化および園芸療法に対する意識調査渡邉藍(千葉大学大学院園芸学研究科 博士前期課程2年)
受賞した要旨2枚目(ポスター)はこちら!
この度は、第51回日本緑化工学会大会において、優秀ぺーパー賞(研究交流発表部門)をいただき、誠にありがとうございます。今年はWeb上での開催でしたが、期間中には様々な視点からコメントをいただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。簡単ではありますが、本研究について紹介させていただきます。
既往研究より、病院緑化が入院患者の術後回復に有用であることや、園芸療法が病院勤務者のストレス緩和に有用であること等が報告されています。しかし、それらの効果を活かした緑化やプログラムが導入されている病院はまだまだ少ないのが現状です。今後、植物の効果を活かした緑を導入してもらうには、現場で働く医療従事者の病院緑化や園芸療法に対する理解が必要不可欠であると考えられます。しかし、医療従事者は夜勤など勤務形態が不規則であることや、激務であることなどから、緑の効果を理解する時間や余裕がない事が予想されます。そこで、時間に余裕があり、学ぶ環境でもある学生時代に着目し、学生時代に植物の有用性を理解してもらうことが有効ではないかと考えました。
このような経緯から、本研究では全国の看護学生を対象に、病院緑化および園芸療法に対する意識についてオンラインアンケートを実施しました。医療従事者の中でも、看護師(看護学生)を選んだ理由は、病院緑化や園芸療法に対する理解が、看護師の職務内容や多職種連携での役割等から重要であると考えられること、また患者との距離が近い職種であることから、彼らの理解が進むことで、病院における緑の導入に繋がりやすいと考えたからです。
病院において緑が必要な場所について聞いた結果、中庭や待合室など、「患者が利用する空間」が多く選ばれ、ナースステーションや職員の休憩室など「勤務者が利用する空間」はほとんど選ばれませんでした。現在、うつ病など精神疾患で休職する病院勤務者が急増しています。これらの対策としても、今後は「勤務者が利用する空間」への緑の導入が必要であると考えられます。そのためには、当事者である病院勤務者自身の意識を、学生時代から変えていくことが必要であることがわかりました。また、園芸療法に対する認知について聞いた結果、認知度自体は低いものの、「興味がある」と回答した学生が6割以上いることがわかりました。よって、園芸療法の認知度を上げ、導入を促進するには、学生時代の間に知ってもらう機会や場を提供することが有効であると考えられました。
現在のコロナ禍において、医療従事者は、これまで以上にストレスフルな状況であると考えられます。そのストレスを緩和するための一つの手段として、植物の存在が病院緑化(ハード面)や園芸療法(ソフト面)といった形で広まれば、と考えております。今後も引き続き、病院における緑の研究を進めてまいりたいと思っています。