CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
«ステビア土壌改良資材の塩類集積緩和効果/杉浦総一郎 | Main | 日本のイタドリにみられる地理的変異の解明 ―在来緑化植物の地域性種苗の定着を目指して/木村元則»
斜面地に対応した新たなシカ侵入防止柵の開発/東口 涼 [2016年12月05日(Mon)]

2016年・第47回京都大会でポスター賞を受賞された東口涼さんからの投稿が届きました!

斜面地に対応した新たなシカ侵入防止柵の開発
京都大学大学院農学研究科 森林科学専攻 環境デザイン学研究室 博士後期課程3年 東口 涼


この度、『京都市で実施した新しいシカ侵入防止柵に関する実験(2) 柵設置直後の初期段階における実生由来ササの再生経過』と題した発表で優秀ポスター賞を頂きました。本研究は、同大会において発表した『京都市で実施した新しいシカ侵入防止柵に関する実験(1) 施工後1年間の効果確認』1)と一連の研究で、京都大学・株式会社ケイエフ・SPTEC YAMADAが産学連携で取り組んでいます。

京都市で実施した新しいシカ侵入防止柵に関する実験(2)
柵設置直後の初期段階における実生由来ササの再生経過



研究の背景と目的
近年、野生鳥獣による農林業等への被害が全国的に注目を集めています。これらの防除ではポールとネットを組み合わせた柵を使用することが一般的で、平坦な農地等では一定の効果が見られます。しかしながら森林内や法面緑化工の施工現場などの場合は、急傾斜地が多く、落石・倒木・積雪によるグライド圧などの影響を受けやすいため、防除効果が失われやすいことが課題でした。加えて、こうした現場はアクセスが悪く、保守点検が行き届きにくいことも難点です。そこで、本研究では上記の課題を考慮した新しいシカ侵入防止柵を開発・設置し、植生回復のモニタリングを行うことで防除効果を確認しました。

方法
実験には新規に開発したシカ侵入防止柵 (商品名:シカ矢来2)、写真1、図1)を用いました。京都の古い木造建築に見られる「犬矢来」から着想を得たもので、従来の侵入防止柵が構造物の高さによってシカの跳越を防ぐ方法であったのに対し、幅も持たせることで、転倒などのリスクを軽減しています。

20161127_Higashiguchi_p02.jpg 20161127_Higashiguchi_c01.jpg

効果のモニタリングに際しては、京都市北部の山間部に自生するチュウゴクザサ(Sasa veitchii var. hirsuta)に着目しました。京都市では2004年から2007年にかけて、広域にわたる一斉開花・枯死があり3)、本来はその後に発生する実生から群落が再生していくのですが、シカによる採食圧の影響で4)、2016年現在に至るまで自然下での再生が進んでいません。本研究では2004年に開花した地点5)に柵を設置し、柵の内外でササの個体数・稈数・稈高・葉の総数・葉のサイズを定期的に測定し、防除効果の指標としています。また同時に行った上述の実験(1)ではササ以外の実生についてもモニタリングをおこなっています。

結果
施工からわずか1年ほどの初期段階における経過報告ではありますが、柵はシカの侵入を防いでおり、柵内では稈・葉共に回復傾向が見られました。また落石や落枝にも耐え、積雪による大きな変状も起きていません。一方、柵外では継続してシカによる採食圧があり、調査開始時と変わらない矮性化したササ実生(写真2)が見られるのみでした。

20161127_Higashiguchi_01p.jpg


おわりに
会場では多くの皆様から、示唆に富むご意見並びに新たなシカ防除技術開発への期待の言葉を賜りましたことを、この場を借りて御礼申し上げます。今回は設置後の初期段階における報告でしたが、今後も継続したモニタリングを行い、防除効果の報告をしていきたいと考えています。
 また柵の構造等につきましても、改良の余地があると思われます。山林や法面のみならず、景観に配慮する必要のある社寺境内・庭園での防除など、新たな活用の可能性もあります。ご関心の方はお声かけいただきましたら幸甚です。

---------- 実験(1) の発表ポスター

20161206_Higashiguchi_Po_01.jpg




参考文献等(本文中該当箇所に青字で表示してあります)

1) 井上 裕介・東口 涼・柴田 昌三・山田 守 (2016) 京都市で実施した新しいシカ侵入防止柵に関する実験(1) 施工後1年間の効果確認. 日本緑化工学会誌, 38: 449–453. 42: 145-148
2) シカ矢来. NETIS登録番号: KK-160011-A. 法面のシカ・イノシシ侵入防止資材.株式会社ケイエフ. http://www.norimen.com/shika-yarai.html
3) 阿部 佑平・柴田 昌三・奥 敬一・深町加津枝 (2011) 京都市におけるササの葉の生産および流通. 日本森林学会誌, 93(6): 270-276.
4) 阿部 佑平・柴田 昌三 (2013) シカの採食が一斉開花・枯死後のチュウゴクザサの実生更新に及ぼす影響. 日本緑化工学会誌, 38: 449–453.
5) Abe, Y. and Shibata, S. (2012) Spatial and temporal flowering patterns of the monocarpic dwarf bamboo Sasa veitchii var. hirsuta. Ecol. Res. 27, 3, 625–632.
トラックバック
ご利用前に必ずご利用規約(別ウィンドウで開きます)をお読みください。
CanpanBlogにトラックバックした時点で本規約を承諾したものとみなします。
この記事へのトラックバックURL
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
トラックバックの受付は終了しました

コメントする
コメント