2018年・第49回/設立30周年記念大会(東京都市大学)でポスター賞を受賞された我妻 聡さんからの投稿が届きました!在来緑化植物ヨモギの外国産緑化個体と在来個体間の形態及び遺伝的組成の違い京都大学大学院農学研究科 我妻 聡
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この度は「在来緑化植物ヨモギの外国産緑化個体と在来個体間の形態及び遺伝的組成の違い」という題目で研究交流部門のポスター賞をいただき、誠にありがとうございました。大会当日は多くの方に研究内容に関して興味を持っていただき、多くのコメントを頂いたり、在来種を用いた緑化の現状を教えていただいたりしました。この場をお借りして御礼申し上げます。今回は簡単ではございますが、私の研究に関してご紹介いたします。
はじめに 外来植物による在来生態系への悪影響を懸念し、法面緑化には在来植物の利用が推奨されています。しかし、種が同じであれば種子の採取地は考慮されないことが一般的なため、緑化に使用されている在来種の種子の大半が中国等の国外から輸入されています。また、日本国内でしばしば法面緑化に用いられるヨモギでは、日本で採取した種子を中国で育成して採種した「日本系統由来中国産種子」も緑化用に利用されています。しかし中国産及び日本系統由来中国産のヨモギと日本国内のヨモギの違いは未解明でした。そこで私の研究では、国内の法面緑化に用いられるヨモギを対象として、日本産および緑化用に輸入された中国産の種子を播種・育成し、それらの形態及び遺伝的組成を比較しました。
材料と方法 中国産4集団及び日本系統由来中国産6集団、日本産13集団から採取した種子をもとに各集団につき10個体育成し、痩果・葉・頭花のサイズ等の形態を測定しました。また、形態測定に用いた育成個体及び日本国内32地点の自生個体より採取したヨモギからDNAを抽出し、MIG-seq法により一塩基多型(SNPs)を検出し、主座標分析及びSTRUCTURE解析を行いました。
結果と考察 今回の実験から中国産は形態的、遺伝的に日本産および日本系統由来中国産とは明瞭に異なることが示されました。特に明瞭な違いがあった形態は痩果のサイズやシワの有無でした(図1)。日本由来中国産と日本産に関しては明瞭な差は見られませんでした。
2664SNPsにもとづいた主座標分析の結果、中国産が日本産および日本系統由来中国産と遺伝的に大きく異なることが示されました。
日本国内のサンプルのみ用いてSTRUCTURE解析を行ったところ、最適クラスター数は4となりました。各クラスターの地理的な分布から、北海道、関東以北、関西以西、九州の間で遺伝的な分化が存在することが明らかとなりました(図3)。
遺伝的に異なる個体を緑化に用いることによって、在来個体群に遺伝的撹乱をもたらす可能性があります。したがって、遺伝的に大きく異なる中国産種子の利用だけでなく、日本産でも地理的に大きく離れた地域由来の種子の利用は好ましくないと考えられます。
おわりに 研究をおこなうにあたり多くの方々にご協力いただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。