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緑と健康に関する研究のススメ /大塚芳嵩 [2014年10月15日(Wed)]
2014年・第45回帯広大会でポスター賞を受賞された大塚さんからの投稿が届きました!

緑と健康に関する研究のススメ

千葉大学大学院園芸学研究科 環境健康学研究室
博士後期課程2年   大塚 芳嵩 


今回、「都市公園における利用行動と健康関連QOLの関係性」という論文発表でポスター賞をいただきました。当日、会場で説明を聞いていただいた皆様、また質問していただいた皆様、審査委員の皆様に御礼申し上げます。多くの方から関心を持って頂き、活発な議論が出来、大変勉強になりました。今回は、私が研究を進めている緑と人の研究に関する分野について、その魅力を紹介したいと思います。

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ストレスを癒す緑の効果
「ストレスが様々な病気を引き起こす」、皆さんの誰もが一度は聞いたことがあるフレーズではないでしょうか。また、身をもって体験した方も多いのではないでしょうか。でも、「近所の公園や緑地でストレスが解消する」、ましてや「公園が近くにあるだけで病気になる確率を下げる」、こんなこと聞いたことありますか? そして、今現在これら緑地がもたらす健康効果は、国内外問わず最新の研究成果がどんどん報告されています!

こんなにたくさん!  〜緑の保有する健康効果
例えば、緑が多い地域に住んでいる人々は健康状態が良い、病気による死亡率が低いなどの報告があります1)
また、緑が健康状態を良くするだけでなく、住民の孤独に対する意識や感じ方にも関連性があることも示されました2)。このため、現在では予防医療における新たなアプローチとして緑の健康効果が注目されています3)。さらに、緑の健康効果は誰しもが平等に効果を得られることが最大の特徴です。
つまり、「最新の医療は高所得者しか受けられないが、緑の健康効果は公園や緑地があれば誰もが受けられる」のです!
そして、私たちの研究グループでは、「地域に緑があるだけでも健康になるが、その場を利用するとさらに効果がある」4)、「散歩や会話など一部の行動は、特に健康効果が高い」5)など、様々な研究成果を報告しています。健康に関する関心は日本だけでなく、世界でも高いことから、今後は日本だけでなく、世界中からも沢山報告されるでしょう。

様々な分野における健康増進の取組み
そして、緑化工学に限らず様々な研究分野が予防医学や健康増進をテーマに皆さんの健康を向上させようと日々研究が進められています。例えば…
1) 保健科学  …近隣の地域環境と住民の運動実施の関連性を検証6)
2) 地理学   …住民の健康状態をGISにより地域毎に分析7)
3) 社会科学  …住民同士の結束力や交流状態と健康状態の関連性を検証8)
4) 経済学   …住民の社会・経済的要因と健康状態の関連性を検証9)
5) 都市計画  …総合的な都市環境と健康状態の関連性を検証10)
 色々な分野において「健康」というキーワードの元、研究が進んでいることがおわかりになったかと思います。私も緑化工学分野の研究者(の卵)として、これらも「緑と健康」について研究を続けたいと思います!

今後の展望
でも、健康増進に関連する研究はまだまだ始まったばかりです。各分野の情報共有や共同研究の事例は限られています。今後、各分野の連携や互いの長所を活かした共同研究が進むことを願いつつ、私も日々努力します。

というわけで!あなたも一緒に緑と人の健康に関する研究をしませんか!興味が沸いたら是非連絡してください。研究室一同お待ちしております!

連絡先(E-mail):
大塚芳嵩 y.otsuka(あっと)chiba-u.jp   ※(あっと)は@になおして下さい
千葉大学園芸学研究科 環境健康学研究室のホームページ
http://www.h.chiba-u.jp/fukushi/iwasaki.html


参考文献 (本文中該当箇所に青字で表示してあります)
1)Richard Mitchell, Frank Popham (2008): Effect of exposure to natural environment on health inequalities: an observational population study: Lancet 2008; 372: pp1655-60.


2)Jolanda Maas et al. (2009): Social contacts as a possible mechanism behind the relation between green space and health: Health & Place 15(2), pp586-595

3)那須守ほか (2009): 都市における緑の健康・療法的効果利用 : 医療環境から地域環境へ(<特集>予防医学時代における緑の役割), 日本緑化工学会誌, 34(3), 502-507.

4)那須守ほか (2012): 都市域における緑地とその利用行動が居住者の健康関連QOLに与える影響, 日本緑化工学会誌, 38(1), 3-8.

5)大塚芳嵩ほか (2014): 都市公園における利用行動と健康関連QOLの関連性, 日本緑化工学会誌40(1), pp90-95.

6)久野譜也・田辺解・吉澤裕世 (2011) 生活習慣病予防のための運動の意義とそれを実行可能にする環境対策の重要性,バイオメカニズム学会誌35(2):91-97.

7)中谷友樹 (2011) 「健康な街/不健康な街」を視る-GISを用いた小地域における地理的健康格差の視覚化-,日循予防誌46(1):38-55.

8)Ichiro Kawachi (2008) 近隣の社会環境が住民の健康に及ぼす影響,公衆衛生,72(7):565-572.

9)橋本英樹 (2010) 社会経済的要因と健康〜疫学・経済学・社会学の接点,日本保健医学会誌,108(2): 113-119.

10)出口満ほか (2012) 健康維持増進に向けた地域環境評価ツールの開発と有効性の検証,日本建築学会環境系論文集,77(681):837-846.
Posted by JSRT・Web担当 at 12:39 | 会員より | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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