2020年9月に開催された第51回大会(岩手Web大会)で優秀ペーパー賞を受賞された友口さんからの投稿が届きました!河川水辺の国勢調査結果を用いた九州の一級水系における河川環境、とくに外来植物群落の変遷に関する考察友口勇生
この度は『河川水辺の国勢調査結果を用いた九州の一級水系における河川環境、とくに外来植物群落の変遷に関する考察』という題目で技術報告部門の優秀ペーパー賞を頂き、誠にありがとうございました。また、共同研究者、関係者の方々、大会期間中を通して貴重なご意見を頂いた方々にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。この度は簡単ではございますが、本研究の内容を紹介させて頂きます。
はじめに 一級水系では、河川環境の整備ならびに保全を推進するために、1990年から5〜10年周期で河川水辺の国勢調査(以下、水国と称します)が実施されています。水国は「魚類」、「両生類・爬虫類・哺乳類」、「陸上昆虫類等」、「底生動物」、「植物」および「鳥類」の6項目について調査がなされ、その調査データはHPや情報公開制度などによって、広く一般に入手可能となっております。水国は調査開始から20年以上が経過し、今では、過去と現在のデータを比較することで、河川環境の変遷について検討可能な時期にきていると考えました。そこで本研究では、「植物」の調査データから、河川環境の変遷、とくに外来植物群落の変遷に焦点をあてて水国結果から解析を試みました。ここでは、本解析の足掛かりとして、九州の一級水系を対象としました。
方法 各水系をそれぞれ過去と現在の2つに分け、現在については、各水系において最新のデータを使用しました(2017年現在)。過去については、1997年に水国の調査範囲が変更されているため、1997年以降のデータとしました。植物調査では、河辺植生域、造林地、耕作地、人工草地、施設地等、自然裸地および水面の7つの区分で、それぞれの面積(ha)が計測されています。本研究では、それら区分を、外来植物群落、在来植物群落、造林地、耕作地、人工草地、施設地等および自然裸地の7つに区分し、それぞれの面積(%)を集計しました(外来植物群落については、群落別の面積(%)を別途集計)。それらを変数に主成分分析、クラスター分析(グループ内平均連結法)および除歪対応分析(DCA)を行いました。
結果および考察 九州の一級水系においては、過去から現在にかけて多くの水系で、その多くが在来植物群落から外来植物群落へと変遷していることが示されました(図-1)。また、施設地や人工草地等の開発(人為的攪乱)が増加し、それらが外来植物群落に影響を及ぼしていることが同時に示唆されました(図-1)。
外来種群落においては、過去においては、多くの水系でセイタカアワダチソウ群落が形成されていました(図-2)。これに対して、現在では、同種に代わって、セイバンモロコシ群落が成立していました(図-2)。
DCAによる序列化でも、年代と負の相関にあるX軸に対して、セイタカアワダチソウ群落は、セイバンモロコシ群落の大きく右側に配置されました(図-3)。
以上から、九州の一級水系における外来植物群落は、過去から現在にかけて、セイタカアワダチソウ群落からセイバンモロコシ群落へと変遷しているものと考えられました。
おわりに 本報では、九州の一級水系における外来植物群落の変遷について多変量解析から概括的に捉えてみました。今後、水国の調査データ(素データ)との整合性についても検討を要しますが、本報の示す変遷は、昨今の河川環境について私共が日々感じている実態をよく反映していると考えます。特に本地域での繁茂が明らかとなったセイバンモロコシについては、我が国における知見がまだまだ乏しいことから、その動態を注視するとともに、抑制手法の検討が喫緊の問題と考えています。